地域ニュース兵庫

障害者がいきいき働ける社会を

ひょうごの宝

2018年9月6日 産経新聞より転載


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産経新聞 平成30年(2018年)9月6日 木曜日

地域ニュース兵庫

障害者がいきいき働ける社会を

ひょうごの宝

 障害者の自立支援を行う社会福祉法人「プロップ・ステーション」(神戸市東灘区)。平成3年に設立され、進路や就職に悩む障害者や保護者からの相談を5万件以上受けてきた。

 理事長の竹中ナミさんも、重度の障害のある娘を持つ母親。「みんなが多様な働き方でいきいきとできる社会になってほしい」と、個別相談やパソコンセミナーなどを通して障害者の就労支援に取り組んでいる。

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 「自分がいなくなったときに、果たして社会は娘を守ってくれるのか」

 昭和48年に障害のある長女を出産した竹中さんは、娘の世話をする中で将来への不安を抱いた。そして平成3年、障害の有無にかかわらず誰もが持てる力を発揮できる「ユニバーサル社会」の実現を目指してプロップ・ステーションを設立した。プロップとはラグビーの最前列のポジションで縁の下の力持ちの役割を担う。「人をつなぎ、支え合う」との意味を込めた。

 同法人では障害考を「チャレンジド」と呼ぶ。「挑戦する機会を与えられた人」を意味し、障害者という言葉が持つ否定的なイメージを払拭しようと設立当初から使っている。「呼び方から変えることで、人々の中で意識が変わっていく」と語る。

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 相談を受けるだけでなく、技術者を講師に招きパソコン教室による技術支援も行う。会話が困難で理解に時間がかかる生徒も多く、頭を悩ますこともあるが、竹中さんは「苦労という感覚はない。彼らの可能性を引き出すことに生きがいを感じる」と持ち前の明るさを発揮。幅広い人脈を生かして障害者に学びの場を提供している。

 7年の阪神淡路大震災以降は、民間のNPO法人から初めて中央官庁の審議会メンバーに選出され、ユニバーサル社会の実現に向けた制度作りに取り組んでいる。21年3月には差別撤廃などに貢献した女性指導者に贈られる「勇気ある日本女性賞」を米大使館から授与されるなど、取り組みが世界的に評価されている。

 また、昨年10月には神戸市からの委託で全国初のICT(情報通信技術)に特化した障害考への総合相談支援機関「しごとサボートICT」を開設。就労に関する相談のほか、在宅就労の場を提供するための支援にも尽力する。

 共に働くスタッフにはかつて相談に来ていた障害者も多い。「世間には『障害があるから働くことができない』との考え方がまだまだ残っている。それを変えていきたい」と意気込む。

(林信登)

「プロップ・ステーション」理事長 竹中ナミさん(69)

「障害者がいきいきと働ける社会に」と話す竹中ナミさん

 たけなか・なみ 昭和23年、神戸市生まれ。48年に重度の障害を持つ娘を出産し、平成3年にプロップ・ステーションを設立。現在は県のユニバーサル社会づくり推進委員会の委員なども務める。相談受付は午前9時〜午後5時。電話078・845・2263。

障害者の就労支援のため菓子作り教室も開催する

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