「村木被告の関与」に注目

凛の会元会員11日判決

2010年5月8日

読売新聞5月8日付記事より

「認定せず」なら検察苦境に

大阪地検特捜部が厚生労働省元局長・村木厚子被告(54)ら4人を逮捕・起訴した虚偽有印公文書作成事件で、自称障害者団体「凛(りん)の会」の元会員・河野克史(ただし)被告(69)に対する判決が11日、大阪地裁で言い渡される。一連の公判では「壮大な虚構ではないか」との証言も飛び出している。今回の判決でも村木被告の関与が認定されなければ、検察側は苦境に立たされることになる。

虚偽有印公文書作成罪は、文書の作成権限を持つ公務員を処罰する「身分犯」。今回の事件で障害者団体証明書の作成権限を持っていたのは、企画課長だった村木被告だけ。河野被告を含め、権限のない残る3人は「村木被告の共犯」と認定されることが有罪の前提となる。つまり「村木被告の関与」が欠かせない。

ところが、村木被告の関与を認めていた厚労省の上司や部下らは、公判で次々と供述を覆した。先月27日には、村木被告に証明書発行を依頼したとされた凛の会元会長・倉沢邦夫被告(74)に対する判決があり、同地裁は倉沢被告と村木被告との共謀関係を否定し、虚偽有印公文書作成罪について無罪を言い渡した。河野被告の公判も、同じ裁判長が担当しており、村木被告の関与を認定しない可能性がある。

検察側には河野被告の判決後にも、まだヤマ場が待ち受けている。

捜査段階で村木被告の関与を認める供述をした元係長の上村勉被告(40)は、公判で「検事から『みんながこう言っている』『多数決で決めないと真実は見つからない』といわれた」と供述を押し付けられた状況を語った。

厚労省障害福祉部長だった塩田幸雄氏(58)(現・香川県小豆島町張)も「(当時部下だった村木被告に)証明書発行を指示した記憶はない」と証言。他の部下も「検事に机をたたかれた」「調書は検事の作文」といった証言を行った。

倉沢被告が議員会館で口利きを依頼したとされる日に、石井一・参院議員(75)が千葉県内でゴルフをしていたことも証人尋問で判明しており、弁護人は「十分な裏付けを取っておらず、冤罪は明らかだ」と批判している。

これに対し、検察側は、村木被告の関与を認めた上村被告らの捜査段階の供述調書は「具体的で迫真性がある」として証拠採用を求めている。却下されれば、村木被告の無罪はほぼ確定的だ。地裁が今月中に判断を下すとみられる証拠採用の採否も焦点のひとつとなりそうだ。

ページの先頭へ戻る