概要紹介

障害児・障害者向けのスイッチ、代替マウス、代替キーボードから教育用ソフトまでを製造・販売しているイギリスの会社です。

障害児のためのICTとAAC(拡大・代替コミュニケーション)に関する膨大な情報を含むサイトですが、主な内容は次のようなものです。

  • 特別支援教育の記事と情報
  • 製品カタログ
  • ダウンロード(ソフト、ユーティリティなど)
  • テクニカル・サポート
  • NOFトレーニング(重度重複障害児教育のためのトレーニングシステム)

カタログに記載されている製品の一部は、「こころWeb」「こころリソースブック」でも紹介されており、代理店などを通じて日本でも入手可能です。

特記事項

上に挙げた項目で、とくに情報量が豊富なのは、「特別支援教育の記事と情報」、および「NOFトレーニング」中の「フリー・トレーニング・リソース」の部分です。前者では、身体障害から聴覚・視覚の障害、学習障害など多様な障害のある人のための様々なハードやソフトに関する資料が公開されています。また後者では、ICT教育を導入するための方法論が12単元にわたって詳述されています。

製品情報が中心のサイトですので、訳文の製品名は太字表記とし、原ページのリンクを中心に同社のカタログページへのリンクを張りました。各々の製品については写真をご覧いただければイメージしやすく、価格などもチェックしていただけると考えます。

翻訳項目

今回、訳出ご紹介したのは以下のページです。

トップページのリンク、Information and Articlesより以下のカテゴリー。

Special Needs Articles and Information
(http://www.inclusive.co.uk/infosite/snhome.shtml)
  Articles on Special Needs and IT
  (http://www.inclusive.co.uk/infosite/articles.shtml)

Articles on Special Needs and ITでは記事がアルファベット順に分類してありますが、順不同に選んで訳しました。また記事一覧の見出しと各記事の題名とは一部異なります。

A. どっちのスイッチ?

Information... Which Switch?

[写真]選択に迷うほど多様なスイッチ類

スイッチ類は、選択に迷うほど多様な方式、形状、大きさ、色をもった製品が出回っています。個人が使うスイッチを、ひと目見て正しく選択するのは大変でしょう。

スイッチをうまく使えるかどうかは、以下のような複数の要素にかかっています。

  • 意欲
  • 適切な動作
  • 十分な練習時間
  • 頻繁な励まし
  • スイッチの位置
  • スイッチの方式

多くの場合、スイッチの方式はもっとも重要性が少ないので、リストの最後に挙げました。スイッチ使用のスキルは、一貫した動作の流れの中でだけ伸びるもので、スイッチはある目的のための手段にすぎません。明かりを点けるためにスイッチを操作しているので、ただスイッチを押しているだけではないのですから、スイッチ操作の重点は結果に置かれるべきでしょう。

仲間と一緒にいることが好きな児童は、コンピュータ・プログラムを操作しているときよりも、単純なコミュニケーション装置をあやつるためにスイッチを使っているときに、スイッチ操作のスキルを早く伸ばすことができます。視覚に障害のある生徒なら、視覚を刺激するようなコンピュータ・プログラムを操作するときに、もっとも良い反応が返せるでしょう。何をするかという選択はスイッチ操作のスキル養成の鍵になる部分であり、実際それがスイッチを使う理由なのです。

スイッチの使用

スイッチはユーザーの行動を変換して何かを起こすことができます。普通スイッチはコンピュータソフト、電源装置、電池式のおもちゃ、そしてコミュニケーション装置を動かすのに用いられます。スイッチは、コンピュータでは適切なインターフェースに、コンセントから電源をとる装置では電源コントローラーに、おもちゃの場合は障害児向きに改良されたものや、もしかするとタイマーまたはラッチユニットに接続しなければなりません。スイッチはユーザーが容易に操作できるような位置に置く必要がありますが、マウンティング・アームはスイッチの位置を自在に変更するのに使うことができます。ウルトラスティックは多くのスイッチの表面に貼ることで安定した操作を可能にします。マウンティング・スイッチ[訳注 取り付けスイッチ]の類はユーザーにとって安定、確実で親しみやすいものでなければならず、できるかぎりセットアップしやすくなければなりません(ユニバーサル・マウンティングマクセス・マウンティング・システム)。

スイッチが必要なのは誰?

