<ユニバーサル社会の実現をめざすシンポジウム>

パネルディスカッション

[写真]ナミねぇ

ナミねぇ パネルディスカッションにご登壇いただく皆さまについては、お手持ちのプログラムにお名前が掲載されていますが、これから順次お呼びしていきたいと思います。併せて、このパネルディスカッションの後で、ユニバーサル社会の基本法を作ろうという呼びかけの文章を私が読み上げさせていただいて、ぜひ皆さんからご承認をいただきたいと思っておりますので、黄色い紙もお手元にご用意いただければと思います。そして、このパネルでは、各界からおいでいただきましたパネラーの皆さんから、「私とユニバーサル社会」といいますか、ユニバーサル社会に対するご自身の思い、あるいはご自身のお仕事の中で、生活の中で、どのようにそういう考え方を生かしていこうと思っていらっしゃるかということをお聞かせ願いたいと思っています。

 準備ができたようですので、それではまず、石破防衛大臣、どうぞお上がりください(拍手)。続きまして、浜四津敏子参議院議員、お上がりください(拍手)。与党ユニバーサル社会プロジェクトのリーダーをしていただいています。それから、皆さん恐らくご存じない方はいらっしゃらないと思います。『だからあなたも生き抜いて』という有名な著書があります、私の親友でもあります大平光代さん、弁護士、大平みっちゃん、お上がりください(拍手)。実は大平さんはお嬢さまを昨年出産されまして、そのお嬢さまとご主人も一緒に来ていただいておりますが、今ちょっとお席を外されたようですので、またご紹介します。それから、今日は日本経団連の方からもご後援をいただいておりまして、専務理事の紀陸さんにお越しいただいています。紀陸さん、お願いいたします(拍手)。そして、皆さんのお話にコメントといいますか、ご意見などもいただくために、ダイナー・コーエンさんにも登壇していただきます。コーエンさん、お願いいたします(拍手)。

 それでは、大平さんがお戻りになっていませんが、お時間も限られていますので始めたいと思います。パネルにご出演の皆さん、今日はお忙しい中、本当にありがとうございます。こんな素晴らしい会にさせていただきました。これからの皆さんのご発言で、ますます素晴らしい会になることを願っております。というところで、パネルディスカッションを始めさせていただきたいと思います。

 まずお一人ずつ、今も申し上げましたように、すべての人が持てる力を生かして、社会を支え合っていくような日本にしようという、このユニバーサル社会という考え方についてのご自身のお気持ち、あるいは、ご自身のお仕事の中でどのようにそれを生かしていきたいと思っておられるかということを、お一人5分ずつぐらいお話をいただいて、その後、例えばお話の中でダイナー・コーエンさんへのご質問などあれば、それも入れていただいて結構です。

 ということで、石破大臣はちょっと遅れて来られたですよね。ということは、まず浜四津さんからお話しいただきましょうか。お考えをまとめておいていただいて、それでは、ユニバーサル社会リーダーの浜四津敏子さんからお願いいたします。

浜四津 皆さま、こんばんは。ご紹介いただきました浜四津敏子でございます。私は政治家になって15年になりますが、その前は20年間弁護士をしておりました。弁護士をしていたときに、アメリカでADA法が作られた、その前にリハビリテーション法というのがあったわけですが、その理念、そしてまた、その法律の内容を見まして、大変ショックを受けました。何と日本と違うのだろうと思いまして、こういう法律が日本でできたら、社会も随分変わるだろうなと、そのころから思っておりました。たまたま政治家になりまして、「よし、この際これに取り組もう」と思ったわけですが、いくら「ユニバーサル社会を実現する法律を一緒に作りましょう」と言っても、なかなか「何だ、それは」ということで、私は本当に一人で旗を振っているドン・キホーテのような心境でした。

[写真]浜四津敏子議員

 それが今から10年前にたまたまプロップ・ステーションのナミねぇとお会いしまして、プロップ・ステーションの現場を見させていただいたのです。私は「あ、彼女がいた」と。ADA法はパトリシア・ライトさんという女性がリードして作られたのですが、ナミねぇは日本のパトリシア・ライトさんだと、私はそのときに本当にそう思ったのです。これはドン・キホーテではなくて、本当に実現できるに違いないと思いまして、でも、10年たちました。途中でちょっとあきらめかけたこともありますが、でも、一歩一歩ナミねぇに後を押していただいて、ここまでまいりました。

 私はこの日本の国を、本当に人が人らしく、人間らしく、誰もが幸せに生きられる社会、それこそが今はやりの、『国家の品格』という本がベストセラーになっているようですが、私は国も社会も人も格があると。人については人格といいますが、人格者というのはどういう人かといえば、お金持っている人か、そうではない。あるいは、社会的地位が高い人か、そうではないと思います。本当に人に優しい人、思いやりのある人、そういう人が本当に格の高い人格者である。それと同じように、国も社会も経済大国だから格が高いわけではない。一人一人の人間が本当にどんなハンデがあっても、どんな環境にあり、状況にあったとしても、幸せに生きられる、そういう社会こそが本当に格の高い社会だと思います。それが人道国家、あるいは人権国家と呼べるものかと思います。

 そういう理想を目指して、皆さまぜひ力を合わせて、私はもうドン・キホーテは捨てましたので、本当に現実にこれを日本の法律として作り、そして、法律ができれば社会の現実は後から付いてくると思います。必ずしも今、日本がユニバーサル社会になっているとは思えませんけれども、この法律を作ることによって、大きく社会を、国を変えることができる、本当に品格の高い日本にしたいと思っております。ありがとうございます(拍手)。

