<ユニバーサル社会の実現をめざすシンポジウム>

ダイナー・コーエン米国防総省CAP理事長 基調講演

ナミねぇ それでは皆さん、大変お待たせいたしました。ダイナー・コーエンさんの基調講演をこれから聞かせていただきたいと思います。コーエンさんはお話の中でパワーポイントを使われます。皆さんのお手元の資料の中に、そのパワーポイントを翻訳したものが、A4、3枚ですが、入っておりますので、彼女が画面上英文のものを使いますが、お手元のものを確認しながらお話を聞いていただければと思います。それでは、ダイナー・コーエンさんお願いします。

[写真]ダイナー・コーエンCAP理事長

コーエン 皆さん、こんにちは。ナミさん、そして、ご臨席の皆さま、ここにお招きいただきまして、ありがとうございます。このような皆さんの前でのお話は、私にとって本当に光栄なことです。リーダーシップ、そして希望ということを考えた上で、それを私の気持ちを伝えていく中で、例えば障害者の社会における進展、あるいは雇用の分野において、何か変化を生み出すことができるのだということをお話ししていきたいと思っています。

 さて、CAPについてお話をします。CAPはComputer/Electronic Accommodations Programというもので、1990年代に作られました。このプログラムはDOD(国防総省)が作ったもので、コンピューター電子調整プログラムと呼ぶわけですが、ありとあらゆる職業のために、このようなプログラムを提供することができるようになっています。これはクリントン大統領のころに行われたわけですが、彼は何か違いを生み出そうということを考えました。その際に、中心的にDODから予算を出すことは出すのですが、それに加えて、さらに他の政府機関に対しても、いろいろなサービスを提供することができるようにしなくてはいけないと考えたわけです。これが2000年のことです。そこで、65のさまざまな連邦政府機関、それから私の同僚、国務省の方もいらしていますが、その他、商務省や労働省など、さまざまな機関に対してのサービスを提供することができるようになっています。ということで、このような形で6万1000を超えるAccommodationを行ってまいりました。

 この数年前の状況を見てみますと、私たちは最も厳しい30人の方々、つまりメディカルセンターに運び込まれた方々、例えばテキサス・レンジャーの中で、いろいろな障害を負った方々に対して、これまでは全く提供することができなかったことができるようになったということで、非常に嬉しく思っています。このような形で私たちは就労支援をしようと考えています。就労支援とAccommodationを行っていくということです。そして、それを行うことによって、障害を持つ人々に平等なアクセスを担保することができるわけです。つまり、情報を中心とする環境において、さらにまた国防総省において、あるいはその他の政府機関において、いろいろな機会を実現していくことができる、雇用機会を得ることができるということです。

 その中で一番大切なポイントは何かといいますと、支援技術ということです。この支援技術はどこにあるのかということですが、これは基本的には実はDOD(国防総省)なのです。例えば、教育省や厚生省といったところにあるのではないかと考えるかもしれませんが、そうではありません。基本的にはこのようなさまざまなテクノロジーは、国防総省の中にあるのです。この米国国防総省が実は最も優れた、最もハイレベルの技術を用いていなければいけない省であるがゆえに、長きにわたってコミットメントを持ってきたわけです。つまり、戦争で怪我をした人たち、さまざまな傷痍軍人がいるわけですが、そういう人たちに対して、いろいろなAccommodationを行うということについては、長い歴史を持っているわけです。

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 そこで私たちは何をしているでしょうか。私たちの目的は、必要なサービスをこういったツールという形で提供していくということです。彼らが自分たちの仕事を果たすことができるようにということです。そこで、私たちの予算を使って、さまざまなAccommodationの機器を買います。私が買って、それをユーザーに届ける。非常にシンプルな話ではありますが、そういうことです。私たちはその際に、例えば国防総省の側で、誰かが手がないからといって、それでコンピューターが使えないなどという話を聞きたくないのです。国防総省でもほかの政府機関でもいいのですが、視力がないからコンピューターが使えないとか、仕事ができないという話を聞きたくはないと思います。つまり、あらゆる人がそれができるようにしていかなくてはいけない、つまり平等な土俵を作っていかなくてはいけないわけです。