スイッチは以下のようなさまざまな理由で使用されます。

  • 身体
  • 認知
  • 行動
  • 感覚

多くの事例で、ユーザーは1つ以上の困難を抱えています。深刻な運動障害のある生徒は、視覚面または学習面で重複障害があるかもしれません。より目立たない障害であっても、生徒がスイッチの操作を上達できない原因になるという場合もあるでしょう。

スイッチ各種

さまざまな方法で操作するために設計された、さまざまな方式のスイッチを入手することができますが、主流はなんらかの形で触ったり押したりして操作するもので、差異の多くは実用性よりも外観を良くするためのものです。

大きさ

大きいスイッチは目標を定めるのは容易ですが、場所を取り、目ざわりになります。まず大きいスイッチから始めて小さいものに移行するのが楽だと感じる児童もいます。非常に小さいスイッチは設置するのが容易で、指一本が使える場所に適しています。特別にフラットなスイッチ(パルパッド)は、奥まったところにあるスイッチの表面に触れるためにユーザーが手を上げられない状況で使えます。

感覚と音

フラットなエンブレイン・キーボードよりも、「本来の」キーボードのほうが良いのと同様に、多くのユーザーにとっては、スイッチを押したときにスイッチが動いたりカチッと音がしたりするフィードバックがあると役に立ちます(エイブルネットアジャスタブル・プレッシャー)。アジャスタブル・プレッシャーのスイッチは操作する圧力を変更でき、それによってユーザーに補助的なフィードバックを提供することができます。スイッチを押したときのノイズや感触を、スイッチをうまく使った結果そのものだと生徒が考えてしまう場合もあります。そういったノイズや感触が生徒の気をそらしてしまうのです。このような場合は、ユーザーの気をそらすことが少ないので、「静かな」スイッチ(パル・パッド)が良いのですが、触覚によるフィードバックが弱くなります。

操作できる部位

スイッチにはヒンジボックスのような形に作られているものがありますが、これらのスイッチの主な欠点はスイッチを作動させるのに必要な圧力がスイッチの部位によって変化し、実際ヒンジの近くを押すとまったく作動しないことです。ユーザーがいつでも操作を成功させるためには、どこを押してもスイッチが確実に動くことが望ましいのです。

色彩

スイッチに色をつけると、触ってみたいという気持ちを起こさせ、背景とのコントラストが強い場所に置けば、視覚に問題のあるユーザーの助けになります。別々の色を使えば、生徒が2種類のスイッチを使い分ける助けになります。年配のユーザーは、ファッションアクセサリーとしてさまざまな色があっても、目立たない色を好むでしょう。エイブルネット用の透明カバーを使うとスイッチに絵や記号、さまざまな模様を描くことができ、ピクチャー・スイッチには絵などを入れるポケットがあります。スイッチの絵や記号は、生徒がたくさんの電池式や電源式の装置から適切なものを選択できるようにするのに役立つでしょう。

  • ※. 訳注 冒頭の画像参照。

特別なスイッチ

これまでに紹介した以外にも、多くの特別なスイッチが作られています。まれに基本的なスイッチがうまく作動しない場合は、別のスイッチを使うことを考える必要があります。しかし、その前に興味のある材料で充分な時間をかけてスイッチを使う練習をしてきたかどうかを確認してください。子どもが字を書けるようになるまでに、鉛筆の使い方を練習して上達するのにどれだけの時間がかかったかを思い出せば、より単純に見えるスイッチを使うスキルを育てるのにも、同様に時間がかかることが理解できます。QEDカタログには多様なスイッチが紹介されていますが、すべてのスイッチを使うのには、ある種の意識的にコントロールされた動作と、何かをするための「原因と結果」についての意識が必要だということを忘れないでください。