ナミねぇ 浜四津さん、ありがとうございました。それでは、今ちょっと遅れて登壇されましたが、私の親友、みっちゃんをご紹介したいと思います。ご自身でいろいろなお話をしていただけますよね。まずお一人5分ずつということで、ユニバーサル社会についての自分の思いを述べていただきますので、お願いします。

大平 皆さん、こんにちは。遅れましてすみませんでした。会場には早くから来ていたのですが、娘をあやしておりましたら、この辺がよだれだらけになりまして、ちょっと身づくろいをしていましたら遅れてしまいました。申し訳ございません。

[写真]大平光代弁護士(みっちゃん)

 私がナミねぇに最初にお会いしましたのは、大阪市助役のときでした。一番最初、「一目会ったその日から、恋の花咲く時もある」というテレビ番組がありましたが、全くそのとおりで、一目会ったときから10年来の友人のように感じまして、それ以後のお付き合いです。まず障害者のことを「障害者」と呼ばずに「チャレンジド」と呼ぶ、私はまずそれに感動しました。そして、何らかのハンデを背負ってこの世に生まれてきて、同じ命が同じように輝きたい、そういう思いで「チャレンジドを納税者に」ということで、私は当時行政職にありましたので、微力ですが、何かできることはないかという感じで、これまで付き合ってまいりました。

 残念ながらその後、私はまた弁護士に戻りましたが、1年半前に生まれました娘が実はダウン症を持って生まれました。生まれたときは白血病と、そして心臓に大きな穴がありまして、障害の程度もどの程度か分からないといった時に、真っ先に電話しましたのがナミねぇでした。

 そういうご縁もありまして、私自身、娘に対して「せっかく生まれてきたのだから、この世の中でどんなに小さなことでもいいから、お役に立つような人間になってほしいな」と思いました。それはどの親御さんも同じだと思います。そして、特にダウン症の子といいますのは、染色体検査というのがありまして、出生前に分かるのです。その検査をしましたら、産まないという判断も実はあるのです。これは現在でもそうです。残念ながら、そういう状況の中に、要らない命として葬られることもあるのです。「要らない命なんてないんだよ」、私は娘を通して、そのことをこれからも世の中に訴え続けていきたいと思います。

 それと併せまして、今日絵本を見せていただきましたが、本当に素晴らしい絵本をお描きになっている。お母さまがこれまでどういう思いで支えてこられたのかという、あの絵を見ていましたら、本当にもう胸がいっぱいになりました。表に展示されているのですが、その絵本の前で娘が指を指しながら、「これなあに?」というように聞くのですね。そういう絵本を見て、この子もこんなふうに将来夢を持って生きていってくれたらなと、つくづく思いました。

 そのためにも、やはり自分たち、チャレンジドとして生まれてきた子、そしてその家族だけではなく、その夢を実現するためにはやはり周りの方々のお力が必要です。そして、その社会が実現されるということは、すなわちこの日本が良くなることだと私は思っていますので、そういうふうになっていくためにはどうすればいいのかということを、これから一緒に考えていきたいと思います。今で4分50秒くらいですか。ありがとうございます。

ナミねぇ ありがとうございました。みっちゃんでした(拍手)。先ほどから後ろの方で「ふにゃ」という声がちょっと聞こえているかと思いますが、ご主人の川下清さんと、お嬢ちゃん、悠(はるか)ちゃんもわざわざ来ていただいています。後ろです。はい、拍手(拍手)。この間みっちゃんの家に行って、はるちゃんと遊ばせてもらいました。もうやんちゃで、さすがにみっちゃんのお嬢さんらしく、メンチ切って私の顔をにらんだりしておりましたが、はるちゃんありがとう。

ということで、それでは石破大臣、そろそろよろしいですか。では石破さん、お願いいたします。

石破 どうも皆さま、こんばんは。あいつが防衛以外の話をするのかとお思いの方もおられると思いますが(笑)、私は当選4回のときに運輸委員長という仕事をいたしておりました。そのころ、まだバリアフリーといっていた時代ですが、バリアフリー法というものの審議をいたしました。運輸委員会の筆頭理事としてそれにかかわったのですが、駅の階段、私の選挙区は鳥取県鳥取市なのですが、高齢化率がものすごく高くて、階段にエスカレーターが付いていない。お年寄りは階段を上るときよりも、下りるときの方が体重がかかりますので、よほどしんどい。それで、駅に何とかエスカレーターができないかというような議論から、バリアフリー法は始まったのですが、そのころからかかわっております。

[写真]石破茂大臣

 委員会で一回このようなことをやりました。「羽田空港に車いすに乗った人が降り立ちました。そこから京急に乗って品川駅まで行って、品川プリンスホテルまで行きます」ということを、実際に運輸委員会の委員が体験してみようということをやりました。お恥ずかしい話ですが、私は車いすに乗ったのはそれが初めてでした。車いすに乗るというのがどんなに大変なことなのか。京急に乗るまでが大変、品川駅に着いてから品プリに行くまでがバリアだらけで、とてもこれは品川プリンスホテルまで行けないということを、つくづく実感したという経験がございます。そこから自民党の中にバリアフリー議連というものを作って、私はその会長を仰せ付かって今日まできています。今、ユニバーサル社会実現議連ということで、中心になってやってくださっているのは、このバリアフリー法を運輸省におられるときに企画・立案された兵庫県の盛山代議士ですが、彼が一生懸命やってくれて、一つ一つ前に進みつつあります。

 その議論をしている時に、竹中さんのお話を聞きました。そして、コーエンさんの紹介もいただきました。国防総省がそれをやっているということが、私はそんな話を聞いてはいたのですが、本当にその実際の姿、コーエンさんがやっておられる取り組みを聞いて、日本との差は歴然としていることを感じざるを得ない。世の中にアメリカの悪口を言う人はたくさんいますが、やはりアメリカ合衆国というのは偉大な国だと私は思います。