 でも、実際に自分に何が必要なのかということが分からない人もいます。そこで、ニーズの評価をするのです。その中では、どういう技術が存在しているのかということを伝えることから始めなくてはいけません。そして、その際に、インストールを行って、最終的なインテグレーション、統合まで、すべて行わなくてはいけません。つまり、コンピューターの環境ということを考えたときには、一つのテクノロジーを使っている、その一方で、私たちがまた違った環境を提供するかもしれない。そうなった場合には、テクノロジー同士をうまくつなげていかなくてはいけない、そのような統合の作業をしなくていはいけないと思っています。

 そしてまた、トレーニングも行います。このトレーニングをすることによって、障害を持つ人たち、チャレンジドの人たちをこのような形で雇い入れることがいかに重要であるか、そしていかに有用であるかということが分かっていない人が多いので、その人たちに対してのトレーニングを行っていくわけです。つまり、非常に能力の高い人たちのプールがある、そういったところから能力を使っていこうではないかということです。それについていろいろとお話をしますので、それは皆さん、学んでいただきたいと思います。

 そしてまた、いろいろな法律があります。先ほどADA(障害を持つ米国人法)のお話が大使からありましたが、そのようないろいろな法律があります。それから、リハビリテーション法というのがあります。ADAよりさらに古い法律ですが、こちらでは連邦政府の中で、まずモデルにならなくてはならないと考えたわけです。つまり、私たちは変化をもたらさなくてはいけないと考えた、これがまず第一歩ということになります。

 そこで、まず採用の段階において、支援を提供しなくてはいけない。雇用についても同様です。そして、昇進、また雇用の継続ということも重要です。これがチャレンジドの人たちに対する支援であるわけです。

 そしてまた、新しい顧客と考えられるような人たちがいます。これがいわゆる傷痍軍人で、戦場から帰ってきたけがをした人たちです。これは皆さんもよく分かっていらっしゃると思いますが、非常に残念な出来事ということになります。イラク戦争において、4000人もの軍人が命を落としています。しかしながら、死亡の数は4000人でも、実際に怪我をした、いわゆる傷痍軍人の数はもっと大きくなります。

 実際、何をこんな話をしているのか、よく分からないかもしれません。しかし、今お話しする内容というのは面白い話なのです。皆さんがやろうとしていること、これはこの環境、つまりコンピューターのある世界においてやっていくことができる、いろいろな楽しいことなのだということです。手をうまく使うことができない人もいます。その場合には違った種類のキーボードを使っていくわけです。ポインティング・デバイスについても違ったものを使っていただきます。あるいはハイエンドで、例えば音声認識というテクノロジーもあります。そして、それをすることによって、皆さんにご理解いただきたいと思うのですが、この音声認識は非常に強力です。この技術がどのようなものかということを皆さんにお伝えしていきたいと思います。

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 では、ここで、音声認識のソフトのデモをしたいと思います。「起動して、ドラゴンパッドを開いてください」。ご覧のように、音声認識のソフトを使って、直接ワープロを駆動することができます。また、このプログラムを用いて、データベースやスプレッドシート(表計算ソフト)、E-mailのプログラム、あるいはウェブの検索エンジン、ブラウザを使うことができます。こちらでは「最小化をクリック」「ブラウザを起動」と指示を出しました。「アドレスバーにいってください」「www.navy.milにいってください」「下にスクロール」「スピードアップしてください」「スクロールストップ」「次にバイオを見ます」「クローズをクリック」「ドラゴンパッドを開始」「ピリオドを入れる」。

