神戸スウィーツ・コンソーシアムの新しい講師、 “チョコレートの匠”白岩忠志シェフをお訪ねしました!

 

2010年4月9日

ナミねぇです! いよいよ4月、新年度に入りましたね。桜も満開となり、この素晴らしい季節に皆さんそれぞれが新しいスタートを迎えられたことと思います。プロップ・ステーションと日清製粉が主催する神戸スウィーツ・コンソーシアム(KSC)もいよいよそのプログラムの第3期開講を控え、受講生の募集が開始されました。関東圏の作業所や施設に所属する知的・精神障害を持つチャレンジドを対象とした「チャレンジド・プログラム Vol.3」へのたくさんのご応募をお待ちしています。募集に関する詳細はKSCのホームページをご参照くださいね。

「スウィーツの世界で活躍するチャレンジド(障害のある人)を生みだそう!」というミッションを掲げて、2008年6月に発足したKSCですが、3年目を迎えた今年、その講師陣に新たに素晴らしいメンバーが加わります。神戸そして日本を代表するショコラティエ、白岩忠志シェフです。白岩シェフは神戸で自身のお店「ラ・ピエール・ブランシュ」を主宰される傍ら、製菓講習会で後進を育てられるなどお忙しい日々を過ごされています。ナミねぇは元町にある白岩シェフのお店を訪ね、お話を伺ってきましたのでご紹介しましょう。

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宝石箱のようなショーケース!

JR元町駅北口からほんの少し東に歩き、山側に入ってすぐの場所に白岩シェフのお店「ラ・ピエール・ブランシュ」はあります。木のぬくもりを大切にした素敵なエントランスから一歩お店に足を踏み入れると、壁も床もチョコレート色の店内でまず目を引くのがショーケースに並べられた宝石のようなチョコレートの数々! おもわず「ぜんぶ頂戴っ!」て叫びたくなる個性豊かなボンボン・ショコラが揃っています。

でもそれだけではなく、その横にはパートドフリュイと呼ばれるフルーツのゼリー菓子が並び、アーモンドを砂糖がけしてキャラメルで固めたプラリーヌ、マカロンやマロングラッセ、変わったところではイタリアンで使うハーブオイルやペースト、そしてコンフィチュール(ジャム)まで並んでいます。

チョコレートには目の無いナミねぇが夢中になって商品を見ていると、にこやかな笑顔で白岩シェフがご挨拶くださりお店の奥のカフェコーナーでお話をお伺いすることが出来ました。

白岩シェフは18歳の時からパティシエの世界に飛び込み、神戸アランカスケビッチを始めとするスウィーツの名店で修行を積まれたのち独立、5年前に現在の地に店を構えられたそうです。ショコラティエを目指された動機をお尋ねすると、チョコレートを食べることももちろんお好きだそうですが、素材(カカオ)そのものに特別な魅力(歴史的、文化的、哲学的 etc)を感じられているとのことでした。

はじめはスウィーツ全般(生菓子なども)を扱われていたそうですが、今はショコラティエとしての仕事に集中されていて、お会いしたときにいただいた名刺にも「チョコレート職人」と書かれてありました。職人という言葉から白岩シェフの仕事への矜持を強く感じました。

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白岩シェフのお話を聞くナミねぇ

ただチョコレートのお仕事は季節の落差が激しくて(夏季にはオンシーズンの10分の1程度まで落ち込むとのこと)、神戸「アラン・シャペル」などで料理の世界にも関わった経験からチョコレート以外にもほんとうに良い材料を使ったシンプルな商品の品揃えには気を配っておられるとのことで、それが店頭の商品のバラエティーにつながっていたんですね。

それでも8月にはお店を休まれて、後進の指導や新しい企画を温める時間を持たれるとのこと。お店の2階がラボ(厨房)になっていてそこで講習も行っているそうですが、生徒さんたちには「技術とともに職人としての心構え、そして自分の意志を貫く心を伝えたい」と語られました。

「職人の技術の行く先には、スピードスケートの何十分の一秒の差が大切になる世界と同じ目標の厳しさがあり、経験をつめばつむほどそののびしろが少なくなって、モチベーションの持続が難しくなる。チョコレートの世界は特にその傾向が強い」そうで、ストイックな職人さんが多いんだそうです。自分の店の若いスタッフには、きっかけは与えるけれど技術は盗み自分で磨け、満足するなと常に言い聞かせているとのことでした。

KSCの講習への抱負をお聞きしましたら、「技術のハードル・難易度はもちろん高いので、出来なくて当然と思って『自分で作ったチョコレートを食べたい!』というモチベーションで良いからチャレンジしてもらいたい。そのかわり最高の材料を提供してみんなが美味しいと言える結果を出したい」とおっしゃってくださいました。「チョコレートというのは作業所や施設の商品構成としては、ロスがなく保存期限や取り扱いにおいて大変ふさわしい商品なので、ぜひ習った結果を役立ててもらいたい」との力強いメッセージもいただきました。

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ショーケースの前で

ところで、白岩シェフがKSCの講師を引き受けてくださる動機となったのが、チョコレート(カカオ)の社会的背景があったそうです。「良質なカカオが生産されるベネズエラやマダガスカルそして西アフリカ諸国は政情が不安定な国が多く、貧富の差が激しくてカカオ生産に関わる農民は貧困の中で奴隷のような労働を強いられている。その犠牲の上に自分のチョコレート職人としての生活は成り立っているので、ユニセフなどの活動には積極的に協力してきたが、どんな形にしろ自分が社会に直接還元できることをしたいとずっと願っていた」とのことでした。今回の講習では自分のプロとしての経験を役立てることができるのでとても嬉しく思うと話してくださいました。

また、「最近の子供たちの味覚の乏しさ、コンビニ弁当やファーストフードがあふれる生活は、そのまま人格の乏しさにつながっていく原因となるので、せめて自分の出来る範囲で子供たちにほんとうの美味しさを知ってもらいたい」との気持ちから、自宅のある須磨では子供が百円玉を握りしめて駆け込んでくることの出来る駄菓子屋さんのようなお店を開かれているそうです。「その子達がちゃんとしたチョコレートの味を知ることで、何十年か先にはチョコレートというものが日本に文化として根付いてもらいたい」と熱く語られました。

白岩シェフの言葉にはチョコレートへの哲学的とも言える思いが込められていて、お話を伺っていてナミねぇは、ほんとうに美味しいチョコレートを食べることの出来る幸せと、チョコレートが文化として日本に根付いてもらいたいという思いを強く持ちました。そしてその信念を語られる白岩シェフにKSCの講師をお引き受けいただいたことに、あらためて大きな喜びを感じるとともに、今年のKSC「チャレンジド・プログラム」の成功に向けできる限りの努力をしようと心に誓いました。

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お店の前で

お話の最後の白岩シェフの言葉「ありがとうの心を大切にしたい」、をかみしめながら、その古武士のような風格さえ感じさせるシェフの優しいまなざしに見送られて、ナミねぇはほんとうに幸せな気持ちでお店を後にしました。

両手には、お土産に買ったチョコレートがぎっしり詰まった袋を、握り
しめて・・・(^^)/~

by ナミねぇ

 

関連リンク

白岩忠志シェフのお店「ラ・ピエール・ブランシュ」ホームページ

神戸スウィーツ・コンソーシアムのホームページ

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