医学の進歩についてのニュースを追う
Tracking the News on Medical Advances

P17

アメリカ合衆国中、そして世界中の研究者によって、様々な障害の状態の医学的、健康的治療は躍進している。医学のニュースには、大衆メディアで伝えられるものもあるが、そのほとんどは、様々な専門メディアで発表されている。これらの中には、科学的、専門家向けの論文集やウェブサイト、大学、非政府組障害の問題を扱う政府機関、そして、それらの研究を支援する財団等の発行する機関紙が含まれる。このように、たくさんの組織が存在するため、文献やウェブサイトなどはそれぞれ医学研究の特定の分野を扱っている。何千とはいわないまでも、何百というサイトがアメリカ合衆国の中だけでも存在している。

ウィスコンシン大学のWaismanセンターのウェブサイトは優れた情報源の一つだ。このセンターは研究、トレーニング、サービス、対象者拡大に特化し、人間の発達、発達障害、神経系の悪化による病気についての知識の進展に専心している。このセンターのホームページ(http://www.waisman.wisc.edu) には、ニュースや注目すべき項目が掲載されている。例えば、2006年10月のある日、このホームページでは、フモン族(Hmong)に起こるごくまれな病状の研究、脳における瞑想の利点、人間の記憶形成についての研究事項等についての情報の特集を行った。また、他のページでは研究所、幹細胞の研究、脳イメージ実験室、そして生命工学研究施設について取り扱っている。

The Family Villege(家族の村)」という項目を選択すると、閲覧者は「A Global Community of Disability-Related Resources(地球上の障害関連情報のコミュニティー)」に行くことができる。それからさらに、「Research(研究)」をクリックすれば、医療、障害別情報、特別教育、リハビリテーション、障害の統計、コミュニティーサービスと支援を選択するページに移動する。そこで、「Medical(医学)」を選択すると、より詳細の選択リストに移動できる。このサイトにはまた、医学用語辞典、医学文献やオンライン文献、その他たくさんの情報資源が含まれている。

新自由政策
New Freedom Initiative−NFI

P18 - 20

2001年2月、ジョージWブッシュ大統領による発表を受け、「New Freedom Initiative(NFI)」は全国的な取り組みとなった。それはアメリカ全人口の20%、すなわち五千四百万人以上の障害を持つアメリカ人が、地域での生活で遭遇する障壁を除去しようとする取り組みである。また障害者人口の中のおよそ半数は、重度の障害を持つとされ、視覚、聴覚、歩行、その他生活上の基本的な営みを行う上で困難を抱えている人々である。加えて、二千五百万人以上の家族は彼らの面倒を見、さらに何千万人という人々が障害者を補助、支援している。

NFIは、障害者に対する差別を取り締まる連邦法であるADA法制定から10年間続いたこの不公平に提言するために制定された。例えば、障害を持たないアメリカ国民に比べ、障害者の教育水準は比較的低く、貧しく、さらに職を得ることもできず、自分の家を所有することもできず、投票にもなかなか行けず、コンピューターを所有し、インターネットにアクセスすることもできない。

NFIはそれらの困難に対しての全体的な取り組みで、全アメリカ国民が学び、身につけたスキルを伸ばしながら、生産的な仕事に携わり、自分自身で彼らの生活を選択し、地域生活への完全な参加の機会を得るための重要なステップである。

NFIの掲げる目標

  1. 有益なテクノロジーへのアクセス環境を整える。
  2. 教育機会の拡充。
  3. 住居の所有を推進する。
  4. 障害者を労働力として育成する。
  5. 交通手段を整備する
  6. 地域社会への完全参加を推進し、医療機関へのアクセスを改善する。

そして、以下はこれらの目標についての具体的な説明と、2004年時点でのいくつかの成果である。

テクノロジーへのアクセス

誰にでも使えるようにデザインされた援助テクノロジー(特別に作りかえなくても誰にでも利用できる製品や環境)は、障害者に教育、職場、地域生活への参加を促進している。この目標については次のような取り組みがなされている。

  • これらのテクノロジーを促進するため、資金源を確保し、また障害者がこのような製品を購入、利用しやすいように低金利で長期のローン等の融資プログラムを整備している。
  • 連邦局がチームを編成し、車いすやスクーター等の利用状況を改善するための対策づくりに取り組んでいる。
  • ウェブサイト、DisabilityInfo.govを立ち上げ、障害者の生活に関わる連邦政府関連のプログラムを網羅している。

