聴覚障害の友人たちからの、コロナウイルス対策についての切実な声を、ご紹介します。

2020年4月2日

安藤美紀さん、松森果林さんのFacebookから転載させていただきました。

<by ナミねぇ>

安藤美紀さん

いつも速報を見る度、なぜ、日本はどうもこうも手話通訳に対して重要視にしないんだろう?と痛感しました。今の聴覚障害者にとっては孤立状態です。マスクだらけの様子に慣れてしまってはいけない。私も聴覚障害者で全く聞こえないため、口の形を見て何を言ってるか読話法を使いますが、今はみんなマスクを着用して喋るため、心が折れてしまいます。「耳が聞こえないから情報保障をお願いします」と言うべきです。これまで私は聴覚障害のことを知ってもらえるようにいろんな冊子を作って参りました。学校版もあと少しで印刷が完了します。「終わり」「諦める」「自分が言わなくても誰かが言ってくれる」と思っててもこの日本の古い体質は変わらないままです。「情報保障は当たり前」と思わないといけません。命に関わる情報をなぜ「手話通訳をつけないのか?」と国民一人一人が声を上げなければなりません。字幕だけでは限度がある場合があります。それは環境によって、言語取得ができなかった聴覚障害者がおられるからです。言葉だけでは状況が把握できない聴覚障害者がいることを忘れないでください。字幕だけでなく、手話も必要です。
時間と手間はかかりますが、新型コロナウイルスは長く続きますので、皆さんこのままにせず、何かできることはないか考える必要があります。
松森 果林さんの仰る通り、国民の声として、メッセージを送ってください。(これは重要視されます。この声が多いと動いてくれます)
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 https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=3026222434067912&id=100000405559189

