郵便不正事件 元厚労局長「冤罪説」も飛び出した「大失態」

サンデー毎日 2010年2月14日号記事

 障害者団体向け割引制度を悪用した郵便不正事件をめぐり、大阪地検特技部が今、窮地に立たされている。

 「国会議員の依願を受ければ法に反することも引き受ける、ということはない。私は無罪です」

 虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた厚生労働省元局長、村木厚子被告(54)は1月27日の初公判でこう主張し、検察との全面対決に突入した。この強気の姿勢の裏側に、検察のずさんな捜査があるようだ。

 事件の概要はこうだ。起訴状によれば、村木被告は厚労省課長だった04年6月、係長だった上村勉被告(40)に指示し、民主党の石井一参院議員の元秘書らが設をした「凛の会」(解散)を障害者団体と認めるニセの証明書を作成させた―というものだった。村木被告は昨年6月逮捕された。

 ところがである。上村被告が「村木被告からの指示だった」とのこれまでの供述を一変。今後の公判で「独断だった」と証言することが明らかになったのだ。司法ジヤーナリストは言う。「物証に乏しい事件で、上村被告の供述が重要な証拠の一つでした。供述か変われば、当然、村木被告の冤罪の可能性が高くなります。検察の大失態になりかねず、相当焦っています」

 検察側は冒頭陳述で『石井議員の発行要請を受けた当時の上司(部長)に便宜を図るようにいわれた村木被告が、上村被告に証明書の作成を指示した」などと村木氏の関与を改めて強調。一方で、弁護側は「村木被告は書類の作成自体知らず、不正発行してまで議員の機嫌を取る必要もなかった。検察の涅造(ねつぞう)だ」と断じた。

 「こんな無理筋捜査をしたのは当時、衆院選を直前に控え、民主党議員を標的にすることで民主党にダメージを与えるという穿(うが)った見方さえ囁(ささや)かれている。だが、検察は関与を裏付ける物証がなく立件を断念。急きょ予定になかった村木被告の逮捕に踏み切ったため、ずさんな捜査につながった可能性が高い」(別のジャーナリスト)

 公判次第では"検察の劣化"を示す事例になりそうだ。

      本誌・武内 亮
ジャーナリストー・粟野仁雄

(PDF 727KB)

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