 なぜ偉大かといえば、それは竹中さんの書かれたもので読んだのですが、国民一人一人が誇りを持って生きることが国防の第一歩だ、国防の第一歩は国民一人一人が誇りを持って生きられる、そういう国なのだと。アメリカは本当に強い国だと思います。力の使い方を時々間違えることがあるのではないかというご批判はご批判として、本当に一人一人が誇りを持って生きる、それは口ではみんな言うのですが、では、日本でそれが言葉だけではなくて、実際にどのように実現しているか。国防総省という国防を担う官庁において、そのことが真っ先に取り上げられているということに、合衆国のすごさを感じます。そして、イラクで、アフガニスタンで傷ついた人がたくさんいる。しかし、その人たちが国防総省のみならず、社会できちんとした機会が与えられる、機会均等のアメリカらしい考え方だと思います。そのために何ができるか。

 皆さま方の中で戦闘機に乗られた方はあまりいらっしゃらないかもしれません。実際にこれに乗るのはすごく大変で、普通の旅客機と訳が違いますので、いろいろな耐圧訓練、急激に気圧が下がったり、あるいは急にものすごく大きな重力がかかったりという、なかなか普通の人ではこのテストにパスしません。私は体力派ですので、何とかパスして、このF15とかF2とか、好きなだけじゃないかと言われるととても困るのですが(笑)、やはりこういうものは乗ってみなければ分からないことがあります。乗ってみなければパイロットのつらさは分からない。乗ってみて、本当に7G、8Gかかるというのはどんなに大変なことか、急激に気圧が下がるのがどんなに大変なことなのか、実際に実感をいたしました。

 体は動きません。ほとんど動かない。マッハ2ぐらいで飛んでいるわけですから、視界もほとんど利かない。音も聞こえない。そういう中にあって、命をかけて飛行機を操る。そこで開発される技術とは何なのか。なかなか目が見えない、体も動かない、音も聞こえない、その中でアメリカ合衆国の国益をかけて、そして世界の平和をかけて戦っているパイロットたちが、五感が利くようにするというのが技術、テクノロジーというもので、だからこそ国防総省の持っているいろいろなテクノロジーを生かして、ユニバーサル社会をつくるのだという考え方。

 大変恐縮ですが、当省においてまだそういう考え方をいたしておりません。それはやはり国家というもの、あるいは今、浜四津先生がおっしゃった人間の品格というもの、尊厳というもの、そういうものに対する価値観、考え方、そこはわれわれはもう一度考え直していかなければなりません。私は竹中さんからいろいろなことを教えてもらい、あるいはいろいろなものを読ませていただいて、通俗な言い方かもしれませんが、ある意味「目からうろこ」みたいなものがありました。国家を考えるということは、すなわち一人一人が誇りを持って生きられる社会をつくることだ、そのために国家は何ができるか。それはユニバーサル社会をつくるということと、国を守るということと、通じるものは大きくて、これから先そのような国家でありたい、政策でありたい、防衛省でありたいと思っております。6分になりました。ごめんなさい(拍手)。

ナミねぇ 石破さん、ありがとうございます。よもやこの場所で石破さんがこのようなお話をされるとは、皆さん思われなかったのではないでしょうか。それでは続きまして、日本経団連、紀陸さんお願いいたします。

紀陸 ご紹介いただきました日本経団連の紀陸と申します。私は産業界の立場からですが、今の障害者の雇用の問題につきましては、いい意味で、二つ追い風が吹いているのではないか。基本的に障害者の方々、雇用の場があるとないとでは大違いでして、どうやってさまざまなレベルの障害者の方々に雇用の場を提供するか。これは経営者にとって、特にこれから労働力の供給がどんどん減っていく。障害者の方はもちろんですが、若い人、よくニート、フリーターといわれる方々が混じっていますが、それのみならず女性の方、および高齢者の方々、こういう方々ひっくるめて、私ども全員参加型の社会があるべきだと。こういう考え方が基本です。

[写真]紀陸孝専務理事

 ちょっと脇に入りますが、日本経団連は昨年の1月に「希望の国、日本」というビジョンを出しました。その中の大きな柱として、全員参加型の社会をつくろう、それを目指そうという提言をさせていただきました。これがまさに本日のテーマになっております共生型の社会に通じるものだと思っていますが、障害者の方、女性の方、若い人、高齢者の方々、どういう形で就労の場を提供するか。

 一つ私どもは、今大きな流れとなっております、皆さま方ご承知のとおりでしょうけれども、ワークライフバランス、仕事と生活の調和を図る。これは、今申し上げたさまざまな方々の就労のニーズや社会参画のニーズはまちまちです。非常に幅広ですし、個々人のニーズは異なっています。これをどうやって受け止めるか。企業の側でも、あるいは、その他さまざまな組織がありますが、そういうところで、さまざまなニーズを受け止めるだけの用意をしておかなければいけません。就労の形も、あるいは雇用形態も違ってまいります。正社員の方もおられますし、言葉は悪いですが、非正規の方々もおられます。そういう中で、会社に行ったり、あるいは在宅で仕事をされたり、それこそまさに今日お話のありましたITを活用して、いろいろな働き方ができる。そういうさまざまな働き方を通じて、いろいろな働く人のニーズを酌み取って、雇用の枠を広げていく。その中にもちろん障害者の方々も含まれるわけです。

 そういう意味で、まさにワークライフバランスの実現、チャレンジはこれからですが、これは政労使で昨年の12月半ばにワークライフバランスの憲章を作りまして、行動指針も作りまして、これから走ろうというところです。私どももいろいろな企業にお願いして、この実践に努めてまいりたいと思っております。そういう意味で、一つ障害者の方々にもいい意味で追い風が吹いているだろうという感じがいたしております。

