元上司「指示は記憶ない」 村木被告公判 偽証明書巡り証言

朝日新聞夕刊 2010年2月8日記事

厚生労働省から自称障害者団体に偽の証明書が発行され、郵便割引制度が悪用された事件で、虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われた同省元局長村木厚子被告(54)の第5回公判が8日、大阪地裁であった。村木元局長の上司だった塩田幸雄(ゆきお)・元障害保健福祉部長(58)=退職=が証人に立ち、元局長に証明書発行を指示したとされる点について「(捜査段階の)当時はそう思い込んでいたが、今では記憶にない」と述べた。

 また塩田元部長は、事件の発端とされる国会議員からの「口添え」も「思い込み」と否定し、自らのかかわりを「虚構」と表現。村木元局長が無罪を主張するなか、検察側の重要証人が事件の構図を揺るがす形となった。

 検察側の主張では、塩田元部長は2004年2月、懇意にしていた議員から、自称障害者団体「凛(りん)の会」(現・白山会、東京)への証明書発行を求める電話を受け、担当課長だった村木元局長に発行の便宜を図るよう指示。元局長が同6月、部下の担当係長だった上村勉被告(40)=共犯で起訴=に指示して偽の証明書を作らせたとされている。

 塩田元部長はこの日の公判で、検察側が指摘する議員を当時衆院議員の石井一参院議員(民主)としたうえで「親しい関係」と述べた。そのうえで、大阪地検特捜部による任意聴取で石井議員とのやりとりや元局長への指示を認めた内容の調書を示され、「おおむねそういう内容だったと思うが、今では電話があったのかやその内容の記憶がない」と証言した。さらに、発行後に議員に電話で連絡したとされる経緯も、取り調べをした検事から「電話の交信記録がある」と言われたのに、最近になって別の検事から「ない」と聞かされたことを「思い込み」の根拠に挙げた。そのえで、この事件について「一定の大きなストーリーの中で私の立場が位置づけられたように思う。壮大な虚構ではないかと思い始めている」と語った。

(PDF 651KB)

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