 という形で、このような音声認識ソフトを用いることによって、例えば四肢麻痺や、脳性麻痺の人、筋萎縮性側索硬化症の人、あるいはまた、重篤な上肢障害を負った傷痍軍人などについても重要ですし、さらに反復性ストレス疾患に苦しむ人にとっても朗報となります。これは一つの例ということでご覧いただきました。非常にシンプルに見えるかもしれません。しかし、それが存在することによって、多くの人たちに門戸が開かれたわけです。もうこれからは仕事をすることができないと思っていた人たちが、働くことができるようになったわけです。

 ちょっと皆さんに手を挙げていただきたいのですが、皆さんの中で、本というのは、もっと小さくなった方がいいとお考えだと思うのですが、私たちの場合でいいますと、例えばもっと小さくなった方がいいと思う人もいると思うのですが、しかしながら、もっと大きくなった方がいいという人もいます。つまり、スクリーンの拡大が必要な人がいます。それから、テレコミュニケーション、電子通信というのもあります。多くの人たち、例えば聴覚障害のある人、あるいは難聴、全ろうの人、その中で電話などのさまざまなコミュニケーションツールがあるわけで、それを使わなくてはいけないということになったならば、どうなるでしょうか。そういうときにはTTYというのがあります。テキストテレフォンというのですが、そういった形で文字で見ることができるようになるわけです。それからまた、テレビ会議というのもあります。そしてまた、聴覚を支援するための技術が必要となる人もいるでしょう。

 例えば、多くのアメリカ人の方々と同じように、私もちょっと聴覚が怪しくなってきています。聴覚がなくなる理由はいろいろだと思いますが、私の場合にはロックコンサートに行き過ぎて、聴覚を失ったということになります。ロックコンサートに行くと、アンプのそばに立たないと、音楽を思いっきり楽しむことができませんよね。それをやってしまったのですが、残念ながら、今どうなったかといいますと、女性の声の方が男性の声よりもよく聞こえるわけです。特に女性の低い声はよく聞こえるわけです。もう一つ、この中で、いわゆる男性のテナーの声がなかなか聞こえない。そして、25年間にわたって、私はある男性と結婚していますが、その夫の声は全然聞こえないという状況です。ということで、そういうテクノロジーがあるわけです。そして、その中で私たちはそういったテクノロジーを使うことによって、生産性を高めることができます。

 先ほどビデオで見せましたような技術があります。つまり、耳が聞こえないのであれば、例えばマイケル・ヤングさんの声が聞こえないのであれば、何を言っているか分からないわけです。アメリカの場合は、例えばすべてが参画するためにキャプション(字幕)を付けます。皆さん分かるかどうか分かりませんが、一番常にテレビがオンになっていて、キャプション(字幕)が出ているのは、どういう場所か分かりますか。知っている人は声を上げて言ってみてください。

 答えはスポーツバーです。スポーツバーにいくと必ずキャプションがあります。日本にはあまりたくさんないかもしれませんが、アメリカではどこに行ってもそういったものがあって、いろいろなスポーツのゲームを見るためにスポーツバーに行きます。そうすると、必ずテレビがオンになっていて、キャプション(字幕)が付いています。でも、そういうスポーツバーは耳の不自由な人のことを考えてそうしていると思いますか。そうではないのです。というのも、スポーツバーに行くと、誰だって何も聞こえなくなってしまうのです。耳が不自由な状態になってしまう。要するに、キャプション(字幕)を見なければ中身は分からないというのが、そういう場所なのです。ですから、ユニバーサルデザインというのは、実は健常者にも役に立つということです。単にチャレンジドだけのためではないということです。

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 ここ何年間かの間でどういうことをしてきたかということで、6万1000以上のリクエストに応じてきました。Accommodationが欲しいというサービスの要望に応えた件数です。つまり、Accommodationを受けた人たちというのは、われわれが雇った人ではありません。障害者として雇った人の数ではなく、大半が後になって障害を持った人なのです。もともと健常だった人です。Accommodationがあれば、より長い間、生産的な人生が送れるということです。

