産経新聞 1996年2月14日より転載

ネットワークで元気 プロップ・ステーション3

口コミで講師登録100人にも

発足5年。障害をもつ人たちが自立するためのコンピューターセミナーを開くプロップ・ステーション(竹中ナミ代表)。その活動を支えるのは、現役のソフトウェア技術者らが参加するボランティア講師陣と、独自のパソコン通信ネットワーク“プロップ・ネット”の存在だ。

プロップ・ステーションが開くコンピュータセミナーは現在、8期目。週1回半年終了の初級と中級の2クラスがあり、参加者は約40人。昨年からは障害をもつ人だけでなくシニアにも対象を広げる。

「セミナーを企画したとき、障害をもつ人にボランティアで講師をしてくれる技術者さんを、どう見つけるかが一番の課題でした。それが、口コミなどで広がって、いまは登録者が約百人。常時20〜30人に手伝っていただいています」と竹中さん。

先ごろ、インターネットにホームページを発表した6人のセミナー卒業生を指導した小船隆一さん(37)も、そんなボランティア講師の一人。

プロップ・ステーションがインターネットビジネスへの進出を目指し、昨年1月、JCA(市民コンピューターコミュニケーション研究会、本部・東京)に支援を求めたのが縁で参加。

「そのまま、取り込まれてしまいました」と笑う。本業は、大手電機メーカーでシステム情報を研究するプログラマー。

今回のホームページの作成についても、「指が動かない人には、入力装置を普通のマウスより使いやすいものにするなどの工夫はしましたが、指導の内容は、健常者に対するのと全く同じ。だれであろうと基本的な仕組みがわからなければコンピュータは使えませんから」と気負いはない。

といっても、はじめからスラスラと講習を理解できる人は多くない。そんなときに活躍するのが、24時間オープンのプロップ・ネットだ。

「昨年のセミナーでは、1日に30回のやりとりもあったほど活発に使われました。中には宿題をそのまま書き込んで、答えを教えてなんていうものもありましたが…」と苦笑する坂上正司さん(31)は、プロップ・ネットの責任者。

高校時代、ラグビー練習中の事故で頚椎を損傷。全身まひに苦しんだ1年の入院生活の中で、字を書くためにパソコンに取り組み、その後、電動車いすで関西学院大学理学部と同大学院に学んだ行動派。ウイング、フランカーなどプロップ・ステーションの各部門の名称がラグビーにちなむのは、坂上さんのアイデアだ。(服部素子)

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