教育機会の拡充

質の大会教育は障害者が就労し、地域社会への完全参加をするうえで大変重要である。この目標について、次のような取り組みがなされている。

  • 州は毎年の交付金プログラムを増強、確保し、障害者教育法を推進している。
  • 秀でた特別教育を推進する大統領委員会を設け、2002年7月に報告書を公表した。
    その報告書は、障害者の教育が成果をあげるため、No Child Left Behind Act (落ちこぼれ児童ゼロ運動)を特に強調した。

住居の所有の推進

以下は、障害者が自分の住居を所有しやすくするためになされた政策である。

  • 2003年度に、住宅、都市開発省は、Fair Housing Accessibility FIRST initiative(公平住宅アクセシビリティー計画)のもとに、1,500人以上の住宅専門家に対し、トレーニングを行った。そして、それは建築家に、アクセシビリティーを法的に順守したアパート、集合住宅の建設を促した。住宅、都市開発省は、老人や障害者が、住んでいる地域の自分の住居で、自立した生活を送り続けられるような交付金制度を開始した。
  • 司法省は、精力的に公平住宅法を定め、アクセシビリティーの基準を満たしていない住宅を建設した開発者、建築家、工学専門家達に提訴し、また同意判決によって住宅問題を解決してきた。

障害者を労働力として育成

ADA法制定から10年以上がたつが、重度障害者の失業率は依然として高い。より多くの障害者を労働力として取り込むため、大統領は以下のような政策を行った。

  • 障害者が在宅就労に必要な製品の購入を補助するために、二千万ドルの財源を確保した。
  • 従業員が在宅就労のために購入する、コンピューター、ソフトウェア、その他の設備に対しての免税案を支援した。
  • 現代的な障害者の雇用サポートシステムであるチケット制就労支援プログラム(Ticket to Work program)を支援した。

地域社会への完全参加の推進

1999年の最高裁では、障害者へのサービスは施設よりもむしろ地域社会の中で可能な限り提供されるべきであるという判決がなされた。完全な地域参加への約束を現実にするため、障害者が安全な住宅に住むことができ、交通機関へのアクセスが可能で、政策の取り決めへの参加でき、また地域の人々全員が、公的、民間施設でのサービス、プログラム、活動を利用する権利を享受できる社会の実現に取り組んでいる。大統領は、障害者の完全な社会参加を促進するため、以下の活動に取り組んできた。

  • 連邦政府によるプログラムにおいて、障害者の完全参加の妨げとなるものを指摘し、これらの妨げを除去するための四百以上の解決策を提案し、それらについて裁判所の迅速な決議を要請した。
  • New Freedom Commission on Mental Health(メンタルヘルス新自由委員会)を設立し、アメリカのメンタルヘルスケアをより利用しやすいものにするための方策を発表した。
  • アメリカ投票支援法に則して、障害者が投票できるよう、アクセシビリティーの改善に千五百万ドルを投入した。

自由に意見を述べられる場所を: ウェブサイトDisabilityinfo.govについて
Getting the Word Out: DisabilityInfo.gov

P21

ADA法の重要な成果と、それの伴う活動やプログラムは、様々な政府機関が協力し、情報を一般公開し、特に、それらの情報に素早く、安価で、簡単にアクセスできるようインターネットを駆使することで成し遂げられた。New Freedom Initiative(新自由政策)の目標達成のため、ブッシュ大統領は連邦局に、個人や専門家が必要な情報を入手できるよう、ウェブサイトDisabilityInfo.govを作成するよう指示した。それによってアメリカ国民がだれでも公平にこれらの情報へのアクセスできるようになった。このサイトは、来訪者として閲覧する人々に雇用、教育、住宅、交通、健康、福利厚生、テクノロジー、地域生活、市民権についての情報を提供している。各メニューを選択すると、興味のある分野の様々なサイトやリンクへ移動することができる。例えば「障害者利用できるよう、車の仕様を変更する方法を学びたいですか。」「企業を目指す方、ADA法があなたの会社にどう適用されるか知りたいですか?」「公平住宅法は、住居の借主、貸主にそれぞれどう適用されるか知りたいですか?」といったタイトルがあり、閲覧者が知りたい情報を入手できる。

