3月21日に総理大臣官邸で開催された経済危機克服のための「有識者会合」でのナミねぇの発言が、議事録で公開されましたのでご紹介します

2009年4月9日

経済危機克服のための「有識者会合」
(以下、首相官邸ホームページよりの抜粋)

 

会議の趣旨

世界的な金融危機に端を発する我が国の景気の悪化を受け、内閣総理大臣が、今後の経済財政政策のあり方について、10のグループに分かれて、各分野を代表するような各界の有識者から総合的に意見を伺うための会議です。

 

経済危機克服のための「有識者会合」84名の発言のポイントより、ナミねぇの発言部分

竹中 ナミ氏
・すべての人に、人や社会を支える力がある。それを引き出し、誇らしく 生きられるようにすることが、元気な社会づくりの基盤である
・性別や年齢や障害の有無に関わりなく、誰もが社会を支える一員となれる共生・共助の社会を作るため、「ユニバーサル社会(共生と共助の社会)基本法」の制定に向け取り組んでいる
・アメリカでは、ペンタゴンにあるCAPという組織で、各省庁の重い障害を持つ職員のICT支援を行っており、そこでの最先端の科学技術を応用した取組が大統領クオリティ賞を受賞した。スウェーデンでもやはりICT技術と人のサポートを組み合わせ、認知症の高齢者が街中で一人で、あるいは家族と生き生き生活している。障害のある人が活き活きと働き社会の支え手ともなれる仕組みは、女性や高齢者の力を生かす仕組みともなる。諸外国のすばらしい取組は、きっと日本でも実現が可能である
・ICT等を活用し「障害者(チャレンジド)をタックスペイヤーに出来 る日本」を実現することが、今求められている

 

経済危機克服のための「有識者会合」 議事録本文より

日時:平成21年3月21日( 土)9:15〜10:47
場所:官邸4階大会議室

○内閣官房長官 それでは、竹中さんお願いします。

○竹中氏 プロップ・ステーションの竹中です。どうぞよろしくお願いいたします。私の資料の方は参考なんですけれども、私の提言はユニバーサル社会基本法の制定をしよう。元気な日本をつくろうという提言です。ユニバーサル社会というのはちょっとわかりにくいのですけれども、日本語であえて言い直すとすると共生と共助の社会、すべての人が自分の持てる力を発揮して、その力で支え合って元気な日本にしていくという考え方です。

こういうことを私が考えましたのも、既に御存じの方もおられるかと思いますが、自分自身が重症心身障害の娘のお母ちゃんでありまして、36歳になりますが、彼女はまだ私のことをお母ちゃんとはちゃんと認識をしていない状況です。

ただ、私にとっては非常にいとしくて、しかも自分にとって自分を支えてくれる存在であるということを知りました。そのときに、そういったすべての人の中に社会や人を支える力があるんだなということを知ったと同時に、自分だけではなくてそれをたくさんの人にも広めていきたい。すべての人の中にある力を国家全体として引き出していけるような方法があるのであれば、まずその当事者である自分たちからつくっていこうということで、たくさんの重い障害のある人たちとこのプロップ・ステーションの活動、ユニバーサル社会、共生・共助の社会の実現を目指して約20年にわたって活動してきました。

その中で、これはやはり国家感というものが非常に影響しているんだなと思いまして、先進諸国でなくてもそうなのですが、取り分け先進諸国と言われる国々ではこの部分をどんなふうに考え、実行しておられるんだろうかと思いまして、取り分け日本の同盟国でもありますアメリカと、それから社会福祉のお手本、資本主義国家で社会福祉に成功したと言われるスウェーデンの両国と深いお付き合いをさせていただきましたところ、アメリカではオバマ大統領も誕生されましたけれども、人種の違いなど、すべてを超えて人の力を発揮して国家を支えてもらおうという政策を現実に長年、ケネディ大統領のころからやってこられたという事実を知りました。