ロジャー・ベイツ※1 記

インクルーシブ・テクノロジー社のスイッチ類

ACEセンター(北部)リソース・ページ※2

  • ※1. 訳注 インクルーシブ・テクノロジー社創設メンバーの一人
  • ※2. 訳注 上記URLは現在リンク切れになっている模様である。

B1. マウスについての問題のソリューション

Information... Some Solutions to Mouse Problems

マウス操作

現在のコンピュータ・ソフトの多くは、マウスなどのポインティング装置のポインタを操作することで使用するように作られています。ポインタを動かしたりボタンを押したりするのに必要な手先の器用さがなかったり、手と目の連携ができない人もいます。代替マウスなど、対策はいくつか考えられます。良好な作業姿勢を取れるかどうか確認したり、腕の補助具や手首を支えるリストサポート(QED)の使用を考慮したりしてみてください。高価な代替装置の使用を考える前に、ユーザーに合ったソフトで練習し、マウスを使うスキルを向上させるのに充分な時間を使ってください。

コンピュータの設定変更

コンピュータのコントロールパネルの設定で、マウススピード、加速やボタンの操作をふくむ、マウスとポインタの操作上の外観を変更することができます。これによって、通常のマウスでも、紹介した多くの代替装置でも、より使いやすくなります。

マウスポインタを拡大すると、見つけやすく目で追いやすくすることができます。
キーボードの設定を変えると、選択したキーを使うと、マウスを動かしたりクリックしたりすることができます。

Windows 95以降

Windows 95以降使用のパソコンでは、コントロールパネル内の「ユーザー補助(アクセシビリティ・オプション)」から適切なプログラムを見つけることができます。

Windows 3.1

オックスフォードACEセンターで入手できる、トレースセンターのアクセスパックに適切なユーティリティソフトが含まれています。

Macintosh

コントロールパネルのユニバーサルアクセスで設定します。

Acorn

各種Acorn互換機のための障害者用ユーティリティソフトの入手情報については、エクサンプラー・エデュケーション社にお問い合わせください。

マウスやポインタを使用しなければならない操作のかなりの部分を、キーボードのショートカットでも直接おこなえるようにするソフトが数多くあります。

直結できる代替マウス

マウス操作をできるようにする装置にはプラグがついています。普通のマウスと同じように接続できる装置の場合、コントロールパネルでマウススピードの設定を変更する以外には、とくに調整しなくても作動します。ポータブルコンピュータには、はじめから普通のマウスに代わる装置をそなえているものもあります。

ローラーボール、ジョイスティック、トラックパッド、トラックボールは普通に代替マウスとして利用できます。これらは、大規模なコンピュータ市場向けに作られた装置であるうえに、安っぽく故障に強くないこともあるので、障害のあるユーザーのために特別に設計された製品もあります。インクルーシブ・テクノロジー社、ケンブリッジ・アダプティブ・コミュニケーション社、SEMERCから販売されています。

代替マウスに必要な機能としては、ビルトイン・キーボード、ラッチング※1のできる追加ボタン、一回押すだけでダブルクリックのできるボタンがあります。インテリキーのようなオーバーレイ・キーボードは、適切なオーバーレイ※2を使えばマウスポインタを操作するのにも使用できます。

  • ※1. ボタンを押したままの状態に保つ
  • ※2. 上敷き

スイッチ操作

クリックイットやホットスポットのようなソフトウェアを使うと、スイッチのユーザーはスイッチを押してスクリーン上にホットスポットを定義することで、「ポイントとクリック」で操作するソフトウェアへのアクセスをすばやく容易に行なうことができます。これはCD‐ROMにすばやくアクセスするのに特に有効です。
マウスムーバーを使用したり、SAW(スイッチ・アクセス・ツー・ウィンドウズ)やクリッカーのような特別なアクセスソフトを走らせることで、マウスポインタを直接操作するのにスイッチを使うことができます。