職探しのサポート
Supporting the Search for Employment

P21 - 22

2006年10月全国障害者雇用推進月間に、ブッシュ大統領は、雇用されている障害をもつ国民は、経済面その他に何のマイナスの影響も及ぼさないと宣言した。大統領は政府官僚、労働者のリーダー、雇用者、それから国民に、この月間を意味のあるものにし、適切なプログラム、式典、活動によって成功している障害者を祝福するよう呼びかけた。雇用されている障害者を祝福し、また就労の妨げになっているものや、それを知らせる方法について考える上でこの期間はとても意義深いものである。

ウェブサイトDisabilityInfo.govや、NFI(新自由政策)によると「アメリカ国家にとって、雇用は経済活動、地域社会、また家族の重要な基盤である。障害者が就労できる社会は、彼らにとってより自立した、生産的で充実した生活を促進する。」障害者の雇用率は歴史的に一般市民よりも低水準であり、この格差を是正するべく、職探しの支援のため沢山の資源が作られた。仕事探しのために人々が利用できる二つの例を以下に取り上げる。

一つ目は、ウェブサイトDisabilityInfo.gov就職サイトである、
,http://www.disabilityinfo.gov/digov-public/DisplayPage.do?parentFolderId=9
では、障害者雇用に関する様々なテーマを扱っており、その中には、求職中の障害者、雇用者、従業員の権利、法律、規則、各種雇用プログラムに関する情報、また障害者が就労する上で必要な便宜等、沢山の役立つ資料やアドバイスがある。表題には雇用者向け情報、連邦政府との業務提携、連邦機関での雇用、求職者向けの情報、職業トレーニング、個人事業及び企業、職業リハビリテーション、海外就労、10代の若者向け、といったものがある。それぞれの表題には、より詳しい情報タイトルのリストを含む。

そして、二つ目は、障害を持つ若者の仕事探しのために、アメリカ労働省のOffice of Disability Employment Policy(障害者雇用政策局)の交付金によって設立された、National Collaborative on Workforce and Disability for Youth(全国ユース障害者労働協会)である。同協会は、様々な情報資源や出版物、最新の関連イベント、良く聞かれる質問、専門家への質問といった情報を提供している。また同協会のプロバンクと呼ばれるオンラインデータベースでは、障害をもつ若者が就労する上で必要なことを効果的に身につけるために信頼のあるサービスやプログラムの情報も入手できる。

心身の健康: 公衆衛生局医務長官の行動の要請
Health and Wellness: The Surgeon General's Call to Action

P23

2005年、ADA法制定15周年記念式典にてアメリカ公衆衛生局医務長官は、障害を持つ人々の心身の健康改善の要請(the Call to Action)を呼びかけた。長官は、「取り組みの要請(the Call to Action)は、健康上の支援の要請である。現実は、われわれが長期にわたり提供してきたものは、障害者にとっては不十分だ。われわれは、障害者が病気の予防、健康促進サービスへの完全なアクセスを達成するためにこれまでの努力を倍増させなくてはならない。

これまで、障害の定義とは、「各人の身体、知能、感覚の特徴が、その人の一部あるいは全ての側面において自立的な日常生活を送る能力に多かれ少なかれ影響した状態である」とされてきた。ほとんど全ての人が人生の間に何らかの障害を持つことを考えれば、障害を理解する上で、機能不全や、病的症状にだけ着目することはさほど重要なことではなくなってきている。年齢と共に、障害をもつ人々は増加し、80歳になるころには、およそ75%の人々が何らかの障害をもつことになる。

U.S. Department of Health and Human Services(アメリカ健康及びヒューマンサービス省)の障害事務局はとの協働によって開始された、このCall to Action(取り組みの要請)では、障害をもつ人々が、彼らのコミュニティーのメンバーに貢献しながら、完全で、有意義で、そして健康的な生活を送れることを支援するため、以下の4つの目標を掲げている。

  • 障害をもつ人々が、長く、健康で、生産的な人生を送れるよう全国規模での理解を高めていく
  • ヘルスケア専門家の知識を高め、また障害者の人権を尊重して検査、診断、治療するための器具を提供する。
  • 障害者が、段階的な取り組みによって健康的生活を開始し、維持することができるという認識を高める。
  • 障害者の自立的生活を促進するため、利用可能なヘルスケアシステム及びサポートサービスを増やす。

