10月4日月曜日、毎日新聞「心の扉を開いて」に、プロップ・ステーション神戸本部で活躍する、真野剛くんの記事が掲載されました。

2021年10月6日

10月4日月曜日、毎日新聞「心の扉を開いて」に、プロップ・ステーション神戸本部で活躍する、真野剛くんの記事が掲載されました。

剛くんは、全盲で脳性マヒ、車いすユーザーなんやけど、得意な英語力と誠実で明るいキャラクターを生かして、在宅ワークや講演活動に励んでいます。

一人暮らしを目指して前進する真野剛くんに、エールをお願いいたします!!

<by ナミねぇ>

 

10月4日月曜日発行 毎日新聞「心の扉を開いて」より

心の扉を開いて
共に生きる兵庫

障害と夢を語る28歳
人権講座で全盲、車椅子男性

第2部「学ぶ・働く」(51)

毎日新聞 2021年10月4日より転載


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<本文>

心の扉を開いて
共に生きる兵庫

障害と夢を語る28歳
人権講座で全盲、車椅子男性

第2部「学ぶ・働く」(51)

 真野剛さん(28)=高砂市=は、生まれつき全盲だ。脳性まひの重複障害もあり、車椅子を利用する。彼は今、講演会で自らの障害と夢について語っている。「今までの経験を語るのは自分の自信につながるし、いろんな人に生きる勇気も与えられる」という彼が語る夢とは―。

 9月28日、高砂市の曽根公民館で開かれた人権講座。地域住民ら約20人が集まった。剛さんはこの講座で、2020年度から市内の公民館を巡回、「Dreams」と題する講演をして、この日で8回目になる。

 早産で、体重772グラムで生まれた剛さんは未熟児網膜症と診断され、手術を受けるが、両目は見えなかった。成長しても歩かず、運動機能にも障害があることが分かった。

 剛さんは幼稚部から高等部まで盲学校に通った。幼い頃は未知の世界に踏み込んでいくのが怖く、家から出るのも苦手だった。

 転機となったのは、高2の時に校内であった人権講演会だ。全盲の高校英語教師の男性が講師だった。剛さんは、全盲でも教師になれるんだと驚いた。男性は生徒たちに訴えた。「やってもいないうちから、あきらめたら駄目だ」。この言葉に、剛さんは鳥肌が立つほど感動した。

 剛さんはその頃、ある夢を抱いていた。小2の時、偶然ラジオから流れる「基礎英語」に、興味を持つ。毎日聴くうちに意味が分かってきた。中学部に派遣されたALT(外国語指導助手)に英語で話しかけてみると、通じた。以来、英会話が好きになった。

 高等部時代、神戸市の高校生英語スピーチコンテストに3年連続で参加。一般高校の生徒と同じ舞台に立てたこと、3年時には5位入賞も果たしたことが大きな自信になった。大学で英語を専門に学び、仕事に生かしたいという夢を抱いた。だが、周囲は「大学の授業についていけるわけがない」と反対した。

 剛さんは読み書きができないうえ、脳性まひの影響で指を十分動かせず点字も読めない。もう学校で習熟したパソコンだけが頼りだ。


講演で、一人暮らしの夢について語る真野剛さん=高砂市曽根町で

 夢がしぼみかけていた頃に、出会った講師の言葉。剛さんは自らを奮い立たせて、夢への挑戦が始まった。

 オープンキャンパスで大学関係者に学びたい熱意を訴え、両親も説得して大学を受験。2011年、AO入試で関西国際大教育学部に合格を果たした。

 大学側から示された入学の条件は、全ての授業に家族が付き添うこと。毋・容子さん(61)は毎日、同大学尼崎キャンパスの教室に息子と並んだ。授業は英語で行われ、容子さんは板書された英文を懸命に代筆した。1カ月のハワイ大短期留学にも付き添う。ゼミ合宿では、息子の同級生らとふれ合った。息子は、生き生きとした表情で学ぶ。「大学に進学させてよかった」。母は心から思った。

 剛さんは現在、障害者の就労を支援する社会福祉法人「プロップ・ステーション」(神戸市東灘区)で、翻訳作業などをしている。

 講演の席上、剛さんが「母には本当に感謝しています」と語ると、見守っていた容子さんは、はにかんだ。

 そんな剛さんの新たな夢は、一人暮らしだ。「今までずっと両親の介護に頼ってきたが、自立したい」という。昨春にも始める計画だったが、新型コロナウイルス禍でヘルパーが確保できず、延期した。今も先を見通せない状況だが、あきらめない。「一人でゆったり、好きなジャズ音楽を聴きたい」と新たな生活の夢を語る。

 剛さんの相談支援をする「地域支援センターあいあむ」(高砂市北浜町)主任相談支援専門員、西野浩美さん(56)は「28歳の普通の青年らしい夢」とほほ笑みながら、「くじけず挑戦する剛さんに、私も置いてきぼりにされないよう伴走していきたい」と話す。

 剛さんは「自分ができないことは皆さんに支えてもらいたい。道端で会ったら、声をかけてほしい」と、参加者に呼びかけた。彼は地域の人々とのふれあいを求めているのだ。彼の心の中では、既に自立生活が始まっている。
【桜井由紀治】

=つづく
※次回は18日掲載予定です。

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