 もう一つは法的な話ですが、2006年に障害者の自立支援法ができました。これについては、もちろんノーマライゼーションの考え方がベースにありまして、自立した障害者の方々を支援しようという仕組みですが、ただこれについては、いろいろ障害者の方々のご負担が増えるということで、基本的にすべて賛成というわけにはまいりませんでしょう。それにしても、今、現実に雇用される障害者の方々の数が増えていますし、企業における実雇用率も上りの傾向にあります。そういう意味で、状況は少し良くなっています。

 特に今、国会にかけられている障害者の法律の改正案の中には、障害者雇用の義務が掲げられています。特に短時間の就労の方々、20時間以上30時間未満の短時間就労の障害者の方々の働きについて、これを企業に、雇用の義務付けの実雇用率の算定の中に入れるという仕組みです。これは先ほど申し上げましたワークライフバランスの中でも、短時間の就労の方々をきちんと受け止めようという発想がありますが、この障害者の法改正の中でも、恐らく障害者の方々の中で、フルタイムではなくて短時間で働きたいという方がたくさんおられるかと思います。そのような方々を企業の雇用に義務付けて、かついわゆる実雇用率の算定の中にも入れていく。これは実際は厳しい企業もあります。特に机に座ってやる仕事でない場合の、対面的な仕事を多くする、例えばチェーンストアとか、それ以外のサービス業においては、厳しい義務が課されることになりますし、実際に雇用率が未達の場合にはお金を払わなければいけないということもかかります。でも、これは一つ世の中の大きな流れで、基本的にこの法改正については産業界としても了解済みであるということで、こういう面でも障害者の方々の雇用促進の追い風が吹いています。

 このような二つの、性格的にはちょっと違いますが、いずれにせよ、いろいろな意味で、広い意味で全員参加型の社会のうねりが起きておりますし、その中で障害者の方々の雇用の場を広げようという法改正の動き、それについて産業界はいずれにせよ賛同しているということをご理解いただければと存じます。今後とも難しい問題はたくさんあろうかと思いますが、ここにおられる皆さま方と一緒に手を組ませていただきまして、今申し上げたことの実現に取り組んでまいりたいという、そういう状況を披露させていただきたいと存じます。ありがとうございました(拍手)。

ナミねぇ 紀陸さん、ありがとうございました。経済界を代表して、大変心強いお話をいただきました。本当に各界の皆さんが今こうやってパネルで、それぞれの熱い思いを語っていただいております。会場に今日、法を執行していかれる各省の事務次官の方が何名かお見えかと思いますが、ちょっと挙手いただけますか。はい、ありがとうございます。

 ちょっとお顔が見えにくいですが、今お手をお挙げいただいたのは銭谷さんですか。せっかくお越しいただいておりますので、教育ということで、文部科学省の次官の銭谷さん、今、手を挙げていただきましたので、教育の行政に携わる方として、今ダイナーさんのお話の中で、やはりお仕事をするのにさまざまなスキルというような教育の重要性も出てきましたので、一言だけ発言をしていただけませんでしょうか(拍手)。前に出ていただいて、ここで、ぜひマイクで。すみません、突然指名しまして。せっかくいらしていただいているので。

[写真]銭谷事務次官

銭谷 失礼いたします。文部科学省の事務次官の銭谷と申します。「ユニバーサル社会の実現をめざすシンポジウム」で、今、各パネリストの方からお話がありました。私ども教育の分野を担当しておりますが、実は昨年、一昨年、いろいろな制度改正を行いまして、教育の場でもノーマライゼーションの考え方に立って教育を進めていこうということで、今かつての盲・ろう・養護学校を「特別支援学校」と改め、また小学校、中学校でも発達障害のお子さんを含めて、一緒に教育をしていけるようなシステムを作るように、今努力をしているところです。併せて、交流学習と協働ということをメーンテーマに、障害をお持ちのお子さんと普通のお子さん、健常のお子さんがいろいろ学び合えるようなことをしていこうと努力をしているところです。

 今日は本当にユニバーサル社会の実現をめざすために、いろいろなお話をお伺いできまして、また、この後もいろいろパネラーの方からお話があろうかと思いますが、私どももそういう方向で努力をしていきたいと思っております。今日はありがとうございました(拍手)。

ナミねぇ 銭谷さん、ありがとうございました。突然指名して申し訳ありませんでした。ということで、途中でちょっとダイナーさんからコメントをいただきたいと思います。今それぞれの皆さんからご発言いただきましたが、お聞きになって何か感じられたことや、あるいは、発言者に何かご質問されてみたいことなどありましたらお願いします。2〜3分でご発言お願いできますか。

コーエン ナミさん、ありがとうございます。ここで申し上げたい一番大切なコメントは何かといいますと、このコンセプトが大事だということです。私たちはADAを持っているということ、そして、多くの企業は最初の段階において、これはできるだろうかという心配を持っていたということです。ADAはどんなインパクトを持つのだろうかという懸念を持っていたのだということです。そして、雇用主たちも、恐らくはあまりにもコストがかかるだろう、もうからなくなってしまうだろうということで、こういった障害者の雇用には腰が引けていたという問題であるわけです。

[写真]ダイナー・コーエン理事長

 ところが、ADAが設立されてから、もう既に18年経過しています。そして、多くの企業の雇用主たちはこう言っているわけです。「全くお金なんかかからなかった」ということです。障害者を雇い入れるからといって、お金などかからなかったということです。ところがその一方で、彼らをスタッフに迎え入れたことによって、どんどんお金が入ってくるようになったということです。つまり、あまりにもお金がかかるだろうということで、かなり雇用主の側では、こういった人たちを雇用することは良くないという考え方はあるわけですが、そうではない、500ドル以下なのだということです。通常の場合には、例えば長期欠勤する人もいない、また仕事を辞める人もいない、離職率も減ってくるということになります。