  • ※. 5つのスイッチを接続することでマウスの操作が可能になる装置。「こころリソースブック」USBマウスムーバー参照。Tash社

マウス・インターフェース

マウスを動かすことはできるけれど、ボタンをうまく操作できないというユーザーもいます。マウサーSEMERC)のようなマウス・インターフェースを使うと、ボタンを無効にしたり、必要な場合は外部のスイッチに切り替えたりすることができます。

  • ※. 使わないマウスボタンをオフにする装置。

代替マウスと改良品

身体障害についての更なる情報

B2. トラクシス(旧ペニー&ジャイルズ)・ローラー

トラクシス・ローラーII

トラクシス・ローラーII

(USB・PS2接続)

従来の故障に強いトラクシス・ローラーの新デザインです。カラーボタンで、どれを押せば良いのか、簡単に示すことができます。うっかりボタンを押さないように標準のガードがついています。必要がなければガードは取り外しできます。ボタンの代わりにスイッチを取り付ける必要のある場合のスイッチ用ソケットも2基備えています。USBコネクタ、PS2用アダプタ付属です。

写真のスイッチ類は付属していません。

[写真]トラクシス・ローラーII

トラクシス・ローラー・ジョイスティック II

(USB・PS2接続)

新しいトラクシス・ローラーIIのジョイスティック・バージョンです。カラーコード化されたボタンは3基の新形スイッチ用ソケットに対応しています。

USBコネクタ、PS2用アダプタ付属です。

追加のジョイスティック・ハンドル、スカイノブとTバーがインクルーシブ・テクノロジー社より無料で提供されます。

[写真]トラクシス・ローラー・ジョイスティック II

必要なのはどのコネクタ?

マウンティング・システムマウンティング・プレート

購入情報

ローラーII Win/Mac用 USBおよびPS2接続 95ポンド
ローラー・ジョイスティックII Win/Mac用 USBおよびPS2接続 179ポンド
マクセス・クリア・アングル・レスト   19ポンド

カタログ2003年11月号46ページ参照

トラクシス・ローラー・プラス

トラクシス・ローラー・プラス

特別な機能を備えた、故障に強いトラックボールです。ローラーでのラッチ[訳注 ボタンを押したままの状態に保つ]によるドラッグ機能、マウスポインタを上下のみ、左右のみに動かせるボタンを備えています。ポインタの速度コントロール用ボタンを備えています。今回同梱されたローラー・プラス・スイッチ・ボックスを使用するとボタンをスイッチで代替させることができます。意図しないボタンを押すのを避けるための取り外し式のガードも備えています。底面のネジ穴により作業台や車椅子用トレーに簡単に固定できます。

[写真]トラクシス・ローラー・プラス&トラクシス・ローラー・プラス・ジョイスティック

トラクシス・ローラー・プラス・ジョイスティック

ローラー・プラスのジョイスティック・バージョンです。

必要なのはどのコネクタ?

マウンティング・システムマウンティング・プレート

購入情報

ローラー・プラス USB/PS2 249ポンド
ローラー・プラス PC PS2(在庫限り) 199ポンド
ローラー・プラス Macintosh ADB(在庫限り) 199ポンド
ローラー・プラス・ジョイスティック USB/PS2 285ポンド

カタログ2003年11月号46ページ参照

オリジナル・トラクシス・ローラー

多くのかたにはマウスよりも使いやすく、故障に強いトラックボールです。ラッチ[訳注 ボタンを押したままの状態に保つ]によるドラッグ機能でいっそう使いやすくなります。意図しないボタンを押すのを避けるための取り外し式のガードも備えています。