障害と、健康及びヒューマンサービス省(HHS)障害事務局のディレクター、Margaret J. Giannini氏と、障害の分野で五十年以上の経験を持つある医師によると、障害者の持つ能力に着目することから始めるのが大切だという。彼らは、「学習し、結婚し、家族を持ち、礼拝し、投票し、働き、長生きし、生産的な生活を送ることができる。われわれは、彼らを活動的な社会の一員として付き合っていることを確認しなくてはならない。」

2005年に「Call to Action」が開始されてから、多様な労働者人口を取り込むための包括的な計画のプロセスを通じて、目標達成のために多くの段階的措置が考案された。例えば、「全国規模の理解を高める」という第一の目標達成のための一つの取り組みは、the People's Pieceという小学校6年生程度の読解力に合わせて書かれた出版物である。この出版物では、治療への利用の妨げとなる障壁を取り除くことが、二次的あるいは複次的な問題が生じるのを防止するといった考え方など、Call to Actionに代表されるメッセージを説明している。二番目の取り組みでは、トレーニング施設や医学部の学生を含むヘルスケア専門家への働きかけを含む。これは、新人の専門家達に、彼らの職務経歴の早いうちから障害に関する治療や問題について認識してもらうためである。People's Pieceと他の情報についてはhttp://www.hhs.gov/odそして、www.hhs.gov/od/programs で得ることができる。ウェブサイトhttp://www.surgeongeneral.gov/library/disabilities/ には、スピーチ、発表記事、このプログラムに関する統計を含む概要報告のリンクが掲載されている。

健康及びヒューマンサービス秘書官のMike Leavitt氏が、このプログラムを発表するときに述べたように、「このCall to Actionは、障害者が社会の重要なメンバーであり、そして彼らを、法律で定められているという理由によってだけでなく、国民の良心によってアメリカ人の生活の全ての側面において取り込んでいくことを再認識するためのものである。」

障害を持つ子供たちへの教育
Educating Children Who Have Disabilities

P24

コミュニケーションや、物理的移動の障害から、認知や情緒に関するものまで、多種多様な障害に、大人同様子供たちもまた悩んでいる。アメリカの公立学校では、全ての子供たちのニーズを理解し、彼らの潜在的な能力を最大限に伸ばしていくことが期待されている。職別な支援を必要とした子供たちに関わる教師や親のためのプログラムは昔からあったが、ここ三十年程でこれらのプログラムはより幅広く利用されるようになった。

1975年、Gerald Ford大統領が調印した法案は、後にIndividual with Disabilities Education Act(障害者教育法、IDEA)となった。その法律は、障害児が無料で適切な教育を公立学校で受けられることを保証するものだった。IDEAが施行される以前は、障害児の約20%しか学校に通うことができなかった。2003年にもなると、高校の教育を修了する障害者の数は17%になり、さらに高等な教育を受ける障害者人口は二倍にも上った。

障害者教育法は、全ての子供たちに教育の機会を保証したが、法律はその成果については触れていなかった。ブッシュ大統領はそれを、(障害者が教育を受けても)成果があまり期待できないという固定観念の間接的なあらわれではないかと指摘する。

大統領が実施する、No Child Left Behind(落ちこぼれの生徒を作らない教育)法は全国の全ての子供が2014年までに、読み書き、数学において一定水準のレベルに達するような教育制度を考案することだが、この計画の目標は、障害をもつ学生を除外して設定されたものである。The Department of Education's Office of Special Education and Rehabilitative Service(教育省特別教育及びリハビリテーションサービス局)は、全国の学校期間と連携し、この目標設定におけるギャップについて指摘し始めた。オレゴン州のTigard-Tualatin学校区と、ミネソタ州のミネアポリス公立学校は、学業の成果、教育の早期介入、またその他の改善に重点的に取り組む実験的プログラムに参加した。

2006年、教育省は、障害者教育法(IDEA)の新しいガイドラインを定め、教育成果の目標水準を、特別支援を必要とする子供達にも課し、また、障害を持つ学生向けの教育と評価のツールを提供することで、学校区、教育者、親に、新しくそして信頼できる評価水準の導入を支援した。新たに作成された障害者教育法のガイドラインに含まれる内容は次の通りである。障害を持つ学生たちに、柔軟に資源を活用し、学校が迅速かつ正確に生徒が必要な特別なニーズを見極め支援する。単に担当教科の知識だけでなく、障害を持つ生徒一人一人のニーズを十分に把握しなくてはいけないため、特別教育を担当する教師の資格を得るためにより高度な資質を問うこと。児童教育に関して、保護者の協力をより強固なものにすること。

