メール de ナミねぇ 【第297号】 by Prop Station

2019年5月1日

◇◆◇              (令和元年5月1日発行)◆◇◇
◇◆◇  メール de ナミねぇ 【第297号】     ◇◆◇
◆◆◆                          ◆◇◆
◇◆◇           プロップ・ステーション理事長 ◇◆◇
◇◆◇               竹中ナミ(ナミねぇ) ◆◇◆
◇◆◇                          ◇◆◇
◆◇◇           by Prop Station◇◇◆
           https://www.prop.or.jp/

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『メール de ナミねぇ』は、MSゴシックなどの等幅フォントで
ご覧下さいね!

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皆様意外とご存じないかもしれませんが、プロップ・ステーションは
お仕事のコーディネートもエキスパートです。
プロップで学んだ多くのチャレンジドが、皆さんからのお仕事を
心からお待ち致しております。
もし皆様の中で「お仕事を頼んでみよう」とか「こんな仕事できるかな?」
ということがございましたら、是非お気軽にご連絡下さい。
どうぞよろしくお願い致します。

データ入力や文書のデジタル化(PDF化やワード・エクセル化)
各種映像への字幕の付与もおこなっています。
こうした業務があれば是非お声がけ下さい。

<プロップ・ステーション事務局長 竹中宏晃>

prop2017@prop.or.jp

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■□◇◆ 第297号 目次 ◆◇□■

【1】巻頭言
「令和」の時代を迎えて
【2】4月24日、プロップ・ステーションのスタッフで
全盲・脳性マヒ、車いすユーザーの
眞野剛(まのたけし)くん(26歳)の取材がありました。
【3】活動報告
【4】ナミねぇと元F1レーサーであり『長寿のMIKATA』の
編集長でもある、山本左近さんとの対談記事(前・後編)
【5】今後の講演など予定

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ブログ https://ameblo.jp/takenakanami/
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■□◇◆ 巻頭言
「令和」の時代を迎えて(by ナミねぇ) ◆◇□■

「令和」の時代を迎えて

令和元年5月1日

社会福祉法人プロップ・ステーション理事長
竹中 ナミ

昭和23年に生まれた私(ナミねぇ)は、平成の30年間を経て、今日「令和」
の時代を迎えました。

私を慈しんで育ててくれた両親が過ごした「戦争」の時代と違って、この
世に生を受けてから70年間、国内での戦争を全く経験することのない日
々を過ごして「令和」を迎えることが出来たことを、何より幸福であった
と思っています。

重症心身障害の娘麻紀も46歳になりましたが、生後すぐから「障害児の
早期訓練」があり、養護学校が義務化されて、重症児の麻紀は「訪問教育
第一期生」として学齢を迎えました。
離婚によって「24時間介護をしながら働くことが不可能」になったとき、
多くの人たちのご協力によって国立病院に入院させていただくことが出
来、麻紀が日々温かい看護に護られて生活していることから、私は感謝
し、安心して多くのチャレンジドたちとプロップ・ステーションの活動
を続けることが出来ています。

私の母は、強い意志で「女性が働ける時代」を切り拓いてきたけど、まだ
まだ働く女性は少数派やったので、私の想像の及ばない苦労があったと
おもいます。
オカンたちの努力で「女性も当たり前のように働ける」時代が訪れ、娘で
ある私が、麻紀を授かったことを契機に「チャレンジド(障害のある人た
ち)も、当たり前のように働ける時代」を求めてプロップ・ステーション
の活動をしていることを思うと、歴史はこうして引き継がれて行くんや
な...と、感慨深いものがあります。

まさに歴史は、人々の意志によって形造られ、継続して行くものやとす
ると、令和の時代をどのようなものにするかは、私たち一人一人に託さ
れていると言っても過言やないと思います。

プロップ・ステーションの「プロップ」は、支え合いを意味する言葉です。
令和が、全ての人が支え合って生きられる時代になるよう、私も微力を
尽くしたいと、改めて思う令和元年の今日です。

◎この記事はプロップのホームページでもご覧いただけます
https://www.prop.or.jp/news/topics/2019/20190501_01.html

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■□◇◆4月24日、プロップ・ステーションのスタッフで
全盲・脳性マヒ、車いすユーザーの
眞野剛(まのたけし)くん(26歳)の取材がありました。◆◇□■