特別価格でご提供する、MacのADB接続用は在庫が限られています。お早めにご購入ください。

[写真]オリジナル・トラクシス・ローラー

ローラー Macintosh ADB(在庫限り) 89ポンド

ebカタログのみに掲載

トラクシス・ローラー・プラス・スイッチ・ボックス

今回、ローラー・プラスのボタンをお好みのスイッチと取り替えることができるようになりました。このスイッチ・ボックスをローラー・プラスのソケットにつなぎ、スイッチをボックスにつなぐだけです。ボタンに対応するソケットは5基あります。

ローラー・プラス・スイッチ・ボックス 25ポンド

カタログ2003年11月号46ページ参照

価格は2003年12月8日現在のものです。
すべての製品は市販品で入手可能です。価格と仕様は本記事作成時のものです。

C. 音声出力装置を用いた児童のコミュニケーション活動

Information... Early Communication Activities

コミュニケーションに障害のある児童に、他者(大人や、より重要なのは同年代の児童)との交流の機会を数多く与えることは重要です。言語療法士から助言や情報を得ることが望ましいのですが、すべての言語療法士にAAC(拡大・代替コミュニケーション)システム構築の経験があるわけではないことに注意しなければなりません。

科学技術はコミュニケーション・スキルの育成において多くのことを提供します。ユーザーが音声でフィードバックでき、仲間の児童からの理解が早くなるので、音声出力装置には特に価値があります。単一のメッセージを保存するビッグマックや{ワン・ステップ・コミュニケーター}※1などのような単純な電子エイドや、連続したメッセージを保存する{ステップ・バイ・ステップ}※2は、児童が新しい活動にすぐに参加できるので、クラスの活動にとってすばらしいものです。メッセージはすぐに録音・置換できます。これらの装置に限界があるのは明らかですが、児童のローテクな電子エイドへの入門に使うことができます。

おはなし

児童はフレーズの繰り返しのあるおはなしを好みます。音声出力装置は用意にフレーズをプログラミングでき、児童は適当なタイミングでスイッチや装置を押すことで参加することができます。このように使用すると、児童が適当なタイミングでおなはしに参加することで理解度を示す機会ができるので、音声出力装置は有効な評価ツールになります。

対話型ゲーム

音声出力装置は児童が他者に意志を伝達するのに使用されます。とくに児童から大人への意志の伝達ができることに価値があります。児童が(たぶん目で)相手を選ぶようになり、さらに選んだ相手に意志を伝えるために装置のボタンを押すことで、児童のコミュニケーション・スキルは育ちます。児童は大人に対して、本当におかしなことを頼むのが好きです。たとえば、「椅子の上に立って」、「部屋をかけ回って」、「歌をうたって」「変な顔をして」など。

探しものゲーム

コミュニケーション装置は、隠した物を探している途中で、誰かが「近く」なっていると言うのに使えます。児童が二個の装置を使い分けられる場合は、一個に「近い」ということばを、もう一個に「遠い」と言わせることができます。

コミュニケーションに障害のある児童は装置を使って、コーラスに参加したり、ポピュラーソングのフレーズを繰り返したりすることができます。

ジョーク

児童の好きなジョークの文句を機械にプログラムしておくと、児童は他の児童とのジョークのやりとりに参加できます。

コミュニケーション障害についての更なる情報

D. 拡大・代替コミュニケーション(AAC)

Information... Alternative and Augmentative Communication (AAC)

  • ※. 原文のページタイトルは、Alternative(代替) and Augmentative(拡大)Communication となっていますが、一般的な表記に従い、「拡大・代替コミュニケーション」と訳しています。

人間は、さまざまな理由から対面によるコミュニケーションが困難になる可能性があります。身体的障害や運動制御の問題は、発語を困難、または不可能にするでしょう。ある種の学習障害のある人は、発語や口頭でのことばの使用を困難に思うでしょう。