2006年夏、アメリカ教育秘書官Margaret Spellingsは、この新しいガイドラインを高く評価し、「落ちこぼれを作らない教育方針と、障害者教育法により、障害を持つ学生のニーズが明確になった。これからは彼らの直接的な教育支援に専念していくことができる。」

障害理解のための教育
Disability Awareness Education

P25

障害者が各人の潜在能力を最大限に発揮し、アメリカ社会の全領域での完全参加を実現させるために、障害者本人、教師、医療従事者、その他援助を行う人々が重要な役割を担っている。しかし、それ以外の人々にとっても、障害について、また障害者を支援するための方法を学び、身につける責任がある。

障害者教育法(IDEA)施行後、障害者への教育を全て通常学級で行う学校は増加の一途をたどっている。また、障害の有無にかかわらず、共に働いたり遊んだり、友達になることは双方にとって有益なことだ。しかし、教育従事者は、子供たちがオープンな人間関係を築く一方で、大人も同様に障害者と理解しあい、尊敬しあい関係を深めていくこともまた可能であると考えるようになった。

教師や若者達が、子供たちに障害者の考え方や困難等を理解するために役立つレッスンを行えるよう、多くのグループによって教材が開発されている。それらの教材やプログラムについての資料や情報は、次のサイトで調べることができる。
http://www.nichcy.org/pubs/bibliog/bib13txt.htm.

プログラムはキッズオンザブロック(Kids on the Block)と呼ばれる、ほぼ等身大のパペットを使用するものから障害者を理解するためのもの、必要な医療、教育の違い、社会問題が学べるもの、また、ニューフレンズカリキュラム(New Friends Curriculum)という、人形をつかって子供たちに話し合う場所を与えるものまで様々である。また、健常児が目隠しその他の道具で、障害者の生活を疑似体験しながら学習するプログラムもある。両手に靴下をかぶせ、靴ひもを結んでみることで、指が不自由な生活を体験したり、目隠しをしながら食事をしたりすることで、子供たちは障害をもつ同級生の気持ちを理解することができる。また、目隠しをしながら歩く感覚を知ることで、障害をもつ同級生や友人がどのような助けを必要としているかより深く理解することができる。
教育プログラム、キッズオンザブロックのウェブサイトhttp://www/kotb.comを、是非訪れてみてほしい。

アメリカの学校や、若者を支援する組織は、こういった授業を取り入れている。なぜなら、アメリカ人は善良な市民であるために、他者の障害を理解することと、彼らとどう向き合っていくかを知ることは、他の社会科の授業と同様に大切だと考えているからである。そして、これは単に子供たちに対して有益なだけではない。従業員たちに、障害をもつ同僚や顧客とどう接していくかを理解してもらうために、企業や、その他の組織もまた、こういった教育プログラムを行っている。

災害への準備: 障害者のニーズを満たす
Disaster Preparedness: Meeting the Needs of Persons with Disabilities

P26

長きにわたり、ADA法は新たな分野に適用され、その影響は拡大してきた。このほうは、公共のサービスや施設においての差別を禁じたものであるが、自然災害やその他の緊急事態については触れられていない。しかし、特に2001年9月11日のテロ攻撃や数々の天災に端を発し、緊急事態への対策への取り組みがより集中的に行われるようになったため、こういった災害の状況への取り組みはより顕著になってきた。Department of Home Security(国土安全保障省)と、全国障害評議会は緊急事態への準備の勧告を発表した。国会と、個々の州ではこの必要性を扱う法律を作成した。2004年7月、ジョージ W.ブッシュ大統領は、Interagency Coordinating Council on Emergency Preparedness and Individuals with Disabilities(緊急事態への準備と障害者についての関係省庁合同による調整審議会)を設立した。この議会の目的は、

  • 障害者の緊急事態への準備対策をするにあたって、障害を持つ公務員と、公的サービスを受ける障害者への特別なニーズについて検討する。
  • 技術的支援対策を通して、州、地方、少数部族の政府機関の利用者また従業員に対して、技術的支援等、特別なニーズの検討を推進する。
  • この計画が、障害者にも適応されたものになるよう、緊急事態対策を実施する連邦、州、地方、少数民族の政府機関、民間団体、そして個人が共に協力し合うよう促進する。

