手指を使わず文字入力できるレーザーキーボード

〜 The Lomak Laser Keyboard (LOMAK) 〜

2012年3月8日

CAPからassistive technology(支援技術)に関する情報が届きました。重度の身体障害のある人が手指を使うことなくパソコンを操作できる、LOMAKという assistive technology が映像つきで紹介されています。

また、LOMAKを学校生活に生かしたことで大学進学を果たした高校生の話や、ペンが持てず授業についていけなかった小学生の女の子がLOMAKを使って明るい学校生活を取り戻し、教師になりたいという夢を持った話など、いずれもアメリカの重度障害の子どもたちの記事も併せてご紹介します。

<by ナミねぇ>

手指を使わず文字入力できるレーザーキーボード
〜 The Lomak Laser Keyboard (LOMAK) 〜

訳文:池田尚子(プロップ神戸)

CAPの支援サービス利用者に最高の支援技術提供するために、我々はまず利用者が何を必要としているのかを見極める。このアセスメントは彼らが行う職務、身体の運動機能制限、業務上の目標達成など、様々な範囲に及んでいる。

この支援技術はLOMAK(Light Operated Mouse And Keyboard)と呼ばれ、従来のパソコンのキーボードやマウスが使えない、重度の身体障害のある人のために作られたものだ。一般的には、四肢麻痺、多発性硬化症、脳性麻痺、ALSとしても知られるルー・ゲーリッグ病の患者など、自分の意思で首から上のみ動かせることのできる人がこの装置を使用する場合もある。

LOMAKのキーボードはデスクトップ、またはノートパソコンのUSBポートに差し込むだけで使用でき、他のソフトの追加は必要ない。ヘッドバンドに取り付けられた小さなレーザーポインターで操作する。ユーザーは入力したい文字をレーザーで選択し、緑色の確認キーにレーザーをあてるというものである。

LOMAKのレーザーキーボードは、文字入力の最中によく使われる文字を予測し、ユーザーの文字選択の手がかりとなる文字入力予測ソフトと併用されることもある。予測ソフトは文字入力の速度を速める。手や腕を使わないでパソコンが操作できる強力な支援技術であり、ユーザーは自力でパソコン業務をこなし、計算するという自由を手にすることができる。この支援技術は非常に革新的なものであると認められ、ニューヨーク近代美術館に展示されている。

The Lomak Laser Keyboard を紹介するCAP配信ビデオ

LOMAKは就労において合理的調整として使用されるだけでなく、成長期の子どもたちに大切な自立、自己表現の手段としても用いられている。次にLOMAKを使うことで大きく成長した子どもたちのサクセス・ストーリを紹介する。

ブレイクとライアン

ブレイク(15才)とライアン(17才)は重度の障害を持つ兄弟だ。どちらも脊髄性筋萎縮症という障害を持って生まれ、ユーモア、尊厳、自己決定もない日々を送っていた。LOMAKのおかげで兄弟はクラスに溶け込んだ。自主的に学習するようになり、トップの成績を収めた。今やLOMAKはブレイクとライアン兄弟が社会の中の有意義な一員になるための力である。2006年、2007年と、ライアンは地理学の分野において、アドバンスドプレースメント(優秀{ゆうしゅう}な高校生{こうこうせい}が履修可能{りしゅう かのう}な大学{だいがく}レベルの科目)で史上最高点を取り、現在一流大学で地理学を専攻している。兄弟ともに科学の分野に進むことを望んでいる。
「知力以外では、LOMAKは自分が使う最高のツールです。」とブレイクは語っている。

エイミー

エイミー(9才)はシャルコー・マリー・トゥース病という難病を持って生まれ、手で鉛筆を持つことができない。LOMAKを使い始めたころ、エイミーは学業がうまくいかず悩んでいた。書き言葉の語彙が非常に乏しく、学校生活が楽しくない落ちこぼれの女の子だった。LOMAKを使いはじめて数ヶ月、語彙が飛躍的に増えた。2年後、楽しくクラスに溶け込む明るく生き生きした子に成長し、他のクラスメートと同じように物事を成し遂げていた。 

エイミーの父親は「本人は、自分が落ちこぼれていないという安心感を持ち、誰かに代わりに書いてもらう必要もなく、クラスメートと以前よりも肩を並べることができるのだと実感しています。」と語る。

担任教師はエイミーの将来に大きな可能性を見いだしていた。「LOMAKはエイミーの教師になりたいという最終目標まで、彼女を適切に導いてくれることでしょう。LOMAKのおかげで、エイミーはクラスメートに遅れることなく、授業について行けています。高校へ上がるころには、他の生徒と同じように学業をこなしていけることと思います。とても素晴らしいことです。」

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