プロップ・ステーションのアメリカのカウンターパートはペンタゴンの中のキャップという組織なのですが、これはペンタゴンなどで開発された最高の科学技術を使うことで最重度の方までを政府官僚にしたり、あるいは企業で働くリーダーたちに育て上げていくというような組織でした。そして、そこの組織が昨年の暮れには大統領クオリティ賞という米国で最も栄誉のある賞を受賞され、国家にとって非常にそういう考え方と行動が重要であるのだということをアメリカとして表明されたということを知りました。

スウェーデンにおいては、取り分けスウェーデンで皆さん御存じなのは税金が高いということだろうと思います。消費税が25% であり、所得税も60%を超えている。ただし、これを国民の全員が納得をして払われているということに非常に驚きを禁じ得ませんでした。最重度でお仕事をされているという方にお話を聞きましたら、ベッドの上におられてITを使ってお仕事をされている人がやはり他の方と同じ税率の税を払われていることに対して、日本人としてはつい大変ですねと言ってしまいがちだったのですが、その方は、税を払うことは私の権利だ。私がこの権利をきちんと行使しているからこそ、国家は私たちが誇りある社会の支え手であるような維持する政策をとっているんだということをおっしゃいました。

そういう意味で、国家と国民の関係というのは信頼と納得、それによって国民が自分も社会の支え手として誇りある存在でいられるのだという、この関係がまさに重要なのだ。これがこれからの日本に最も大切なものではないかと今、私自身は思っております。

現実に、プロップ・ステーションでもベッドの上にいる方がICTなどを使ってお仕事をされたり、それから知的なハンディで平仮名しか読めない方が実はITを使うとばんばん漢字混じりの文字を入力されたり、エクセルで表計算をしてお仕事をされるというようなことが目の前にあります。

あるいは、全く対面では会話を交わせない重い自閉症の方が、コンピュータを使うことでなぜか人とよりもコンピュータとの相性が非常によいという障害であるということも今、研究では明らかになっておりますが、そういった対面のコミュニケーション、言葉でのコミュニケーションをとれない方が、ICTという道具を使うことでさまざまな力を私たちの仲間の中では発揮をしておられます。

それで、今日、実は三村議員がいらっしゃって大変うれしく思っているんですけれども、新日鐵様からは在宅のそういった重度の障害のある方たちに対してお仕事のアウトソーシングをしていただいておりまして、そういう方々が全国各地でネットワークでつながって何十人という方がお仕事をさせていただいているというような現実もあります。

ですので、これは私たちが政府だけに頼るとか、お願いをしますということではなくて、私たち自身、現場の人間が国民の側からどんどんこういうふうにモデルをつくっていって、そこに産業界の方々も乗っていただくといいますか、応援していただく。共感していただく。そして、政治の中で政治家の皆さんがそういったことがやりやすい仕組みを生み出していただくということでできるのではないか。

アメリカやスウェーデンにできて、日本にできないわけがないというのが私の日本人としての矜持であります。きっと日本人はやる気になればアメリカよりもスウェーデンよりもうまくそういった国家をつくり上げられるのではないかと私は確信をしています。そういう中で外国のまねをするのではなく、そういうところのよいところをさまざま取り入れ、なおかつよくないところはまねしないようにしながらやっていくということが今、国家の危機を救うことになるかと思います。

すべての人が社会を支える意識を持ってくれるということが、私はやはり日本が元気になることであり、活力を持てるということだと思っておりますので、それは決して政府だけの仕事ではありませんけれども、せっかくこういう会議で発言をさせていただくことになりましたので、一丸となってやっていきたいということを提言させていただきたいと思います。

最後になりますけれども、プロップ・ステーションのプロップというのは実は支え合うというような意味です。ラグビーでプロップのポジションをやっていた青年が、スポーツ事故で首の骨を折って全身麻痺になったんですが、彼がコンピュータを使うことで非常に立派なお仕事をされるようになった。そういう意味もあって、支え合うという意味のこのプロップという名前を付けました。