【写真】
https://www.prop.or.jp/news/topics/2019/img/20190501_02.jpg

4月24日、プロップ・ステーションのスタッフで、全盲・脳性マヒ、
車いすユーザーの眞野剛(まのたけし)くん(26歳)の取材がありました。
取材者はナミねぇの特集でもお世話になった毎日新聞の櫻井由紀治記者
です。

お母さんから剛くんの出産、育児、教育、自立心旺盛な性格はいつから?
などなど丁寧にインタビューした後、剛くんがパソコンで翻訳の仕事を
するところを撮影(スマホで!(笑))したり、翌日の剛くんの講演にも
出向くという打合せなどして、気がつくと二時間たってました。

「ナミねぇの講演を聴いた」ことから、プロップ・ステーションに仲間入
りしてくれた剛くん。「ナミねぇは剛くんをどう思ってるんですか?」
と聞かれたので「必ず化ける人やと、私の動物的な勘が言ってる(笑)」
と、率直に答えました。

<by ナミねぇ>

◎この記事はプロップのホームページでもご覧いただけます
https://www.prop.or.jp/news/topics/2019/20190501_02.html

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■□◇◆活動報告◆◇□■

○4月1日(月)
・会合 / 場所:夙川

○4月2日(火)
・会合 / 場所:赤坂 津やま

○4月4日(木)
・財務省財政制度等審議会に出席 / 場所:財務省
・「地域ICTクラブ」打合せ / 場所:NTTドコモ神戸支店

○4月6日(土)
・六甲山荘理事会 / 場所:六甲山荘

○4月8日(月)
・やまぶき財団より来訪 / 場所:プロップ神戸オフィス
・ 「須磨ユニバーサルビーチ・プロジェクト」木戸さん来訪 /
場所:プロップ神戸オフィス
・マート関さん、異動ご挨拶 / 場所:プロップ神戸オフィス
・喜多伸一神戸大学教授来訪 / 場所:プロップ神戸オフィス
・消防局広報誌取材 / 場所:プロップ神戸オフィス

○4月10日(水)
・「ユニバーサル社会を創造する事務次官PJ(勉強会)」主宰 /
場所:末松農林水産次官室
・文科省にて打合せ / 場所:文部科学省

○4月11日(木)
・吉本興業「濱田祐太郎くん」のマネージャー大本さん来訪 /
場所:プロップ東京オフィス

○4月12日(金)
・打合せ / 場所:やまぶき財団
・懇親会 / 場所:「心意気」

○4月15日(月)
・メディア関係者との懇親会 / 場所:飛騨高山料理「花里」

○4月17日(水)
・中教審 / 場所:文科省
・財務大臣との懇談会 / 場所:財務省

○4月19日(金)
・チャレンジド就労推進講演 / 場所:滋賀

○4日23日(火)
・財政制度等審議会に出席者 / 場所:財務省
・兵庫県ユニバーサル推進課より来訪 / 場所:プロップ神戸オフィス

○4日24日(水)
・毎日新聞より櫻井記者取材→真野剛くん /
場所:プロップ神戸オフィス
・会議 / 場所:三宮

○4日25日(木)
・芦屋ジャズ←リハ / 場所:三宮リードマンスタジオ

○4月26日(金)
・倫理委員会、治験・臨床委員会 /
場所:神戸市立医療センター中央市民病院
・懇親会 / 場所:「飛騨高山料理 花里」

○4日29日(月)
・芦屋ジャズフェスティバル→ナミねぇバンド出演 /
場所:芦屋カトリック教会

その他のスケジュールはこちらをご参照ください。
https://www.prop.or.jp/webcal/webcal.cgi

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■□◇◆ナミねぇと元F1レーサーであり『長寿のMIKATA』の
編集長でもある、山本左近さんとの対談記事(前・後編)◆◇□■

WEBマガジン『長寿のMIKATA』にて、ナミねぇと元F1レーサーであり
『長寿のMIKATA』の編集長でもある、山本左近さんとの対談記事が公開
されました。

読んでいただけたら嬉しいです(^^)/

<by ナミねぇ>

以下は山本左近さんのブログより転載させて頂きました。
オリジナルはこちら
(前編)
https://chojumikata.com/crosstalk/2024/
(後編)
https://chojumikata.com/crosstalk/2044
よりどうぞ。

