製菓製パン 2010年4月号より転載
「神戸スウィーツ・コンソーシアム(KSC)in 東京
〜チャレンジド・プログラム Vol.2〜」から
〜人と社会、地域との連携を考える〜
![]() ▲静岡県産苺「紅ほっぺスイーツ・フェスタ」 |
![]() ▲真心絶品 |
![]() ▲横浜発表会2010年 |
![]() ▲にいがたフード・ブランド レセプション2009 |
製法技術の伝承、若手技術者の育成を含め、これまでの経済至上主義から、品質至上主義、つまり、人と人、物から人への「損得より先に善悪を考える商売」への転換がまさに問われている。今回は、業界と地域社会の関わり、繋がりに目を向け、チャレンジド(障がいを持つ人)たちの本気を支える講習会とコンテスト、地方の行政が生産者団体と一体となって、地場産品のPRイベントを首都圏で開催した事例を紹介する。
![]() ▲八木淳司氏 (カフェコンディトライ・ランドルト) |
![]() ▲西川功晃氏 (ブランジェリー コム・シノワ) |
![]() ▲永井紀之氏 (パティスリー ノリエット) |
![]() ▲野澤孝彦氏 (コンディトライ ノイエス) |
〜チャレンジド・プログラム Vol.2〜」から
昨年、「スウィーツの世界で活躍するチャレンジド(障がいのある人)を生み出そう!」をスローガンに、「神戸スウィーツ・コンソーシアム(KSC)in 東京 〜チャレンジド・プログラム Vol.2〜」が、6回にわたり開催された。
これは、「年齢・性別・障がいの有無などにかかわりなく、全ての人が持てる力を発揮し支え合って構築する、共生・共助社会(ユニバーサル社会)の実現」を目指す、社会福祉法人プロップステーション(竹中ナミ理事長/神戸市東灘区)が中心になり、日清製粉など多数の企業の協賛、協力を得て開催されたもので、業界からも4人の菓子職人・パン職人が本気で講習料なしの全くのボランティアで講師を務めた。
この講習会は、「障がいがあるから、福祉だから買ってあげよう」という発想ではなく、「本当に美味しいから売れる一級品として提供したい」という思いを関係者が共有した質の高いプロジェクトとなった。全国でも、地域との繋がり、社会貢献に繋がる講習会、お菓子教室などを開催している事例はあるが、4氏のプロジェクトに対する思いと、実際に講習したレシピの内容をそのまま紹介し、職人として、社会を形成する人としての姿を学ぶ。
![]() ▲"本気の気持ちに本気の心で向き合った"講師陣。右から八木淳司氏、西川功晃氏、永井紀之氏、野澤孝彦氏、プロップステーションの竹中ナミ理事長 |
![]() ▲昨年11月30日には修了式が行われ、修了生に証書が贈られた |
▲神戸本部と東京オフィスはネット動画回線で繋がっていると語るプロップステーション・竹中ナミ理事長
社会福祉法人プロップステーション(竹中ナミ理事長・以下ナミねぇ)は、神戸市東灘区の神戸本部、東京都千代田区の東京オフィスを拠点に、コンピューター技術を身に付ける講座を中心に、コンピューターネットワークを活用して、在宅就労などの道を切り開き、チャレンジド(障がいを持つ人)の自立と社会参画、特に就労の促進を目標に活動を続けている。
「プロップ」の意味は「支えあい」。プロップステーションの原点をナミねぇは、「人間は誰でもあんたに期待していると言われたいし、本質以外の原因で誇りを失い堂々と生きていけない事はとても不幸な事、誇りを持って生きる自由というものを一緒に考えたいということから始まった」と語る。
これまで日本では、障がいを持つ人は、チャンスよりも保護の必要な人達という位置付けで見られ続けてきた。これまでに類を見ない高齢化社会を迎え、高度なケアを必要とされる人達の比率が高まっている。こうした中で、働く意欲を持つ人が、どんな立場であれ就労のチャンスを得て、社会参画や納税という形で「支える側」に回る事のできる社会システムの構築を目指してきた。そのことが、チャレンジドのみならず、多くの人にとっての「自己実現可能な未来」への道を切り拓くと強い信念を持ち全国を駆け回っているのがナミねぇである。
神戸スウィーツ・コンソーシアム(KSC)は、一昨年6月から日本の洋菓子の発祥の地といえる神戸で、本気のパティシエを育てる事を目的にスタートした。3回目となる今年は新しい講師も加わり、得意分野のコンピューターネットワークを駆使し、東京と神戸を結ぶ同時進行の講習会も計画されている。
ナミねぇは、「この講習会がひとつのモデルケースとなり、本当の意味でのユニバーサル社会の実現(チャレンジドであれ、女性であれ、高齢者であれその人の力が発揮でき、支え合える社会の実現)を目標に、"エリート級の努力をする集団"を目指したい」と笑顔で語ってくれた。