AAC(拡大・代替コミュニケーション)という用語は、他者とのコミュニケーションに障害のある人たちを補助するのに使用されるさまざまな方法を表すのに用いられます。この用語は、さまざまな方法がことばの代替をしたり、補助をしたりするのに使用されることを意味します。

どのような障害があっても、特別なコミュニケーション方法を使わない人もまれにいるとは言えます。しかし、多くの人はメッセージのやりとりに困難が生じますし、聞き手(コミュニケーション相手)の側のかなりの努力を必要とすることを忘れてはいけません。

コミュニケーションには、本質的にある程度の相互理解と一般に同意された方法とを含む2種類のプロセスがあります。2人が同じ言語で容易に話しあい理解しあえる場合でさえ、誤解やコミュニケーションの失敗は起こりえます。

コミュニケーション方法

誰もが普段から拡大コミュニケーションという方法を使っているのだと言っても良いでしょう。会話をしているとき、私たちは顔の表情、ジェスチャーやボディ・ランゲージ、あくびをしたりといった多くの方法でことばの意味を強めようとします。これらの付加的な方法は、使ったことばの意味を強めることができますが、まったく反対の意味になることもあります。口では面白いと言っていても、あくびをすれば台無しになります。

発語に問題を生じさせる障害のある人のためには、さまざまな方法が使用され障害者のコミュニケーションを補助・拡大しています。こういった方法には、個人によるサインやジェスチャー、標準化された記号化やシンボルのシステム、複雑な電子機器までを含めることができるでしょう。

AACシステムを構築し利用するのは、多くのユーザーとそのコミュニケーション相手となるべき人たちにとって、長く複雑な仕事になります。練習が必要になるでしょう。つねに最新の教材を準備しなければなりません。この仕事には、すべての人が参加するのだということを認識しなければなりません。コミュニケーションのシステムや方法はお互いが理解し認識していなければならないのです。

システムと方法

上の2つの用語は置き換えることもできますが、私たちはこれらをはっきりと違う用語だと考えることにしました。たとえば、英語はコミュニケーションのシステムですが、話すことと書くことはこのシステムを使う2種類の異なった方法です。

シンボル

多様なシンボルのシステムが普通に使用されています。このようなシステムは、一般的に書き言葉の理解が難しいユーザーや聞き手、たとえば学習障害のある人たちや年少の児童にあわせて開発されています。シンボルのシステムには、必要に応じて、個人が作成したシンボルや、オブジェ、写真を組み合わせることもできます。

シンボルは長い内容のメッセージを表現するのに役立ち、現在あらゆる状況で多数使われていることから分かるように、たいていは早く簡単に認識できます。シンボルは、コンピュータのディスプレイ、紙上の図表、コミュニケーションブックなどさまざまな方法で表示されます。

シンボルを使って複雑な考えを表現するのは困難ですし、”the”とか”and”といった単語の意味を図の形にして伝えるのも難しいでしょう。この難しさは、他よりも応用力の高いBlissシステムで改善されましたが、その結果、学習障害のある人には使い難くなりました。

シンボルは、図表、掲示板、コミュニケーションブック、一枚ずつになったカードなどさまざまなかたちで示すことができます。こういったものは、シンボルを手で描いたり、コピー機を使ったり、コンピュータの印刷ソフトを使っても作ることができます。

  • ※. Charles K. Bliss (1897-1985)が作成したシンボルのシステム。

手話やジェスチャー

手話は、とくに聴覚障害者の社会で、長い間使われてきました。学習や運動に障害のある個人の必要にあわせて、さまざまなシステムが作られてきました。手話システムは、特別な装置や道具を必要としないという利点がありますが、習得するのが困難になるおそれがあります。

文章

手書きの文章やコンピュータで作成したテキストは、メッセージを伝えるのによく使われます。こういった文書は必要に応じて書いたり、事前に作っておいたものを使ったりします。