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SAKON Dialogue : 020
チャレンジド(障がい者)の働き方改革#1
竹中ナミ(社会福祉法人プロップ・ステーション・理事長)

【写真】
https://www.prop.or.jp/news/topics/2019/img/20190426_01.jpg

竹中ナミ
Nami Takenaka
社会福祉法人プロップ・ステーション・理事長

障がい者福祉というと、障がいをもつ人が安心して暮らせる体制を「支
援する側」が整え、「支援される側」をサポートするという一方通行の
関係で語られてきた。こうした線引きが、障がいをもつ人が社会で活躍
する機会を妨げていることにいち早く気づき、約30年前から活動を続け
ている「ナミねぇ」こと竹中ナミさん(70歳)。彼女が理事長を務める
社会福祉法人プロップ・ステーションでは、ICT(情報通信技術)を
駆使することで、全ての人が支え合える社会の実現を目指している。障
がい者支援はどうあるべきか、そこにはどのような課題があるのか。
『長寿のMIKATA』編集長の山本左近が話を聞いた。前編・後編の2回に
分けてお送りする。

photos : Ren Arimura(d'Arc)
text : Yu Shimamura

◇障がいをもつ=「弱い立場」ではない

【写真】
https://www.prop.or.jp/news/topics/2019/img/20190426_02.jpg

山本左近(以下、左近):障がい者の自立支援に携わる一人として、以
前からナミねぇさんの活動は素晴らしくとても共感できると感じていま
した。今日はプロップ・ステーションがこれまでやってきたことについ
て、じっくりとお話をお聞きできればと思いますので、よろしくお願い
いたします。

竹中ナミ(以下、ナミねぇ):よろしくお願いします。私のことは、
「ナミねぇ」と呼んでくださっていいですよ。「ねぇ」に敬称が含まれ
ていると思って(笑)。

左近:ありがとうございます。プロップ・ステーションという名前は何
に由来しているんですか?

ナミねぇ:「プロップ」というのは、ラグビーでスクラムを組むときに
一番下からガッと全体を支え上げるポジションの名前なんです。

一番はじめの時期に私と一緒に活動を始めた青年は、関西学院大学高等
部でラグビーをやっていたときに、首の骨を折ってしまい全身麻痺にな
ったという男の子でした。
寝たきりの状態で、わずかに動くのは左手の指先だけ。そんな状況でし
たが、彼はプログラミングを学んだんです。当時はコンピューターが普
及し始めた頃でした。普通だったら、食事から生活まで家族の世話にな
りっぱなしになるところ、彼はマンション経営のソフトを開発し、家業
の一つである経営に携わるようになったんです。

左近:素晴らしいですね。

ナミねぇ:それで私は彼の頑張りを目にし、どんなに障がいが重くても、
自分ができることを磨いて社会のために仕事したとき、本当の意味で誇
りを取り戻すことができるんだと気付いたんです。

そういうグループを作ろうと思い立ち、名前をつけようというときに、
彼がラグビーをやっていた頃のポジション「プロップ」という言葉を聞
いたんです。プロップには「支え合う」という意味もあることを知り、
じゃあそれにしようかということになりました。

ステーションというのは単に人が集まる「駅」という意味ではなく、駅
でポイントを切り替えるような、「意識の切り替えができる場所」とい
うイメージです。「障がい者はかわいそうだから手を差し伸べてあげま
しょう」という福祉の観念を切り替える「駅」になりたいねと。

左近:社会福祉法人さわらび会が実践してきたことは、まさにナミねぇ
がやってきたことと近いなと改めて感じています。
今おっしゃっていたことは、僕自身が日頃から感じていることでもあり
ますが、障がいのある方は「障がい者」という弱い立場、何もできない
人という枠組みにはめられてしまいがちです。しかし、そうではなく、
彼らの能力をいかに引き出して、彼ら自身が自立できるようにするには、
そして彼らの力を他の人に役立てるにはどうすればいいのか、というこ
とを、さわらび会の創立者である僕の父の代からずっと考え、実践して
きました。