 私はそのセンターを持っております。2005年のことでしたが、ナミさんをはじめ、プロップ・ステーション、そして日本のいろいろな組織の方が訪問してくださいました。私のセンターではいろいろな技術をお見せしています。どのような使い方をするか、そして、そのメリットについてもご紹介しています。このセンターの素晴らしいところは、マネージャーは、例えば車いすの人が、手がない人が、どうやって仕事ができるのかと、もともと思うわけです。そういった人たちがセンターにやってくると、このテクノロジーにさらされて、「わ、本当だ」と思うわけです。結局、「それで済むのか」「そんなシンプルなことでよかったのか」と思うわけです。「だったら、あの人だって雇えるぞ」と思うわけです。

 一人、大変光栄だったのが、ブッシュ大統領が来てくださったことです。実はブッシュ大統領が初めて国防総省にいらしたときというのは、CAPの施設を見るためだったのです。われわれのプログラムを見学に来たのです。ラムズフェルド長官や私に会いにきたわけではなくて、とにかくプログラムを見たいということで、ブッシュ大統領がいらっしゃいました。というのも、ブッシュ大統領のお父さまがこのADA法に署名をした本人だったからです。ですから、ブッシュ大統領としても、障害者のために自分が何ができるかということで、かかわりを持ちたかったわけです。そうすることで、国防総省の中で行うスピーチの中でもきちんと話すことができるように、自分の目で見ておきたかったわけです。

 そして、2001年の9月12日に、2回目に彼がいらっしゃいました。1回目とは大変様相が違っていました。理由も随分変わっていました。彼も私も、大統領がCAPTECで見た技術が、解決策としてたくさんの傷痍軍人の役に立つとは、当時は思っていなかったと思います。9・11の同時多発テロの結果、そういった事態になってしまったわけです。

 私たちが提供するのはAccommodationサービスということで、雇用のライフサイクルを通じて役立ててもらいます。そうすることによって、皆さんが社会に就労という形でかかわって、雇う側もきちんと雇うことができて、昇進もさせ、そして、その職にずっと就いていただくという、そのサイクル全体を通してAccommodationは役立つわけです。

 では、国防総省でどういうことをこれまで達成したかといいますと、障害を持つ大学生のための新人募集プログラムがあります。このプログラムはもともと海軍省と一緒にやったわけですが、今は労働省と一緒にやっています。というのも、世の中を変えたいと、皆さんまさにそう思っていらっしゃると思うのですが、そのためには、やはり若い人たちから始めなければいけない。子供だったり、あるいは新しい世代と呼ばれる若者から取り組まなければいけないということで、障害を持っている大学生たちを雇って、連邦政府で働いてもらおうということです。あるいは、夏場だけの職業という形で雇うこともあります。いろいろな形で貢献をしてもらいたいわけです。特に連邦政府の機関で貢献をしてもらいたいということで、毎年350人ぐらいの大学生の方を雇って、来てもらっております。これはみんな障害を持っている人たちです。

 そのメリットはというと、まず優秀な人なのです。彼らは本当に特に優秀です。必ずそういった優秀な学生を雇いに大学に赴きます。2番目に、マイナスの姿勢を持っているマネージャーがいたら、彼らの態度を変えるためには、やはりそういう優れた障害者を見てもらうことが一番です。三つ目に、われわれは本当に問題解決にたけているということです。やはりそうでなければいけない。というのも、この世の中は障害者のことを前提として考えられていません。ですから、いろいろな代替策を考えなければならないわけです。つまり、自分たちに障害があれば、AうまくいかなければB、Bも駄目ならCというように、どんどん代替策を考えることが障害者は本当に得意なのです。ですから、物の見方が違う。ですから、こういう若くて元気いっぱいの若者を招き入れることによって、われわれも世の中変えることができたと思っております。