 そしてまた、もう一つ、最も高いレベルの障害を持つ人たちが、実は最も生産性が高いのだということです。つまり、その中で一番大切なことは何かといいますと、これから先、大きな困難を克服しなくてはいけないのだということです。

 そしてまた、もう一つ、映画「フィールド・オブ・ドリームス」のようなものを作っていったら、つまりこういった社会をつくることさえできるのならば、実質が伴ってくるということです。そしてまた、このような社会をつくることによって、皆さんは障害者を巻き込むことができるようになってくるわけです。つまり、障害者によって私たちが利益を得ることができるようになります。私たちは十分に長く生きていったなら、私たちはもしかすると、長く生きている間に自分たちが障害者になるかもしれません。そうなったならば、障害者のための法律があるということは、私にとってのメリットということになります。ですから、まさに今こそ変化をもたらさなくてはいけないときだということになります(拍手)。

ナミねぇ ダイナーさんありがとうございました。それでは、今のダイナーさんの途中もコメントも含めて、またパネラーの皆さんから一言ずついただきたいと思います。今度は3分ずつぐらいになりますが、紀陸さんの方から順番によろしいですか。お願いします。

紀陸 今、ダイナー理事長のお話がありましたが、今、企業の採用の意欲は非常に強くて、さまざまな技能を持った方々を企業の中に確保しようというような大きなうねりはできていると思うのです。その場合に障害者の方々に対しても、今、昔と違って企業の社会的責任というものが強くいわれている中で、さまざまな企業で障害者の方々を雇用しようという意欲は、かつてと比べると非常に強くなっています。現実に私もそういう感じがあります。ただ一番の問題は、これは障害者の方だけにとどまらないことなのでしょうけれども、技術・技能のレベルの高い人を当然ながら企業は求めますが、そういう人たちをどうやって育てるか、これが一番難しいところだと思います。どの人でも、ある程度技能レベルが上がらないと、いい処遇は受けられないわけです。いい大学を出たから高い給料というわけにいかなくて、今の時代には実際の個々人のレベルに応じた賃金や処遇という形になってきております。障害者の方々に対して、それをどのように実現するか。一つにかかって、技術・技能の育成をどういう形でやるか、これが現実的には非常に悩ましくて難しい問題だと思っております。

 ここにはそういうことに関連して、さまざまなご苦労をされておられる方がたくさんおられるかと思います。その場合に、例えば、今いろいろな形で働きながら技術レベルを上げていくような形の取り組みがありますが、こういうものを障害者の場合にも入れていくことを考えられないか。これは企業の方にも負担がかかりますし、働く障害者の方々にも負担がかかりますが、そういうことを地道にどのように実現していくか。さまざまな授産施設の中で、技能を上げていく機会を増やしていくことも必要ですが、同時に、もう一つ企業の方も、就労しながらトライアルの雇用の場を作って、技術レベルを上げていくようなことが重要ではないか。それが本当の意味のノーマライゼーションの仕組みの実現につながるだろうと。私も十数年前にアメリカに行きましたが、やはりそういう世の中の雰囲気ができているわけです。その雰囲気がまだ日本に乏しいわけで、これをどうやって広く厚くしていくかが大事だろうと思っています。

ナミねぇ ありがとうございます。企業の中で本当にその人が力を発揮できるような、能力と個性をどのように磨いていくか、そのプロセスが非常に重要と、全く同感です。プロップ・ステーションは17年活動してきまして、やはり最初の10年ぐらいはいろいろな方がその人の個性を伸ばし、能力を磨く年月でした。そして、今その方々がベッドの上にいても、例えば、先ほどくぼりえさんの絵の発表がありましたが、家族の介護を受けていらしても、その人の能力できちんとお仕事ができるという技術と、それから熱い思いでやってこられたわけです。ですので、まずそのような技術や能力を磨くということは、今お話のとおり本当に大前提で、それをどのようにそういうプロセスを広げていくのかということが大事だと、今のお話でもあらためて思いました。

 それでは、これから未来をいっぱい持った悠ちゃんを授かったみっちゃんからぜひ。すごい教育ママですよ。英語をはるちゃんの耳元でしゃべっておられます。

大平 障害とは一体何なのだろうと、このごろつくづく思います。確かに今、一般的に障害者と言われている方は、体が言うことを聞かなかったり、人ができることができなかったりするかもしれません。でも、現状であっても、かけっこの速い子もいれば、遅い子もいる。勉強のできる子もいれば、できない子もいる。それぞれ個性なのですね。ところが、体にハンデがあったら、それは障害だと言われる。でも、私はそれは違うと思うのです。ハンデはあるかもしれないけれども、それは障害ではない、むしろ障害と言うのは、そういう人たちを障害者だと決めつける心の方にあると思うのです。

 ここにいらっしゃる方々は、ユニバーサル社会を目指して何とかしようという方々がお集まりになりますので、皆さんはそういう意味での心の中のバリアフリーはできていらっしゃると思います。しかし、この世の中、大半の方はそうではありません。残念ながらまだまだ、そういう意味での心の改革はできません。そして、大人になってから意識を変えようと思っても、これはなかなか難しいと思います。既に何十年と人格形成がされていて、それまでの価値判断を変えろというのはなかなか難しいです。