ナミねぇ:今までの日本社会は、障がいがあったら「支えられる側」、
なければ「支える側」、という線引きがハッキリしていました。福祉の
受け手と送り手。でも、それだけではなく、どちらも支える立場になれ
ますよね。
「障がい」という言葉もネガティブな響きを持っているので、私たちは
「チャレンジド(The Challenged)」という呼び方を提案しています。
これは「挑戦する使命や課題、機会を与えられた人」という意味で、障
がいをもつ人の中に眠っている可能性に着目した新しい米語なんです。

左近:僕がCEOを務める医療法人・社会福祉法人さわらび会でも、40年
ほど前からチャレンジドの就労場所、能力を引き出す場をつくってきて
います。

たとえば、一例ですが障害福祉サービス事業所の「明日香」では、
「felico(フェリコ)」というヴィーガンクッキーを販売していますが、
このクッキー工房でも多くの利用者様がスタッフとして活躍しています。
やはり自立するためには、経済的な自立も必要なんですよね。

ナミねぇ:とても素晴らしいことだと思います。

【写真】
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◇「できる」ことから仕事を創出

ナミねぇ:私たちは主にICT(情報通信技術)を使った分野で「チャレ
ンジドをタックスペイヤー(納税者)に」というスローガンを掲げ、
「働きたい」という意識を持った人が、現実的に仕事をやり遂げられる
ところまでをコーディネーションするっていう役割を受け持っています。

左近:ナミねぇご自身が、チャレンジドのお母さんでもありますよね。
私たちも障がい者の子をもつご家族と話す機会がよくありますが、多く
の人がもっている心配は「自分たちが亡くなった後に、この子達はどう
なるんだろう」ということです。

ナミねぇ:娘の麻紀は重症心身障がいをもっていて、今年で46歳になり
ます。完全なbabyとして過ごしており、今も私のことは母親だとはわか
っていないと思います。
彼女のような存在を、ひとりの母親として安心して残していこうと思っ
たとき、私の気持ちだけでは回っていかないですよね。もっと多くの人
の手が必要で、経済的な裏付けもないといけない。
そうしたときに、先ほど話した男の子のように、それまでは働けない側
にいた人が情報通信技術を使うと経営者にまでなることができると気付
いたわけです。

私は福祉家ではなく、心が美しいからチャレンジドを支援しているわけ
でもありません。重度の障がいをもつ子の母親として、私が安心して死
ねるように人の力を借りようと始めたのがプロップ・ステーションなん
です。いわば「おかん」のワガママですね(笑)。

左近:これまでの約30年間、チャレンジドを支援する活動を行ってきて、
変化を実感していることはありますか?

ナミねぇ:プロップを発足したのは1991年ですが(編集部注:
「Windows95」が爆発的にヒットした「インターネット元年」は1995年)、
最初は全身麻痺の方の支援からスタートしました。当時は、身体の障が
いを持った人が通勤できなくてもコンピューターを使って働けるように
支援するのが主な役割でした。

それが今は、情報通信技術を使えばありとあらゆる障がいを持った方が
能力を発揮できるということがわかってきました。例えば、全く耳の聞
こえない、ミキティさんという人は、コンピューターを学んでホームペ
ージ制作やイラスト・漫画制作の仕事を受注したり、耳の聞こえない子
ども達に勉強の仕方を教えたり、自分でNPOを立ち上げて自ら聴導犬普及
運動をしています。

左近:どんどん能力を発揮されて、自立されていく方が増えてるんです
ね!

ナミねぇ:子どもの頃から絵を描くのが好きで、現在はアーティストと
して活躍している方もいます。体幹を維持することはできない難病を抱
えているため、車椅子に座るときは全身コルセットで支えて、頭は固定
して。
彼女の場合は自分で営業することはできないわけです。だから、プロッ
プ・ステーションの役割は、彼女のような人が仕事できるように、付随
するバックオフィスの機能を全てやるということ。注文を取るところか
ら価格設定まで、あとはネゴシエーションですね。

だから、仕事のカタチは本当にさまざま。この人たちができることを、
どうやったら仕事にできるかな、と逆算してコーディネートするので、
すごく面白いですね。今までにない働き方をつくり上げるということな
ので。
「この人は◯◯ができない」とできないことを数えていたら、仕事を生
み出すことはできません。

左近:僕も「この人はこれができないから……」という言葉を聞くこと
がありますが、「◯◯ができない」ではなく、何ができるかを見極めて、
その人の能力を引き出していかないといけないと伝えています。

ナミねぇ:物を持てないけどできる仕事は何か、通えないけど、見えな
いけど……、と考えないといけません。その「発想の逆転」がないとダ
メで、逆に言うとその逆転さえあれば仕事はどんなものでも創出できま
す。私たちはそう思っています。
また、それをやり遂げるチャレンジドの方々からは、本当に、毎日、元
気をいただいています。

左近:チャレンジドの皆さんの頑張りが、ナミねぇの元気の秘訣だった
んですね!