そして、プロップ・ステーションでは障害者というネガティブな言い方ではなくて、その方々の中にもさまざまな力が眠っているよという意味でチャレンジドというアメリカの新しい言葉、これは挑戦する使命やチャンスを与えられた人という意味なんですが、そういう言葉を使わせていただいて、チャレンジドをタックスペイヤーにできる日本ということを私たちのスローガンにさせていただいています。

今、日本は超少子高齢社会に突入して、恐らく日本人全員がチャレンジド、向き合っていかねばならない。でも、その向き合うことに挑戦する力を持った者たち、すべてがチャレンジドであろうと思っております。そういうことで、ナミねぇからの提言でした。

この案の中に、たくさんの国会議員の皆さんや官僚の皆さんとも共につくらせていただいた法案のたたき台を提示させていただいております。以上です。

○内閣官房長官 ありがとうございました。

 

ナミねぇの追加発言

○内閣官房長官 どうぞ、竹中さん。

○竹中氏 先ほど、障害者チャレンジドという立場の方々が働けるようにということを申し上げたのですが、決してこれはフォー・ザ・チャレンジドということではなくて、バイ・ザ・チャレンジド、彼らがその社会で活躍できるような仕組みをつくることは女性であれ、高齢者であれ、すべての人の力を引き出すことができる。ですから、先ほど国家感と申し上げたのはすべての人の力を引き出して、日本人であることに誇りを持っていただけるような国づくりというふうに申し上げさせていただきました。

それと、そういった考え方だけではなくて、皆さんおっしゃいましたけれども、やはり今、日本が最も得意としているICT技術、IT技術ですね。これをどのようにそこに活用していくか。スウェーデンなどでは、既に認知症の方がICT技術などを使うことで町の中で一人で生きていかれたり、あるいは御夫婦で最期まで安心して生きていかれたりということで、人間が動く政策だけではなくて、そういったICT技術が非常に活用されております。時間がないので細かいことは申し上げませんけれども、そういったところは日本は恐らくもっと得意分野ではないかと思うのでやれるかと思います。

それから、自分自身が国民的道具になりました携帯電話のようなもので、見えない方が音声やバイブレーションで情報を得ながら自分の行きたいところへ行ったり、働いたり、消費者になっていく。あるいは、聞こえない方でしたら文字や図柄で、外国人の方でしたらその国の言葉で、あるいは車いすの方でしたら常にバリアフリーな道を案内してくれるというようなことで、そういった実験が5年間になされてきました。私もずっとそれに参画してきましたが、今、携帯がまさにそこまでの道具になってきつつあります。

つまり、公共事業が今まではハードで語られていたんですけれども、そういったICTなどを活用したソフトへの大転換、人の力を生かす政策を公共事業と呼ぶというふうに、公共事業の概念そのものをもうそろそろ変える時期がきたのかなと思っております。最重度の方がそれで力が発揮できるという一つの水先案内的な状況としてお知りいただければと思いました。

 

経済危機克服のための「有識者会合」におけるナミねぇの発言がビデオでもご覧いただけます

ナミねぇの発言部分がビデオ映像でご覧いただけます (7分51秒) Windows Media Playerでご覧下さい

ナミねぇの追加発言部分がご覧いただけます (2分20秒)

 

関連リンク

政府インターネットテレビ 経済危機克服のための「有識者会合」(社会保障)-平成21年3月21日
ナミねぇの発言は政府インターネットテレビでもご覧いただけます。ナミねぇは27分40秒から発言します。追加意見として1時間16分20秒からも発言しています。
※画面下のスライドバーをドラッグすると任意の場所から再生出来ます

首相官邸『経済危機克服のための「有識者会合」』ホームページ

ナミねぇの提出資料「ユニバーサル社会基本法の制定に向けて― 元気な日本を創ろう ―」 (PDF138KB)

当日の議事次第はこちらです

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