2006年4月、関係省庁合同による調整審議会の議長である、Daniel W. Sutherland氏は、National Hurricane Conference(全国ハリケーン会議)の参加者に、障害をもつ人々を、緊急事態管理体制に取り入れる方法について話した。彼は、2005年のハリケーンから学んだこととして次のように話した。

障害者のニーズや才能は、緊急事態の管理体制の中に、より効果的に取り入れなくてはならない。緊急時には、アメリカ全国民が困難に直面するが、障害者やその家族にとって、この困難はより複雑なものであることが多い。これは、ハリケーンKatrinaから学んだ数ある教訓に、付け加えたような「あまり重要でない」問題ではない。障害コミュニティーの中で、その約20%の人々が湾岸地域に住んでいる。これは、たくさんの人々に影響する複雑な問題で、私達は、彼らに焦点をあて、より効果的な作業を行わなくてはならない。私達は、州、地方の政府機関が災害時の最初の応答者だと認識している。私達の役割と責任は、あなた方に新しい重荷を課すのではなく、この分野での複雑で独特の問題を効果的に処理するための手助けとなるような方法をはっきりさせていくことだ。障害者は、単に受身の支援対象者になることを望んではいない。この問題について、彼らの独特に混ざり合ったエネルギー、経験、アイデア、そして決断力等、障害者が社会に貢献することはたくさんある。障害者、その家族、支援団体等が、進んで力になりたいと思っている。つまり、あなた方がしなくてはならないのは、そんな彼らをサービスに取り込んでいくことだ。

Sutherland氏のスピーチの全文は以下のリンクより入手できる。
http://www.dhs.gov/xabout/structure/editorial_0842.sthm

障害の問題と外交
Disability Issues and Foreign Affairs

P27

アメリカ国務省の主な使命は、外交政策の運営だが、これにはまた障害者の問題も伴う。世界中に派遣された職員や家族のニーズを調整するという通常業務に加え、アメリカ大使館や領事館は、アメリカ国民が、海外の国々で、アメリカ人の旅行や滞在のためのサービスを提供している。

例えばある在仏領事館では、聴覚障害をもつアメリカ人女性によって、地方の公務員にサービス犬について説明するのを助けて欲しいとの要求があった。彼らは視覚障害者のための犬というのは馴染みがあったが、聴覚障害者に仕える犬のことは知らなかったためだ。

国務省では、障害というテーマを扱う文化的、教育的プログラムのスポンサーにもなっている。たくさんのプログラムや交換留学プログラムが障害をもつ学生にも提供されていているが、その中に、アメリカ人の教師や研修生が、海外の国々で聴覚障害者のためのプログラムに参加するというものも二つほど含まれている。そのほかにも、障害者だけに限定したものではくとも、何らかの特別なニーズがある人々に何らかの関連をもつプログラムもあるだろう。ワールドカップサッカーの選手が、最近いくつかの国々を訪れ、たくさんのグループと会った。そのなかには、バーレーン障害者スポーツ連合の、聴覚障害者のサッカー選手達もいた。そしてそれは、バーレーンの地方新聞の大きな関心をよせ、その後も活動を続けていくことを約束した。

また、ある国務省の事務局では、アメリカの市民を、募集し、世界中でプログラムを運営するための専門家として派遣している。これらのプログラムの中には、聴覚障害を持つ専門家がプログラムを実行するために上海に旅行する時に手話での通訳を行える者、視覚障害を持つ講演者がインドに視覚補助犬を連れて行くときに必要な調整が出来る者等、特殊な技術を要求されることもある。アメリカでは、視覚、聴覚また他の障害を持つ人々に仕えるサービス犬、あるいは病院や療養所等を訪れ、患者に安らぎを与えるセラピー犬(研究結果によると、こういったセラピー犬は、血圧や痛みへの耐性を改善、欝症状の軽減に貢献している。)を見ることは一般的だ。しかし、人々や彼らを補助する動物が、制度や文化の違う国々を訪れる際に調整を行うことは、そのプログラム管理者にとって特別な困難を伴う場合がある。しかし、その結果、単に特派員が業務を遂行するのに必要なサポートを行えるだけでなく、このインドの事例で、講演者に同行していた犬自身がいくらか話題になり、メディアで取り上げられたように、多くの人々に新しい考え方を紹介する契機となったことを考えると、余計だと思われるこの努力も決して無駄ではない。

