チャレンジド(障害のある人)の生活を変える、iPadの4つの使い方

2011年8月5日

ナミねぇです! プロップアメリカ・チーフをボランタリーに務めてくれているビリー市田が、米国のソーシャルメディア情報サイト、「Mashable(マッシャブル)」に掲載されたチャレンジド関連のニュースを知らせてくれたので、プロップのサイトでもチャレンジドニュースとしてご紹介しますね!

<by ナミねぇ>

 

4 Ways iPads Are Changing the Lives of People With Disabilities
チャレンジド(障害のある人)の生活を変える、iPadの4つの使い方

By Zoe Fox | Mashable   Mon, Jul 25, 2011

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ノア君は中度の脳性マヒのある男の子。 コミュニケーション、認知力、上下肢の運動機能に障害がある。 2歳になった時、言葉、認知能力、微細運動能力において、少なくとも1歳遅れていると診断された。 そのときノア君はiPadを手に入れた。

iPadを使い始めてから4ヶ月後、ノア君の言葉や認知力は年齢相応のレベルに達し、微細運動能力においては著しい発達が見られるようになった。

現在3歳になったノア君は、1日1〜2時間はiPadで遊んでいる。 アプリを読み書きに応じて、自分で英語、アラビア語、スペイン語に切り替えている。 この秋、ノア君はキンダーの5歳児クラスに入る。スナップス・フォー・キッズ(※)の共同創立者であるノア君の父親、ラマン氏はこう話す。 「iPadはこの子のやる気を高めてくれるんです。 なんていったってiPadに触るのは楽しいですからね。」

(※) スナップス・フォー・キッズ(SNApps4Kids)とは・・・保護者、セラピスト、教師らが、障害児に向けたiPad、iPod touch、やAndroidの使用方法や情報を共有する団体。

スナップス・フォー・キッズでは、障害者の急増するニーズの流れを取り入れている。 タッチパネル、その中でも注目すべきiPadは 障害者の生活を激変させている。 ラマン氏は障害者のために開発されているアプリは4万種にも及ぶと推定している。

「タッチパネルは非常にアクセシブルで、みんなiPadやiPodを持っています。」 発達障害に関する情報を発信する「ディスアビリティ・スクープ」の共同創立者、ダイアメント氏は言う。 「障害があると、人が使っているものを持つことは、みんなと同じ群れの中にいるような気持ちにさせてくれるんです。」

体の運動機能に障害のある人にとっては、画面上でのコミュニケーションの妨げとなるマウス、キーボード、タッチペンといったものが付いていないので、タッチパネルは直感で理解できるツールだ。 iOSAndroidなど小さめのものよりも、使いやすさ、そしてもちろんカッコよさという点で、iPadのような大きめのプラットフォームの方が選ばれている。

障害者の生活を変える、タッチパネルの4つの使い方はこれである。

 

1.As a Communicator
  コミュニケーション手段として

iPadや同様の装置が発売される以前は、トーキングエイド(会話補助装置)は、およそ8,000ドル(約80万円)と非常に高価なものであった。 今やiPadがわすか499ドル。 Proloquo2Coと呼ばれるトーキングエイドのアプリは189ドル99セント(約2万円)である。

声が出せない人たちに、このようなトーキングエイドが比較的手ごろな料金で購入可能になっている。 ただ単にiPadに触れるだけで、お腹がすけば食べたいものを正確に伝えることができる。 こういったアプリは、それぞれのライフスタイルやニーズに合わせ、写真や機能をカスタマイズすることが可能である。

会話文をあらかじめ予測する、チャットエイドと呼ばれるアプリもある。 重度障害者にとっては、イエス/ノーアプリは、「はい」「いいえ」のどちらかを答えられる簡単なアプリである。

「このアプリで、より重い障害を持つ人は人としての尊厳を取り戻すのです。」 年齢層を問わず、iPadを最大限に活用することを指導している特殊教育の教師であるウィンドマン氏は言う。 同氏は様々な障害を持つ人に、アプリの概要を自身が勤務する学区のホームページに掲載している。

聴力障害があるiPad のユーザ―は、soundAmp Rというアプリを使って、様々な状況下で音量を上げることができる。 講義やプレゼンを録音し、後で聞きなおすことも可能である。

 

2. As a Therapeutic Device
  リハビリの装置として

スナップス・フォー・キッズの共同創立者、リート氏には筋肉の緊張力の低下を伴うダウン症の息子がいる。 リート氏は息子のビンセント君のことを、歩行は可能だが、ほとんどの時間を仏様のように座っていたがると話す。 理学療法士と両親はこれまでずっと、ビンセント君がもっと活発になれるよう尽力してきた。 しかし、ビンセント君が歩こうとするようになったのは、理学療法士がトレッドミルの上にiPadを置きはじめてからだった。 今や、運動中はiPadで遊びながら9分半もレッドミルの上に乗っている。