AAC

AACのユーザーは、ユーザー特有の障害に適したシステムや方法を必要とします。ユーザーはシステムの意味と使い方に習熟し、選んだ方法を操れるようになる必要があります。

特に音声出力が可能だという利点と、ポジティブなイメージを表現できるということから、電子的システムは最初に選択されることの多い方法です。しかし、うまく使いこなせるかどうかは、機器のセットアップと保守のサポートが受けられるか、どれだけの語彙が利用できるかに左右されるので、往々にして失望をまねくことになるでしょう。電子的システムは故障しがちで容易にダメージを受けてします恐れがあります。持ち運ぶのが難しかったり、ある種の状況、たとえば浴室などで使うのには適していなかったりということが分かるユーザーもいるでしょう。

どんなシステムや方法でも適切な語彙を選択することは安易な仕事ではないという点は強調しなければなりませんが、ローテクな紙や図表を使ったシステムは、準備するのも使うのも簡単です。たいていは聞き手も気軽に応対でき、持ち運びも簡単です。印刷物を理解できないような仲間のいるユーザーにとっては、音声出力装置がないということは、コミュニケーションを大きく制限されることになるおそれがあります。ローテクなシステムは電子的エイドと同等には扱えません。

手話など、一切の装置を必要としないシステムは、いつでも利用できるという利点があり、すぐに使えます。シンボルや文章によるシステムがより一般的に理解されているのに対して、手話などのシステムは特別な学習を要するため、コミュニケーション相手の選択が限定されるおそれがあります。

コミュニケーションの環境

コミュニケーションに障害のある人たちは、コミュニケーションの能力を伸ばすことができたはずの幼少時の学習体験を経ていないことがよくあります。とりわけ、このような人たちにはコミュニケーションをする意欲と状況が必要です。そのようなことが自然に起こることもあるでしょうが、きちんと整えられた環境を作ることを通して、コミュニケーションの能力を伸ばすことはもっと必要です。誰かのコミュニケーションを助けることは、ただコミュニケーションエイドを買い与えるよりも意味のあることなのです。

発音および言語障害

E. インテリツール・ファミリー

Information... The IntelliTools Family

インテリツール社はアメリカの主要な障害者用IT企業の1つです。インテリキーのオーバーレイ[訳注 上敷き]・キーボードと、これに合わせて使用するソフト、オーバーレイ・メーカーはこの種の製品では全米で最も使用されています。

本シリーズの製品を検討した人の誰もがとくに感銘を受けるのは、ユーザー・インターフェースの質と整合性、すべてが統一された合理的作動です。このため、私たちは多くのインテリツール社製品を取り扱い、さらにはこれらのイギリス版を製作するという大きな一歩を踏み出す決意を固めました。

インテリキー – インテリツール社のすべてのソフトウェアにおいて、オーバーレイ・メーカーとの併用によって他社のWindows用やMac用のソフトにおいても作動するように、最善の設計がなされたオーバーレイ・キーボードです。オーバーレイ・キーボードとして使用する以外に、2基のスイッチ接続用のソケットを備えています。オーバーレイシートは代替キーボードとしても作られていますが、キーボードとして使うかマウス操作用のオーバーレイとして使うかを選択することもできます。WindowsとMacintoshの両方で使用でき、オーバーレイシートに必要なファイルが用意されているので、コンピュータに接続するとすぐに使用することができます。滑り止めのついた足と付属のスタンドで、運動障害や視覚障害のあるユーザーが使いやすいようにキーボードの角度を調節することができます。

インテリキー・クラシック

は、伝統的なキーボードで、WindowsとMacintosh、それぞれのキーボード・ソケットに適合する取り外し式の接続ケーブルが付属しています。

インテリキーUSB

はUSBポートに接続して作動するように、完全に改良されています。USBポートがあれば、同じキーボードとケーブルでWindowsパソコンにもMacintoshパソコンにも接続することができます。