ナミねぇ:そうです。一人ひとりが自分の力を発揮できるようになるま
でのプロセスを毎日見られるというのが、私にとってはパワーになって
います。

(#2に続く)

【写真】
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https://www.prop.or.jp/news/topics/2019/img/20190426_06.jpg

竹中ナミ
Nami Takenaka
社会福祉法人プロップ・ステーション・理事長

1948年、兵庫県神戸市生まれ。重症心身障がいの長女を授かったことか
ら、独学で障がい児医療・福祉・教育を学ぶ。1991年、プロップ・ステ
ーション(任意組織)を設立。1998年、厚生大臣認可の社会福祉法人格
を取得、理事長に就任。チャレンジドの自立と社会参画、とりわけ就労
の促進を支援する活動を続ける。文部科学省中央教育審議会初等中等教
育分科会委員、財務省財政制度等審議会委員などを歴任。2010年6月、
日本放送協会(NHK)経営委員会委員に就任。著書に『プロップ・ステー
ションの挑戦 「チャレンジド」が社会を変える』(筑摩書房)、『ラ
ッキーウーマン マイナスこそプラスの種!』(飛鳥新社)がある。

×

山本左近
SAKON YAMAMOTO
さわらびグループ CEO/DEO
レーシングドライバー/元F1ドライバー

1982年、愛知県豊橋市生まれ。幼少期に見たF1日本GPでのセナの走りに
心を奪われ、将来F1パイロットになると誓う。両親に土下座して説得し
1994年よりカートからレーシングキャリアをスタートさせる。2002年よ
り単身渡欧。ドイツ、イギリス、スペインに拠点を構え、約10年間、世
界中を転戦。2006年、当時日本人最年少F1デビュー。2012年に日本に拠
点を移し、医療法人/社会福祉法人の統括本部長として医療と福祉の向上
に邁進する。2017年には未来ヴィジョン「NEXT55 Vision 超幸齢社会を
デザインする。」を掲げた。また、学校法人さわらび学園 中部福祉保育
医療専門学校において、次世代のグローバル福祉リーダーの育成に精力
的に取り組んでいる。日本語、英語、スペイン語を話すマルチリンガル。

      ◇        ◇        ◇

SAKON Dialogue : 021
チャレンジド(障がい者)の働き方改革 #2
竹中ナミ(社会福祉法人プロップ・ステーション・理事長)

【写真】
https://www.prop.or.jp/news/topics/2019/img/20190426_07.jpg

竹中ナミ
Nami Takenaka
社会福祉法人プロップ・ステーション・理事長

前回(#1)に引き続き、社会福祉法人プロップ・ステーションの理事長
を務める「ナミねぇ」こと竹中ナミさん(70歳)とのクロストークをお
届けする。プロップ・ステーションは1991年の発足以来、約30年にわた
り障がい者福祉において「支援する側」と「支援される側」の境界線を
取り払うべく、ICT(情報通信技術)を使った障がい者雇用・就労支援を
続けている。障がいをもつ人を「障がい者」と呼ばず、新しい米語「チ
ャレンジド」(挑戦する使命や課題、機会または資格を与えられた人)
という呼称を提案するなど意識改革にも取り組むナミねぇに、山本左近
が現在の課題と今後のビジョンについて話を聞いた。

photos : Ren Arimura(d'Arc)
text : Yu Shimamura

【写真】
https://www.prop.or.jp/news/topics/2019/img/20190426_08.jpg

◇現場に合わない制度をどう変えるか

山本左近(以下、左近):ナミねぇは、プロップ・ステーションを通じ
て、チャレンジド一人ひとりが活躍できる場をつくるサポートをされて
いますが、福祉が目指すべき根本的なことを実践されていると僕は感じ
ています。