この、Joyce Kane氏と彼女の犬による、インドでのプログラムを通じての経験についての記事は、以下のリンクから辿ることができる。
http://usinfo.state.gov/scv/Archive/2005/Jul/18-456527.html

視覚障害者の国際プログラムについてさらに知るには、Global Deaf Connection(国際聴覚障害者交流会)のウェブサイトhttp://www.deafconnection.org。 そして、The International Deaf Partnership Project(国際聴覚障害者共同プロジェクト) http://academic.gallaudet.edu/courses/spa/CREPBerw.nsfを参照してほしい。

テクノロジー: 障害者が日常生活の困難を克服するための設備
Technology: Equipping People with Disabilities to Meet the Challenges of Daily Life

P28

たくさんの政府、非政府によるプログラムや、学習センター、出版物、研究文献が、障害や、障害者の生活を補助する技術的進歩に関する事項を扱っている。障害に関するプロジェクトは、対面式や長距離でのコミュニケーションから、移動、また学習補助機器から職場でのロボット工学まで、全範囲に及ぶ。これらのプロジェクトは、現在進行中で、最近発表されたものだけでも、一つの記事、いや、丸一冊の文集にも収まりきらないほど無数の新しい進歩を生み出している。このような現在進行中の実用的な技術革新を紹介しようというプロジェクトが、ニューヨークのSyracuse大学Burton Blatt研究所の「Innovation Grant(革新奨励金)」からの資金援助を受けて行われている。このプロジェクトは、大学情報科学部のある教員の指揮の下、病院や州とも提携して行われている。

アメリカ手話サービスのためのインターネットビデオ翻訳
Internet Video Interpreting for Remote American Sign Language (ASL) Services

あなたが、耳が聞こえず、手話なしで会話することができなかったらどうなるか想像してみてほしい。あなたの子供が怪我をし、病院の緊急外来へ連れて行くとしよう。何が起こっているのか、あなたは何をすべきなのか、これから何が起こるのか、あなたに説明できる人が誰一人いない。あなたの不安は次第に大きくなり、あなたは医師達が必要な情報を提供することもできない。あなたはどうするだろうか。

ニューヨークでは、規定、規則、法律を正式に編纂し州の法律改定案にまとめたが、その中で、ヘルスケア施設で、「入院、外来患者は20分まで、緊急外来患者については10分間の範囲内の要請」で、言語補助サービスを利用可能にすることを義務付けた。そしてこのサービスは、中国、アメリカ手話言語のどちらでも利用できるようにすることとした。Syracuse、また他のニューヨーク州内のヘルスケア施設でも、この新しい規定を遵守する方法を積極的に模索している。ビデオによる手話サービス、これは通訳が遠方からインターネットを通して「往診」するというもので、真剣に考えられている革新的な方法だ。インターネットは、拡大するユニバーサル社会において全く新しい可能性であり、手話サービスの可能性として、大きな関心が寄せられているのは、通訳、心理カウンセリング、緊急対策、災害時の応対である。

Burton Blatt研究所の革新奨励金によるこの研究プロジェクトの第一段階として、Syracuse市内の三箇所の施設で、インターネットを通じたアメリカ手話についての調査を行っている。この中の二つは手話サービスを行っている病院で、もう一つは、このサービスを提供している非営利施設である。調査時の質問事項には、今日はどんな手話サービスがあり、利用されているか、インターネットによる手話サービスがもたらす新しい可能性と困難は何か、当の項目が含まれている。インターネットの普及から新たに面白いビジネスやサービスの可能性が生まれる一方、インターネット手話サービスが一般に普及するまで沢山の困難を乗り越えなくてはならない。困難となりうるものの一つに、HIPAA(個人の健康情報についてのプライバシーに関する規定で、これによって医療機関が患者の医療情報の守秘を強く義務付けている)。このプロジェクト第二段階では、ニューヨーク州の14の区域を対象に、手話サービスが利用できることを義務付けるこの新しい規定を遵守する準備ができているかについて、またインターネット手話サービスの導入についての展望についてそれぞれのヘルスケア施設を対象に調査を行う予定である。

ページの先頭へ戻る