また、iPadを使用することで、歩行に必要な粗大運動能力の発達に加え、微細運動能力も発達した。 パソコンやこれまでの装置では、マウスから画面、キーボードから画面と、ビンセント君はその都度目を動かさねばならなかったが、iPadでは、画面の上に直接置いた指1本を目で追うだけで選択できる。

同様に、ノア君にも微細運動能力の発達が見られた。 iPadにある「エルモはABCがすき」というアプリで遊ぶようになってから、アルファベット全てを書けるようなった。 これには指1本1本を同時に動かす複雑な動作が不可欠である。 3歳で年齢相応のレベルを超えた。 ノア君の父親はこう話す。 「最初のうちは、ノアは私にiPad をやって見せて欲しいとせがみ、そのうち一緒にiPadをやってと欲しいと言うようになり、今は自分ひとりでやっています。」

 

3. As an Educational Tool
  学習支援ツールとして

数年前、ブラウン氏が受け持っていた自閉症の高校生のひとりが机の上にあったiPhoneを手に取り、簡単にiOSをナビゲートし始めた。 自閉症の高校生を教えるブラウン氏が、タッチパネルのテクノロジーにめぐり合った当時の教え子のことをこう語った。 「まるで水を得た魚のようだった。」

同氏は、テクノロジーと特殊教育をテーマにしたオンラインのディベートにどっぷりと浸り、フェイスブックにあるグループ “iTeach Special Education”の司会を務め、 “EdCeptional”というポッドキャストの共同製作や、“Teaching All Students”といったブログの共同著作を行っている。 授業でのiPadの使用は、氏が勤務する学区ではまだ是認されていないが、彼は、iPadは非常に有効な教科指導の補足手段であり、iOSを使用すると、自分の受け持つ80%から90%の自閉症の学生に成績向上が見られると予測し、自分が勤務する学区、全米の学区において、授業でiPadの使用が是認されるよう願っている。

従来の指導方法を変えようと提唱する教師はいないが、多くのアプリが、数学、外国語、国語といった主要科目の指導に対応している。 2010年10月、アップル社はApp Storeに、「特殊教育対応アプリ」の部門を追加した。

ブラウン氏は、保護者に授業で使用する時、遊びで使う時と、子供たちにiPadを区別して使わせるよう勧めている。 スクールバスの中でユーチューブを見る生徒もいるだろう。 だが学校では、生徒たちはブラウン先生のiPadは、教育のためだけにあることを理解している。

 

4. As a Behavior Monitor
  行動観察ツールとして

Behavior Tracker Proは、保護者、セラピスト、教師が障害児の行動傾向評価を数値化するのに良く使用されているアプリである。 情報を書き留めるだけでなく、行為の良し悪しをビデオに録画し、見直しすることもできる。  このアプリは、入力したデータを自動的にグラフやチャートに変換する。

前出の特殊教育の教師のウィンドマン氏は、iPadはアルツハイマーの高齢者や記憶力が低下している高齢者の記憶力向上、強化にもうってつけのツールになる可能性があると言う。 しかし、タッチパネルの技術は「奇跡の薬」ではないと通告している。 「これはアルツハイマーの治療にはなっていないと言って、親はいつも私に食ってかかるんです。 親はアルツハイマーを完治させる薬が欲しいんですね。 iPad は改善薬でしかなく、完治薬ではないんです。」

だからといって、iPad が役立たないということではない。 Medication Reminderのようなアプリは、ユーザーに薬の時間を知らせてくれる。 Memory Practiceという、記憶力向上に使用されるアプリは、そのアプリの開発者の母親がアルツハイマーと診断されてすぐに作り出されたものである。 ウィンドマン氏の父親は Nudgeというアプリを使用している。 そのアプリは、 「やるべき事のリスト」の中にある、うっかり忘れてしまった事をやれるよう、15分ごとに知らせてくれるといったものである。

 

Long-Roads Ahead
前途は長い道のり

 スナップス・フォー・キッズの共同創立者のリート氏は、こういった成功例があるにもかかわらず、タッチパネルは慎重に利用するよう薦めている。 「タッチパネルを買ったからといって、全てが変わるわけではないんです。」

ラマン氏もまた、iPadを解決策として捉えるのは無理があると言う。 「我々は、テクノロジーを選ぶ前に、まずユーザーが使用目的を理解すことが必要だと強く提言しています。 息子の目の前に、ただ単にiPadを置きっぱなしにしているんじゃないんです。 本当のキーポイントはそこなんです。」

訳文:池田尚子(プロップ神戸)
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