一方で、現行の制度の中で福祉を行っている人の一部には、その取り組
みを遠く感じる人もいます。
誰もが安心して暮らせる社会保障は整備されているのですが、障がいを
もつ方がその人らしく生きるために何ができるんだろうか? この人は
どんな能力を持っているんだろうか?といったことまで考えている人は
まだ多くないなと。僕はここに日本の次の課題があると常々考えている
んです。

竹中ナミ(以下、ナミねぇ):たとえば「法定雇用率」(※)というも
のがありますよね。障害者雇用率制度というのですが、これは「障がい
をもつ人は働くのが難しいから、割合を決めて雇ってあげよう」という
ものなんです。厚生労働省は、この制度がチャレンジドの雇用や就労の
促進につながると思っているんです。

※ 障害者雇用促進法43条第1項により、従業員が一定数以上の規模の事
業主は、従業員に占める身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者の
割合を「法定雇用率」以上にする義務がある。民間企業の法定雇用率は
2.2%で、従業員を45.5人以上雇用している企業は、1人以上の障がい者
を雇用しなければならない。(厚生労働省ホームページより)

左近:なるほど。

ナミねぇ:この制度には、障がいをもつ人を雇ったのち、会社の戦力に
しないといけないというミッションはないんです。「難しいんだから、
気の毒だから、何人かは入れてあげよう」という。
これは大きな間違いで、今、私たちが政治に求めているのは、雇用率だ
けじゃなく発注率も定めてほしいということなんです。

左近:ただ雇うだけではなく、一人ひとりが仕事をうけられるようにす
るということですね。

ナミねぇ: 雇用という形だと、会社まで毎日通勤することや1週間の最
低勤務時間を求められるので、介護が必要な重度の障がいをもつ人やコ
ミュニケーションに障がいがある人など、この制度では働けないという
チャレンジドが多くいます。

本当は、バックオフィスのシステムがあれば、その人自身がひとりで1か
ら10までできる必要はないんです。プロップ・ステーションでは、チャ
レンジドができる仕事を生み出して、企業や行政と働き手をつなぐ役割
を担っていますが、「できること」さえ磨けば仕事をうけられる、とい
う流れをつくるために必要なのは発注率なんです。

だから、私たちのような活動をしている組織を通じて、チャレンジドに
仕事を発注してくださるとよいなと。チャレンジドの雇用をポイント化
する、という考えしかないことが、逆に障がい者の雇用促進にストップ
をかけていると私は思います。

左近:どの分野にも共通するかもしれませんが、福祉の領域でも常に現
場の方が早く、制度がなかなか追いついてこない状況が生まれていると
いうことですよね。

ナミねぇ:発注さえしていただければ。どう進めるか、といったやり方
を考えるのは私たち、プロップの仕事ですから。
 今、業務をアウトソーシングしてない企業ってほとんどないですよね。
コンピューターを使わない仕事もほとんどないと思います。そう考える
と、企業にとっても「発注する」ということは「雇用する」ことよりも
融通がききやすいと考えることもできるわけです。そのあたりを考えて
いただき、柔軟に組み入れていただけると。

左近:そうですね。僕もこの問題はしっかりと考えなければいけないと
思っています。

ナミねぇ:30年活動をしてきて、さまざまなことが変わったけど、この
通勤を前提とした障害者雇用率制度しかない状況は一日も早く変えたい
と思ってきました。
いろいろな働き方を後押しできる制度があれば、私たちのように企業や
行政からアウトソーシングされた仕事をチャレンジドたちが受注できる
ようバックアップする組織がもっと生まれると思うんです。ただ、今は
そういう組織はない。なぜかというと、「雇用」につなげないといけな
いからなんです。

【写真】
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◇固定観念を外し、可能性を引き出す

左近:誰しも調子が悪いときがあると思いますが、体調不良などの理由
からチャレンジドの方々が仕事を思うようにこなせないときはどのよう
にされていますか?