 ですから、今日せっかく文科省から銭谷さんがいらっしゃっていますので、名指しですみません、文化庁の時からお知り合いということで、ちょっと今日は勘弁していただきたいのですが、ぜひ子供たちには物心つくころから、いろいろな人たちがいるのだと、体にハンデを背負っている人、そして知的ないろいろハンデを背負っている人も、同じ人間だという環境の中で、子供たちがすくすくと育っていってくれたらなと、そのためには民間だけの力ではどうしようもないこともありますので、そういう意味で、文科省の方では子供たちにはそういう教育を、頭のやわらかい子供たちにそういう教育をぜひともしていただけたらと思います。

 要望になりましたが、子供が健やかに育ってくれるということは、私たち大人が安心して暮らせるということにもつながると思いますので、ぜひともよろしくお願いします。

ナミねぇ はい、壇上から名指しの要望でしたが、ありがとうございました。はるちゃんが大人になるころに、日本がすてきなユニバーサル社会になっていてほしいですね。それでは浜四津さん、お願いします。

浜四津 2003年にユニバーサル社会をつくる与党PTを作りました。2004年には参議院で、ユニバーサル社会を形成するという決議がなされました。そんなことで、一歩一歩水かさを増してきたという思いがいたします。

 実は一昨年の夏、こういう流れの中で、今日のようなユニバーサルの会合を開きました。そこにスウェーデンからレイナさんという方が来てくださったのです。この方はプロの歌手で、とてもきれいな声で歌を歌ってくださいましたが、歌手であり、画家であり、作家としても活躍しておられます。そのレイナさんは、実は両腕がないのです。左足は右足の半分の長さしかない、そういうハンデを持った方です。レイナさんがこうおっしゃったのです。「私は障害を持って生まれて、本当に良かったと思っています。スウェーデンに生まれて良かったと思っています。子供のころから『あなたはほかの人と変わらない価値を持っているのよ。やろうと思えば何でもできるのよ』と言われて育ってきました。親からももちろん差別されなかった。学校でも、社会でも、激励はされたけれども、差別はされませんでした」。

 こういう話を聞きまして、障害を持って生まれることが不幸なのではなく、生まれる国によって幸・不幸が決まるのだなと思いました。スウェーデンのように、日本もどんなハンデがあっても、「本当にこの日本に生まれて良かったな。私はこういうハンデがあって、人の痛みが分かる、そういう深みが自分に生まれて良かったな」と、このように言えるような国にしたいと思っております。

 「障害があっても、障害のない人と同じように普通に生活できますか」という質問を、調査をあるところでいたしました。その結果、例えばドイツでは「差別は感じたことがありません」というお答えが81%だったのです。日本では何パーセントだとお思いでしょうか。わずか18%でした。この差なのだと思いました。ともかく本当に豊かな活力ある社会をつくるためには、この差を縮めていかなくてはいけないと思いました。

 これまで日本では障害者の方というと、障害者の方が自分を社会に合わせなくてはいけなかった。そうではなくて、社会が障害者の方が生きやすいように、そういう社会に変えていかなくてはいけない。つまり、社会を障害者に合わせる、チャレンジドに合わせる、つまり社会を変えていく、保護される立場から一緒に社会をつくっていく、共に生きる社会に変えていく。このような理念に立って、このたび起草委員会でユニバーサル社会の基本法の骨子案をまとめました。ナミねぇ、言っていいのでしょうか。

ナミねぇ このシンポジウムの最後に、私がこの呼びかけ文を読み上げさせていただこうと思っております。

浜四津 そうですか。では、詳しいことはナミねぇにお任せしますが、今お話ししたような理念で、日本は今さまざまな問題を抱えております。経済的にも、あるいは子供たちの問題、少子化の問題、いろいろな問題、家族の問題も抱えておりますが、私は根は同じだと思っているのです。ともかくこの社会を、日本を本当にいい社会に変えたいという理念で、このユニバーサル社会基本法をぜひ一日も早く成立させたいと思っております。ハンデのある人、あるいは弱い立場の人、あるいはチャレンジドの人、そういう人たちが暮らしやすい社会というのは、実は自分は健常者だと思っている人、自分は普通の人だと思っている人、そう思っていただくのは自由なのですが、ともかくすべての人にとって暮らしやすい社会なのだと思います。ともかくその理想に一歩一歩近づいてきた、水かさを増してきたなというのが本当に実感でございます。いろいろな方から、いろいろな分野で力を貸していただいて、私は政治の分野で法律を作って、そのような社会を実現する一つの力になりたいと、あらためて決意をしております。

ナミねぇ ありがとうございました。浜四津さんでした。実は私は、この日本をユニバーサルな社会にしようということで、たくさんの皆さんと一緒にやってきたのですが、今年1月に、最初にビデオでメッセージをいただきましたが、福田総理が設置された社会保障国民会議の委員をさせていただき、このような発言をまたそのような場でも続けさせていただいています。今、会場の方にその社会保障国民会議の補佐官ということで選任されました伊藤達也さんがいらっしゃったので、ちょっとお立ちください(拍手)。ありがとうございます。またご挨拶は後ほどの会の方でということで。

 それでは、石破さん、このパネルの最後のご発言になりますが、わずか3〜4分しかありませんが、ぜひ熱く語ってください。お願いします。

石破 理念も理想も高くあらねばならないと思います。ただ、このユニバーサル社会を実現するために、やはり何らかの実利がないと、なかなか実現しないということがあって、実利とは一体何であろうかという議論もしておかねばならないのだと思っております。例えば合衆国では失明した士官であっても勤務ができる、いろいろな教育を行うことができる。それによって高い知識を得ることができる。同時に、もし退職させてしまっていたら、すごいお金を払わなくてはいけない。その分は浮きますよという考え方もあるのであって、実利というと嫌らしくぎらぎら聞こえるかもしれませんが、それをどう仕組んでいくのかということは考えていかなければならないのだと思っております。それが一つです。