 これは毎年やっています。350人の大学生を雇って、そのうち大体250人が国防総省です。ですから、われわれはそういう素晴らしい人材、賢い人たち、能力あふれる人たちを雇うことをよく分かっている、そういう組織だということが分かると思います。ですから、皆さんもぜひそうなさってください。若い人からまず取り組んでください。大学生も含めて、若い本当に有能な人がある。だけれども、障害がある。だからといって働けないのではいけないのだと。そのような人たちをとにかく雇って、そして世の中を変えていけるように、皆さんぜひ明日からでもやっていただければと思います。

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 では、ここから別のテーマに入っていきます。もう今日1回か2回出ている言葉ですが、われわれは新しい課題を今抱えているのだということです。つまり、労働人口が高齢化しているという問題です。これは世界どこでも問題になっています。私自身はこの就労人口の高齢化という言葉は嫌いですが、ただ、実は明日、私は誕生日なのです。いわゆる高齢者の仲間にだんだん入りつつあるわけです。数字は何歳かは言いませんが。

 アメリカの場合では、私はどこの舞台にでも立って、マネージャーの人たちに胸を張って言えるのです。「仮にあなたたちがチャレンジドの人を雇ったことが1回もなくても、私は書面で約束できます」と言います。つまり、同じ人がこれから10年後働いていたとしたら、そのうちの誰かは障害者になるのです。今、元気でも、この10年で障害者になる人がいます。例えば心臓発作、心臓麻痺を起こす人だっているでしょう。あるいは、交通事故に巻き込まれる人もいるでしょう。あるいは、がんの宣告を受ける人もいるかもしれない。そういった人たちがあなたのところに来て、「私が働けるような場を提供してください。環境を作ってください」と言うかもしれません。

 この国を本当にリーダーとして前に進めていきたいということであれば、特にいい国であり続け、成功する国であり続けるためには、われわれとしては、そのような能力のあふれる人たちが、障害を負ったからといって有効に生かされないような社会にしてはいけないということです。とにかくAccommodationのやり方さえ分かれば、その人たちは障害を持った後でも、仕事を続けることができるわけです。これは何も障害の問題ではないのです。マネジメント、会社や組織の管理の在り方の問題です。ですから、それがきちんとできれば、有能な人が今いたら、その人たちが長く勤めていただけるということにつながる話なのです。ですから、Accommodationを行っていくことが本当にいいビジネスにつながるわけです。

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 もう一つアメリカで多大な資金を投じている部分が労災プログラムです。日本でもあると思いますが、仕事の最中に怪我をしてしまって、働けなくなったら、もうお帰りくださいということが今までだったかもしれませんが、そうではないのです。この人たちにこれからも働いてもらおうではないか、少なくとも一部の労働を担ってもらおうという姿勢で臨んでいます。2〜3年前、私の技術センターにある女性がやってきました。大体2万9000ドルくらい補償に払わなければいけない。しかし、Accommodationに必要なのは500ドルぐらいで済むわけです。ですから、働けない人に補償で払うお金の方が数段高いということです。

ある女性が私のセンターにやってきました。その人は大変落ち込んでいて、どうしてかというと、「仕事で爆発に巻き込まれた」と。目を合わせなくて、下をうつむいてこう言いました。「私のことは多分どうしようもないと思います。私のことを助けるすべは何もないと思います。でも、プログラムのことを聞いて、取りあえず来てみました」。私は「どうぞ中に入ってください」と言いました。彼女はその爆発のせいで、手がなくなってしまいました。本当にひどい火傷を負ってしまって、手が焼けてなくなってしまったような状況だったのです。

 そこで私が見せたのが、先ほど説明したようなコンピューターを音声で動かすような技術だったのです。ちょっと彼女は元気になって、「E-mailも送れるのですか」と言いました。私は「当たり前でしょう」と。そうしたら、彼女はさらに元気になって、「声を使ってワープロも動かせるの?」と言いました。私は「当たり前でしょう。できますよ」と言いました。そうしたら、彼女はもっと元気になって、エキサイトして、「では、音声でウェブも大丈夫なの?」と聞きました。私はまた「ええ、そうですよ。仕事はどこ?」と言うと、「陸軍です」と言って、「www.army」と入れたら、そのサイトが出てきたわけです。彼女はすごく喜んで、でも、その後ちょっと悲しい顔をして、「私は会計士なのです」と言うのです。「表計算ソフトが必要なのです。それでもまだ働けますか」と彼女が言うので、私は「大丈夫です。Excel、起動」とやったら、本当に画面が出て、すごく喜びました。だんなさんが一緒にいたのですが、彼に対して「マイク、私また働ける。またお金がもうけられる。働けるのよ」と、喜んで叫びました。