ナミねぇ:それをフォローする体制をつくるのが、私たちの仕事なんで
す。私たちは、「体調やメンタルの状況がよくないときは、すぐに言っ
てね」とみなさんに伝えています。ちょっとでも無理かなと思ったら、
すぐに言ってと。

今までは、調子がよいときと悪いときの波があったらダメだよ、と言わ
れていました。でも私たちは、一番調子のよい時期、波が上に振れたと
きだけを切り取って、「ここだけ働いたらええやん」という風に考えて
います。
この共通認識を持っていれば、1人の仕事を3、4人で分担してやっても
いいし、3、4人でやろうと思ってた仕事を調子がよいからと1人でやり
遂げちゃってもいい。どちらもあっていいと思うんです。

チャレンジドの人だけでなく、私も調子がよいとき、調子が悪かったり
するときがあります。彼らは他の人よりも波が激しかったり、深かった
りするかもしれないけど、上がる瞬間は同じようにあります。だから、
「波が上がっている瞬間にやろうぜ」ってね(笑)。そうやって達成す
ることで、彼らの自信にもつながるわけです。

左近:彼らだって本当はもっと挑戦できることがたくさんある。彼らだ
けでできない部分は周りがサポートするなど、機会をつくってあげるこ
とが大事ですね。

ナミねぇ:「できる」「できない」でいったら、たとえば私なんか、ワ
ルで中卒やから(笑)、できへんことがすっごく多い。英語も「ディスイ
ズアペン」「マイネームイズ、ナミねぇ。イエーイ!」くらいやし、算
数も分数になったらダメです(笑)。だから人前でしゃべる仕事だけに
専念してるんです。

でも、「できない」部分を「できない」「できない」と言われたら、私
もムカつきます。誰もができないことがあって、「でも、それはあんた
も同じやろ」「その代わり、私はこれだけはあんたに負けへんで」とい
う人間関係になれたら、障がいがあるかどうかは大きな問題ではなくな
ってきます。

左近:ナミねぇの周りにいるチャレンジドの方々には、「自分たちはで
きる」と思っている人が多いと思います。障害あり、なしに関わらず、
自分では何もできないと思っている人たちがいるのは本当にもったいな
いと感じています。彼ら自身にも「自分はできる」ってことを知ってほ
しいなと。

2年前、僕はサハラ砂漠240kmを7日間かけて走る「サハラマラソン」と
いう大会に出場したんです。人生で初めてマラソンに挑戦しました。僕
が運営しているさわらび会の施設でリハビリを頑張っている人たちを応
援するために、自分が頑張っているところを見せたいと思って。

でも、驚いたのは、その大会にはブラインドの方や手の不自由の方も、
ガイドと一緒に挑戦していたんです。こんな過酷なマラソンですから、
健康な方でも話を聞いただけで「私には無理」と言う人がいます。にも
かかわらず、チャレンジドの人もサハラマラソンに挑戦しているという
事実に僕自身励まされましたし、もっと多くの人に知ってもらいたいと
思いました。

ナミねぇ:最終的には、「必ずその人の中にもできることがある」って
信じられるかどうかだと思います。
 日本の人権教育では、障がいをもつ人に出会ったら「『何かお手伝いす
ることはないですか』と聞きましょう」と、習うんです。でもこれは間
違いで。その相手はあなたとは違うやり方で、あなたよりもすごいこと
ができるかもしれない、と考えるように教えないと。

左近:だから、「障がいをもっていると◯◯ができない」といった固定
概念を外さないといけないんですよね。日本の社会全体に、「健常者」
と「障がい者」という線引きがあるんですけど、僕はこうした状況は健
常者側から変えていかないと、と思っています。

僕は高齢者施設や障害者施設を運営する両親のもとで育ったので、幸運
にも小さい頃から口に筆をくわえて絵を描く人と接したり、知的障がい
をもつ子と当たり前に遊んだりしていました。そういう経験があるので、
偏見や区別をつくらないですんでいるんだなと思うんです。そうすると
何が大事かというと、やっぱり教育なんだなと。

ナミねぇ:そうですね。

左近:これだけ多様性が叫ばれる中でも、社会に目を向けると分断が起
きてしまっている状況がある。この分断をなくすために、お互いの多様
な能力を認め合う社会をつくっていくためにも、ナミねぇのようなチャ
レンジドの方の新しい働き方を後押しする活動には大きな力があると思
っています。
さらなる発展のために、これからのご活躍にも期待しております。本日
はありがとうございました!

ナミねぇ:これからもワクワクしながら活動を続けたいと思います。ど
うもありがとうございました。左近さんも頑張ってね!