オーバーレイ・メーカー

このソフトには、Windows用とMacintosh用があり、インテリキーのキーボード用にユーザーがオーバーレイと情報ファイルを作成することができます。これによりインテリツール社製だけでなく他社のソフトウェアでもインテリキーが使用できるようになります。ソフトには300種以上のピクチャー・ライブラリーが付属しているので、容易に使用でき、ユーザーが自分で他から持ってきた画像を追加することも可能です。
オーバーレイにより、文字、語句、マウスの動き、その他特殊なキー入力やコマンドを入力できます。
インテリキーのスイッチソケットを利用すると、シングルスイッチやダブルスイッチでの使用が可能になります。

インテリピクス・スタジオ

インテリピクス・スタジオは、教師と生徒のためのすばらしいマルチメディア・オーサリングツールで、教師と生徒の両方が、独自にマルチメディアのスライドショー、プレゼンテーション、ゲーム、その他、数え切れないほどの、まだ誰も思いついていないようなプロジェクトを生み出すために作られています。

クリックイット

あらゆるソフトウェアで、スイッチやオーバーレイからアクセスして「ホットスポット」をアクティベートするのに使用できるユーティリティ・プログラムです。クリックイットを使用すると、トーキング・ブックやその他のCD‐ROMソフトにオーバーレイやスイッチからアクセスできます。ユーザー独自のアクセス・ファイルを作成することもできますが、「インスタント・アクセス」パックには主要な有名トーキングブック・ソフト用のファイルが選んであります。このファイルは、初期設定のままで使用することも、生徒のニーズに合わせてさらに編集して使用することもできます。視覚障害のある児童がトーキング・ブックを利用するために、喋る「ホットスポット」を作成することも可能です。

インテリトーク

イギリスの一般的なワープロソフトでは完全なマルチメディア機能が提供されていないものもありますが、インテリトークは簡単で使いやすい、喋るワープロです。Windows版とMacintosh版があり、低価格、簡単、そしてインテリツール・ファミリーとして、インテリキーのオーバーレイ・キーボードもシームレスに統合できるという利点があります。

インテリトークII

インテリトークの完全な新バージョンです。画像によるサポートのある、喋るワープロとしてご使用ください。ワード・バンクかオーバーレイを使用して、言語活動を創造してください。ロック・テキストで問題用紙を作ってください。使用を始めるにあたっては、多数の実例ファイル、総合的チュートリアルが用意された、きわめて多目的に使用できるソフトです。

インテリマシックス

インテリツール・ファミリーに最も新しく加わったソフトです。すべての年齢と能力に適合しています。生徒は、オンスクリーンで実感型教材を使って、図形ブロック、地図ボード、10進法ブロック、タングラム(知恵の板)、確率、分数など、あらゆる種類の問題を解くことができます。このソフトは、マウス、インテリキー、その他のスイッチで、ご使用ください。特別なアクセス方法を必要とする全ての生徒が、分数、角度、数の実験を行なうことができます。

私たちは、インテリツール・ファミリーのソフトやハードがイギリスの学校におけるIT供給に大いに貢献するものと確信しています。各種ソフトとインテリキーのオーバーレイ・キーボードの品質と使用感は、その開発に要した時間と努力がどれほどであったかを示しています。インクルーシブ・テクノロジー社は、インテリツール・ファミリーをもとにしたイギリス向け製品のさらなる開発と普及に努力しています。このため、アメリカの関連企業との密接な共同作業を進めており、将来この共同作業の成果が、私たちの製品が両国で最高の性能を発揮することで反映されるでしょう。またインテリツール社のソフトに最適な製品を確実に開発するために、多数の学校とも共同作業を行なっています。

  • インテルツール社製品
  • ITおよび特別ニーズ関連記事の全リスト

インテリツール社のサイト

※ 詳しい内容につきましては、原文サイトでご確認・お問合せください。

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