 もう一つは、本当かどうか知りません、私は金も暇もないので行ったことがないのですが、東京ディズニーシーというのがあって、あそこは障害者割引をやらないのだそうです。「なぜだ。ほかの遊園地では障害者割引何パーセントかあるのに、ひどいじゃないの」と言った人に対して、「いえいえ、この東京ディズニーシーはどんな障害を持った人でもちゃんと楽しめるように作ってあります。従って障害者割引はしないのです」という考え方なのだそうです。やはり私は障害者割引というところには発想の悲しさ、貧しさみたいなところがあって、社会全体でどうつくるのかという話をしていかなければならないと思います。

 高い理想を実現するためにもう一つ要るのは、ホスピタリティなのだろうと思っています。例えば段差のない歩道というのは、車いすの方にとってはよろしいですが、歩行者にとってはいつ車が飛び込んでくるか分からない結構怖い歩道だと。あるいは点字ブロックというのは、これも人さまから聞いた話ですが、視覚障害者の方にはいいのだけれども、車いすの人にとっては危なくてしょうがないと。だから、ユニバーサルというのはすごく難しいという話になるのだろうと思います。そこにおいて、やはりホスピタリティ、そのような人たちに対して、社会がこうできていますから、ハードがこうできていますからというだけではなくて、先ほど私は生まれて初めて車いすに乗ったという話をしましたが、車いすはすぐバタンと後ろに倒れてしまいます。そこで誰がホスピタリティをもって支えていくかというのは、文科次官がいらっしゃるので言うわけではないですが、やはり教育なのだろうと思っています。

 自民党のバリアフリー議連というか、ユニバーサル議連でよく議論しているのは、やはり子供たちに、視覚に障害を持った人はこんなに苦しいというか、視覚が奪われるというのはこういうことなのだよということで、アイマスクをしてやってみましょうと。あるいは聴覚であれば、あるいは肢体に何かの障害があれば、それをやはり実感としてきちんと会得をしないと、ホスピタリティというのは出てこないのだと思うのです。そういうことをきちんと学ぶということは、あるいはほかの学問をやるより人間として大事なことなのかもしれません。自分のことしか考えないで、いい大学に入って、いい会社に就職したって、ろくなことはないわけで、そういう気持ちをきちんと学ぶことは、それはゆとりの時間を使いますとか何とか、よく分からないことを文科省はおっしゃっておられたように、今は違うのかもしれませんが、どの時間でやるのだと。ゆとりの時間でそれぞれの学校が任意にやりましょうと、やってもやらなくてもいいということではないのではないかと思います。

 最後に、先ほどアメリカの士官の話をいたしました。お恥ずかしいことですが、当省において障害を持たれた方の雇用率が今2.11で、これは政府の基準はクリアしているのです。ただ、これには仕掛けがあって、いわゆる自衛官、制服を着た陸上自衛官、海上自衛官、航空自衛官は母数から除外してありまして、事務官といいますか、そういう方を母数にしているので2.11というのをクリアしています。やはりそれは、先ほどのハイテクノロジーの話ですが、そうではないのだと。自衛官であっても、それだけの雇用はしていかなければならないのではないかと言うと、当省関係者は来ていませんよね。また大臣は何を言い出したのかみたいな話になると具合が悪いのですが、やはりそういう考え方というのは、私どもとして、していかねばならないのだろうと思っております。官が率先してという考え方がいいのかどうか分かりませんが、少なくとも防衛省として、自衛官はこれから除くという考え方は、もう一度ちゃんと検討していかなければいけない、そういう意味でアメリカ国防総省が何をやってこられたのかということを、当省としてきちんと検証していきたいと思っています。以上でございます(拍手)。

ナミねぇ 石破大臣、ありがとうございました。皆さんから素晴らしいご発言、力強いご発言、そして、いろいろな思いを聞かせていただきました。今日はダイナーさんをペンタゴンから、アメリカからお迎えしました。先ほど浜四津さんが、数年前の、おととしでしたか、私どもと一緒に開いた国際会議で、レイナ・マリアさんというスウェーデンのゴスペル歌手ですが、両腕がなくて、片足は赤ちゃんのときのようなという、しかし素晴らしい歌手だったという方のお話をしてくださいました。海外でそういった先進事例といいますか、障害があっても素晴らしい生き方をされている方がいるということを、プロップ・ステーションではたくさんご紹介してきました。しかし、これは決して、あの国だったらできるけれどもという話ではないのです。あの国だからできるけどとか、あの国はできているという話ではなくて、私は日本の国の人たちは非常に心も温かくて、よその国の事例から学ぶことがあったときに、必ずその国以上に素晴らしいことができるはずだと、強く信じています。信じているから、このような各界でいろいろ影響力のあるお仕事をなさっている皆さんに集まっていただいて、お話から得たヒントを基に、それに負けない素晴らしいものを生み出せる自分たちであるということを、ご一緒に証明できるようにしていきたいということが、この会の一番大きな目的です。

 そういう意味で、今日はダイナーさんにご参加いただきまして、日本の各界の人たちがいろいろな発言をされました。最後にちょっとダイナーさんのコメントで締めていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。日本のみんなへのエールも含めてお話しください。

コーエン 本当に皆さんとご一緒できて良かったです。そして、このようなドラフトを目の前に置いているわけですが、この宣言があるということ、そしてまた、このエネルギーに満ちた情熱的な皆さんがいらっしゃれば、絶対にできます。必ずできます。前進することは可能です。そして、この国を変えることができると思います。インクルーシブ・ソサエティーを作っていくことができる、そういった障害を持つ人たち、チャレンジドを巻き込んでいくことができると思います。そして、その中で、例えば将来に向けての雇用主になる、そして変化を引き起こす、自分がその主体となるのだという力になっていただきたいと思います。皆さんにぜひお願いします。絶対できるのだという気持ち持って、お願いしたいと思います。ぜひとも素晴らしい活動を進めて、ユニバーサル社会をつくっていただきたいと思います。必ずできると信じています(拍手)。