 これは労災申請をした人ではなく、「ペンタゴンで生き残って頑張っている人」と呼びます。つまり、彼女はペンタゴンで仕事をして、2日目にこのような事件に巻き込まれたわけです。そして、彼らは、火傷をした人たちがたくさんいたわけですが、70%の人たちの雇用を続けることができました。つまり、そういった人たちに対して、さまざまなAccommodationを提供することによって、重篤な火傷を負った人でも、仕事を続けることができたというわけです。

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 このような政府としての、あるいは社会としてのインフラを作っていくということ、そして、その中で障害を持つ人たちを参画させていくことがなぜ必要なのか。なぜなら、私たちにはCAPがあるからです。なぜなら、私たちにはADAがあるからです。そしてまた、それができるからだということです。ですから、それがあるがゆえに、われわれはさまざまな退役軍人ですとか、こういった人たちを呼び戻すことができたわけです。つまり、このような傷痍軍人たちを使っていくことができるようになったわけです。そこで、これはデプロイメントからエンプロイメントへ、つまり、退役軍人が実際に就労することができるようになっていくということで、考えていただきたいと思います。

 単に退役しただけではありません。最も厳しい怪我をした人たちと考えていただきたいと思います。以前だったら、ただの反対運動になってしまっただけかもしれませんが、私たちは今、彼らに対して変化をもたらそうとします。つまり、それぞれが現役から退いていくわけなのですが、こちらの若い男性を見てください。この人に初めて会ったときに、彼は本当にひどいやけどを負って、歩くことすらできませんでした。そして、テキサス・レンジャーズの野球を見にいくこともできないと考えていました。彼は腕がありません。そしてまた、歩くのも困難だということです。しかしながら、どうしても野球の試合には行きたかったわけです。

 そして、その際にAccommodationということを考えるわけなのですが、こちらの上の方の絵をご覧いただきたいと思います。彼はABCニュースと入れているところです。彼は戦争に行って、そしてIEDから襲われたという事件がありました。彼はもう話すこともできなければ、歩くこともできない、手を使うこともできません。しかしながら、テクノロジーを用いることによって、音声を取り戻しました。軍の外科部長がこのような形で手術を行って、音声を取り戻したわけです。そして、その中でAccommodationを提供することができました。これが私たちが行おうとしていることです。

 また別の人を出してみましょう。制服を着ているこの人ですが、キャプテン・スマイリーと呼ばれています。彼は昇進しました。ご覧のように、彼は本当にユニフォームを着て嬉しく思っているということが分かると思います。彼はMBAを取得しているところです。デューク大学で修士号を取得しようとしているところです。そして、この修士課程を終えたら、ウエストポイントで教鞭を執ることが決まっているのです。これは素晴らしいことだと思います。そしてまた、非常に感動的なストーリーでもあります。キャプテン・スマイリーは目がないのです。彼の場合で言いますと、戦争で両目を失いました。しかしながら、テクノロジーを用いて、生活を変えていくことができるようになりました。そして、Accommodationを自らにもたらすことができたわけです。その結果、彼はさらに仕事をすることができるようになったということです。

 すなわち、このようなキャプテン・スマイリーのような人たちを手放してしまっては駄目だということです。最も優れた人材です。この人を障害ゆえに手放してはならないのだということです。そしてまた、いろいろなトランジションというプログラムがあるのですが、それプラス、さまざまなプログラムをもって再雇用に努めています。