◇          ◇          ◇

松森果林さん

3月25日夜8時13分から新型コロナウイルスに関して東京都知事の緊急記者会見が開かれ、
その様子をテレビでリアルタイムで見ていました。
当然のことながら、生字幕が付与され、
聴覚障害のある私としては助かりました。
一方で、ろう者の言語である手話はどうかというと、
引いた画面で見ても手話通訳者の存在は見当たりません。
手話通訳がないと手話を第一言語としている人には伝わりにくいものとなります。
聴覚障害者に対しては、日本語の字幕があればよいと考えがちですが、字幕も手話も必要です。
手話は日本語とはちがった文法体系を持つ言語であり、その手話を第一言語としている人も多くいるからです。
他国の新型コロナウィルスに関する報道を見ると、話者の隣に手話通訳者が立ち、
一つの画面におさまって放送されているシーンを多く見かけます。
一方で日本は、今回の東京都知事の会見で手話通訳はなかったものの、
総理大臣や、官房長官の会見などには手話通訳があります。しかし立ち位置が離れていることと、
常に顔のアップを映すため、手話通訳者は映りません。(日本はなぜあんなにどアップにするのでしょうね?!)
NHKは手話通訳者を別に撮影し、
ワイプを使って画面に埋め込んで放送をしますが、民放では東日本大震災以降、見かけることが少なくなりました。
もう一つ言うならば、今回の東京都知事の会見の中で知事がフリップで示した
「コロナウィルスに関する相談窓口」の案内は、電話番号のみの表示でした。
電話ができない聴覚障害者や発話が困難な人の存在も考慮すると、電話以外(例えばFAXやメールなど)のアクセス方法も一緒に提示する必要があるでしょう。
東京オリンピック・パラリンピック開催国として、このような現状で良いのでしょうか?
国民に伝えるための場なのですから、手話を言語とする人や外国人など、
あらゆる人に伝わる仕組みを整備する必要があります。
今回のような場合は、手話通訳者の健康を守るために、遠隔手話通訳という手段もあるはずです。まさにこんなときこそ。
非常事態であるにもかかわらず、手話通訳すら整備できない脆弱な情報伝達体制が心配です。
幸いなことに、準備期間があと一年あります。
そのことを伝えたくて私は、東京都の公式HPの問い合わせフォーム
「あなたの声をお寄せください」で知事への提言(意見)として送りました。仲間にも呼び掛けて。
二日後の27日夕方、再び東京都知事の会見が開かれました。
ここでも手話通訳はありませんでしたが、
相談窓口の案内に、聴覚障害者や外国人で
も対応できるようにとFAX番号や多言語対応、LINEでの対応も紹介されていました。
きっと障害者団体をはじめ多くの人が同じように声を上げた結果なのでしょう。
一人の声は小さくとも、いくつか集まればそれは社会を動かします。
障害者差別解消法は「こうしてほしい」という思いへの根拠ともなります。
一方でSNSでは「手話通訳がなかった」と残念がったり、批判するケースも見られます。
私も若いころは、社会に対しての不満と怒りでいっぱいの人間でした。そんな気持ちを誰かと共有したり、共感してくれる人の存在を感じるだけで救われることもありました。
でもそれは一時的な気休めであり、根本的な解決にはつながらないのですね。
しかも社会に伝わらなかったことは
「なかったこと」にされてしまいます。
だから、批判や不満ではなく、現状と提案を言葉で伝えたい。とても地味なことで、時間も手間もかかりますが。
私がここまで「直接声を伝えたい」と思うのは、純粋に「知りたい」「共有したい」
という理由のほか、突き詰めて考えると、
私はやっぱり「つながりたいから」なのだと思います。
聴力を失い、それまで見ていたテレビのドラマやニュースが分からなくなり、
社会とのつながりさえ絶たれた気がしました。周囲の聴者が受け取っている情報を、自分だけが分からない疎外感が日常的に続くと社会に無関心になります。
それは「聞こえないから仕方ない」というあきらめや、「聞こえない自分が悪い」という自分自身の存在の否定、そしてそんな自分は社会から必要とされていないという思いこみにもつな
がります。
また、聴力を失ったことによって、周囲が私のことを話題にしていても直接耳から入ってこない、ということも増えていきました。
例えば、病院へ行くと、医師は患者である私ではなく、
付き添いの親に向かって話します。通訳者がいると本人ではなくて通訳者を見て話す人がいるように。
それは本人である「私」を通り越していくようで、とても寂しく、自分の存在が感じられなくなるほどです。
そんな体験を重ねているからこそ、
「私はこのようにしてつながりたい」と、できるかぎり「直接本人に伝えよう」と強く思うのです。
あらゆる人が、同じ情報を享受できる社会であってほしいから。
非常事態の時こそ、様々な手段でつながりが保障される社会であってほしいから。
誰一人取り残さない社会であってほしいから。
以下参考HP

■東京都公式HP 問い合わせ「あなたの声をお寄せください」
 https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/iken-sodan/otoiawase/otoiawase/goiken/index.html?fbclid=IwAR1ssT9ocZoO6QER2tf35mbbIrw6cujeBvspMBVBA3iwEef2OPSyHNY2k3I

■新型コロナウイルス感染症にかかる相談窓口について(聴覚に障害の
ある方等、電話での相談が難しい方向け)
 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/coronasodanfax.html?fbclid=IwAR35xdpwOQNEg74bnu_OFmtwNLfx01gA6AwbPq_L1d1TRViUQgINfeUI6BU

■全日本ろうあ連盟では、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症に係
る相談窓口についてFAXとメールがあることをお知らせしています。
新型コロナウイルスの相談窓口について(FAX・メールアドレス)」
 https://www.jfd.or.jp/2020/02/19/pid20272

【写真】
2回目の会見では聴覚障害者や外国人への相談対応も紹介されました

【写真】
首相の会見、NHKではワイプに手話通訳。
他国のようにひいた画で通訳者と並んで放送してほしいな

 https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=2581104945465764&id=100006988504123

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