郵便不正 厚労省元局長公判 証人5人全員供述覆す きょうから元係長尋問

読売新聞大阪朝刊 2010年2月24日記事

 ◆検察側「想定内」

 郵便不正事件に絡み、偽の障害者団体証明書を発行したとして虚偽有印公文書作成などの罪に問われた厚生労働省元局長・村木厚子被告(54)の公判で、24日から部下の元係長・上村勉被告(40)の証人尋問が大阪地裁で始まる。これまでの公判で、厚労省職員ら証人5人がいずれも捜査段階の供述と食い違う内容を証言。上村被告も「村木被告に指示された」との供述を覆す見通しだ。事件の真相はどこにあるのか。公判の行方はどうなるのか。検察、弁護側双方の主な対立点をまとめた。

 ■口添えの有無

 検察側主張では、自称障害者団体「凛(りん)の会」元会長・倉沢邦夫被告(74)が2004年2月、元会員(67)と一緒に民主党の石井一参院議員の事務所を訪問。ここで石井議員は証明書発行の口添えを頼まれ、厚労省障害保健福祉部の塩田幸雄元部長(58)に電話をかけ、依頼内容を伝えた。塩田元部長はこれを受け、企画課長だった村木被告に発行を指示したとされる。

 倉沢被告は口添え依頼は認めたものの、元会員は「事務所に行った記憶はない」とし、「行った」という捜査段階の供述を「検事の作文」と述べた。塩田元部長も、石井議員の電話や村木被告への指示は「記憶にない」と証言した。

 ■発行の時期

 検察側は、塩田元部長からの要請を受け、村木被告は上村被告に証明書の発行を指示。できあがった証明書は村木被告が直接、倉沢被告に手渡したとする。

 ここで弁護側が問題視したのは、証明書の作成年月日だ。検察側は起訴状で、その日付を「04年6月上旬」とした。だが、発行された証明書を記録した上村被告のフロッピーディスクは、日付が「6月1日午前1時20分」となっていた。

 凛の会が証明書を日本橋郵便局に提出したのは6月10日。それまでの間に、証明書は村木被告から倉沢被告に渡ったことになる。

 ところが倉沢被告は「村木被告から証明書を受け取った」との供述は崩さなかったものの、その時期については、手帳を確認しても「(6月1〜10日までの間に)厚労省には行っていない。5月末だったかもしれない」とあいまいな証言を繰り返した。

 ■供述の信用性

 なぜいずれの証人も捜査段階の供述内容と証言が食い違うのか。その理由として、凛の会元会員は「『記憶がない』と説明しても、検事から『そうじゃない。事実はこうなんだ』と押しつけられた」「意に沿わない供述をすると、検事は声を荒らげ、机をたたいた」と証言した。

 塩田元部長は「検事から『石井議員に電話した記録がある』と言われ、記憶にないことを供述した。事件自体が壮大な虚構ではないかと感じる」と、大阪地検特捜部の取り調べに不満を漏らした。

 だが、検察側も有罪立証には自信を見せる。検察幹部は「特に厚労省側の証人は組織を守ろうとしているのではないか。供述を翻すのは想定の範囲内」という。

 特捜部経験もある公判部副部長や捜査を指揮した主任検事を公判に投入。証人の捜査段階の供述調書を証拠採用するよう裁判所に求めるとともに、担当検事の証人尋問を行って、取り調べに問題がなかったことを立証する方針という。

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