 というのは、皆さんと同じように、私たちは、例えば新しい人と会った時にどういうことをするでしょうか。まず「こんにちは」と言いますよね。名前を紹介しあって、名刺を交換したりします。その時に、「あなたはどんな仕事をしているのですか」と聞く。私たちの社会においては、仕事というのは自らの何たるかを示すものになります。ですから、そのために「私はこういうことをしています」ということを示したいと思うわけです。兵士についても、あるいは海軍の退役軍人であっても、海兵隊であろうと、陸軍であろうと、みんな同じことです。退役したら、また社会に戻って仕事をしたいのです。何を失ったとしても、つまり傷痍軍人となってしまった今であっても、やはり仕事をしたいという気持ちは変わりません。

 こちらが私たちのインターネットサイトです。こちらのウェブサイトをご覧いただいて、私が今日お話ししたよりもはるかに多くのことを学んでいただきたいと思います。どうやって世の中を変えていくのか、どうやって変化をもたらしていくのかということです。

 それから、リソースがこちらにあります。これは素晴らしいのですが、いろいろなお話を聞いたけれども、全部覚えていられないとおっしゃる方は、こちらをご覧いただきたいと思います。どうやって変化をもたらすことができるのかということを考えてください。そして、例えば法律を作ろうとしていらっしゃるのであるならば、どうやってスタートを切るのか、あらゆる人を参画させていこうと思ったならば、どうやってそれを実現するのか。そして、どのようにして、もう既に病気やけがをして離れてしまっている人たちを、また社会の実際の仕事場に呼び戻すことができるのかということを考えていただきたいと思います。これは皆さんにとって大きな課題であり、その一方で、皆さんが変化をもたらすための大きな機会でもあります。

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 最後になりますが、私たちには大きなチャンスがあります。皆さんがチャンスを持っているのです。そして、それを用いて社会を変えていかなくてはいけません。ツールもあり、テクノロジーもあります。ですから、皆さんはそれを使って、チャレンジドの人たち、若い人たちに対して就労の機会を与えなくてはいけません。皆さんがAccommodationを提供する、同僚に対して、中途で障害を持つに至った人たちに対して、Accommodationを提供するわけです。どんなやり方であったとしても、障害を負った人たちに対して、皆さんが変化をもたらすわけです。皆さんが世界を変えるのです。皆さんがユニバーサル社会をつくる原動力となるのです。ぜひやっていただきたい、できるはずだと申し上げたいと思います。ありがとうございました(拍手)。

ナミねぇ ダイナー・コーエンさん、ありがとうございました。Thank you very much.

[写真]握手をするコーエンさんとナミねぇ

コーエン すみません。あともう少しだけ時間をください。竹中ナミさん、いらしていただけますか。というのは、軍の伝統なのですが、コインをそれぞれ持っています。そのコインを素晴らしい、卓越を見せてくれた人に渡すのです。竹中ナミさんは本当に素晴らしい卓越、エクセレンスといえるようなものを示してくださったと思いますので、私のコインを渡したいと思います。受け取ってください(拍手)。

ナミねぇ ダイナー・コーエンさん、素晴らしいお話をありがとうございました。メダルもいただいてしまいまして、ありがとうございます。それでは、この後パネルディスカッションに移りますので、ちょっと会場の様子を変えます。しばらくそこでお待ちください。

 今、ダイナーさんのお話の間に石破防衛大臣が到着されました。多分ご存じない方が多いと思いますが、実は石破防衛大臣は自民党のユニバーサル社会議連の会長をやっていらっしゃいます。私はそのユニバーサル議連に何度かお招きいただいて、ペンタゴンのCAPの活動について石破さんにお話ししましたところ、「私はペンタゴンに何度も行っていたが知らなかった。素晴らしいお話だ」ということで、「万難を排すというのはこの時のためにある言葉だ」とおっしゃっていただいて、今日はパネルにご出演ということです。それでは準備をいたします。

 

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ダイナー・コーエン米国防総省CAP理事長 基調講演 (34:54)

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