[写真]宣言文を読み上げるナミねぇ

ナミねぇ ダイナーさん、エールをありがとうございました。それでは、シンポジウムの最後に、皆さんお手持ちのこの黄色い紙を出していただけますでしょうか。ダイナーさんのお手元には英文がいっております。「ユニバーサル社会基本法の制定に向けて―元気な日本を創ろう―」を、せんえつですが、私の方から読み上げさせていただきたいと思います。

 

 

(宣言文 「ユニバーサル社会基本法の制定に向けて ― 元気な日本を創ろう ―」 の読み上げ)

今、「日本の将来が心配だ」「今の日本人は元気がない」、そんなふうに感じている人が多いのではないでしょうか。格差問題や少子化問題、ストレスフルな職場、家族や地域の絆の弱体化など今の日本は問題が山積しています。さまざまな国際ランキングでも日本の地位が低下しています。

日本が元気になるためには地域や職場が元気になることが必要です。地域や職場が元気になるためには、それを構成する一人一人が元気になることが必要です。

人が元気になるためには、自信と誇りを持って暮らすことが必要です。年齢、性別、障害の有無などにかかわりなく、だれもがその個性や能力を社会で認められ、その個性や能力を生かして生き生きと暮らすことができることが重要です。また、その異なる個性や能力を持つ者が互いに助け合い共に力を合わせることで誰もが暮らしやすく、またしなやかで強い地域や職場を作り出すことが可能となります。

こうした課題にかかわるわが国の法制としては、男女、障害、高齢など各分野ごとの基本法がありますが、トータルな法制はありません。すべての人が多様な個性や能力を生かし、相互に理解し合い、共に助け合い、だれもが住みよく暮らしやすい真の意味で強くやさしい社会を我々は「ユニバーサル社会」と呼びたいと思います。わが国の少子高齢化は今後ますます加速することが見込まれています。「ユニバーサル社会」の形成を加速し、すべての人が生き生きと力を発揮できる環境を整えることはわが国の喫緊の課題です。

人は、だれもが年をとります。障害を持つ可能性、心を病む可能性を持っています。この問題は、すべての人にとって「他人事」ではなく、今の自分、将来の自分、そして自分の子どもたちの住みやすい社会づくりの問題なのです。

以上のことから、次のことをめざして、その推進力となる「ユニバーサル社会基本法」を早急に制定することを提案します。

○ 国民一人ひとりが、その個性や能力を生かして活躍できる環境を整備することにより個人を元気にしよう
○ 個性や能力の違う個人が互いに助け合うことにより生きやすい、暮らしやすい環境を生み出し、地域や職場を元気にしよう
○ 個人と地域や職場が元気になることにより日本を元気にしよう

社会福祉法人プロップ・ステーション理事長 竹中ナミ
ユニバーサル社会基本法 起草委員会

 

以上です。この考え方にご賛同いただける方、ぜひ拍手をお願いいたします(拍手)。

 ありがとうございました。皆さんいろいろなご自分の理由があって、今日はこの会に来ていただいたことと思います。心から感謝いたします。

 ちょっとだけ私のお話を最後にさせていただくと、私自身は娘が35歳なのですが、重症心身障害ということで、大変重い脳の障害を持って授かりまして、35歳の今も私のことは「おかん」というふうには分かっておりません。一生ベビータイプのチャレンジドなのです。しかし、私にとっては非常にかわいくて尊い、誇りに思っている存在です。彼女を授かって、私は今、ここでこのような役割を担わせていただいているのだなと、毎日毎日思わずにはいられません。

[写真]ナミねぇ

 ですが、彼女を残して安心して死ねる日本かというと、ちょっとまだ、「ん?」と思うのです。そういう意味で、私が安心して彼女を残して死ねる日本にするにはどうしたらいいだろうかと真剣に考えたときに、一人でもたくさんの人が彼女のような存在を支えてあげるという、「みんなで力を合わせて支えたるで」と言ってくれる日本にしてから死ぬしかないのだなと。そういう意味で、私は娘のおかげで活動を続け、今日もこうしてたくさんの皆さんのご支援、ご賛同をいただいて、このような会を開かせていただくことができました。本当に心から感謝をしたいと思います。このパネルディスカッションで本日のシンポジウムは終了になりますが、あらためて皆さんに感謝をささげ、私から拍手を申し上げたいと思います(拍手)。

 ありがとうございました。それでは、パネラーの皆さん、ちょっと前に出ていただいて、お約束の記念撮影です。それから、悠ちゃんを抱っこしたみっちゃんのだんなさまはおられますか。前へどうぞお並びください。もしかしたらはるちゃんぐずって、ミルクタイムかな。おられました。はい。悠ちゃんは家族で東京へ来たのは初めてなのです。寝ている。ごめん、静かに、静かに。大丈夫ですか。お父さんも一緒に。嫌なのですか。さすがみっちゃんのだんなさん、遠慮がち。ああ、かわいい。ということで、それでは記念撮影に入りたいと思います。

[写真]

恒例の記念撮影にて (左から) ナミねぇ、コーエンさん、石破さん、浜四津さん、大平さん、悠ちゃん、紀陸さん

ナミねぇ どうも皆さん、本日は本当にありがとうございました。これをもちまして、今日のシンポジウムを終了させていただきたいと思います。お疲れさまでした。どうぞ皆さん、お気を付けてお帰りください(拍手)。

 

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パネルディスカッション (1:01:29)

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