【写真】
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竹中ナミ
Nami Takenaka
社会福祉法人プロップ・ステーション・理事長

1948年、兵庫県神戸市生まれ。重症心身障がいの長女を授かったことか
ら、独学で障がい児医療・福祉・教育を学ぶ。1991年、プロップ・ステ
ーション(任意組織)を設立。1998年、厚生大臣認可の社会福祉法人格
を取得、理事長に就任。チャレンジドの自立と社会参画、とりわけ就労
の促進を支援する活動を続ける。文部科学省中央教育審議会初等中等教
育分科会委員、財務省財政制度等審議会委員などを歴任。2010年6月、
日本放送協会(NHK)経営委員会委員に就任。著書に『プロップ・ステー
ションの挑戦 「チャレンジド」が社会を変える』(筑摩書房)、
『ラッキーウーマン マイナスこそプラスの種!』(飛鳥新社)がある。

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山本左近
SAKON YAMAMOTO
さわらびグループ CEO/DEO
レーシングドライバー/元F1ドライバー

1982年、愛知県豊橋市生まれ。幼少期に見たF1日本GPでのセナの走りに
心を奪われ、将来F1パイロットになると誓う。両親に土下座して説得し
1994年よりカートからレーシングキャリアをスタートさせる。2002年よ
り単身渡欧。ドイツ、イギリス、スペインに拠点を構え、約10年間、
世界中を転戦。2006年、当時日本人最年少F1デビュー。2012年に日本に
拠点を移し、医療法人/社会福祉法人の統括本部長として医療と福祉の
向上に邁進する。2017年には未来ヴィジョン「NEXT55 Vision 超幸齢社
会をデザインする。」を掲げた。また、学校法人さわらび学園 中部福
祉保育医療専門学校において、次世代のグローバル福祉リーダーの育成
に精力的に取り組んでいる。日本語、英語、スペイン語を話すマルチリ
ンガル。

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■□◇◆今後の講演など予定◆◇□■

○5月1日(水)
・マキGW帰省 / 場所:自宅等で家族と過ごす(^_^)

○5月6日(月)
・モダンタイムス・ビッグバンド コンサート /
場所:芦屋ルナ・ホール

○5月8日(水)
・中教審 / 場所:文部科学省
・「ユニバーサル社会を創造する事務次官PJ(勉強会)」 /
場所:文部科学省 次官室または省議室

○5月9日(木)
・淡路会議打合せ(大西さん来訪) / 場所:プロップ神戸オフィス
・ひょうごコミュニティ財団評議員会に出席 /
場所:ひょうごコミュニティ財団評議員会

○5月10日(金)
・懇親会 / 場所:飛騨高山料理「花里」

○5月14日(火)
・意見交換会 / 場所:大阪

○5月15日(水)
・「ユニバーサル社会を創造する事務次官PJ(勉強会)」 /
場所:文部科学省
・次官PJ「成毛眞さんを囲む会」 / 場所:インスパイア・オフィス

○5月16日(木)
・「産業界によるチャレンジドの自立支援」意見交換会 /
場所:プロップ東京オフィス
・財政制度等審議会に出席 / 場所:財務省

○5月18日(土)
・六甲山荘理事会 / 場所:サンセットヴィラ六甲山
・チャレンジド・ファミリー会合 / 場所:飛騨高山料理「花里」

○5月22日(水)
・財政制度等審議会に出席 / 場所:財務省

○5月24日(金)
・倫理委員会、治験・臨床委員会 /
場所:神戸市立医療センター中央市民病院

○5日25日(土)
・兵庫県重症心身障害児者を守る会総会 /
場所:神戸市教育会館6F大ホール

○5月30日(木)
・関西大学にて客員教授講演 / 場所:関西大学(経済学部 第二学舎)

その他のスケジュールはこちらをご参照ください。
https://www.prop.or.jp/webcal/webcal.cgi

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☆メール de ナミねぇ 【第297号】
令和元年5月1日発行
☆発行元:社会福祉法人プロップ・ステーション
URL https://www.prop.or.jp/
☆お問合せ先:  〒658-0032 兵庫県神戸市東灘区向洋町中6−9
神戸ファッションマート6E−13
社会福祉法人プロップ・ステーション広報
メールアドレス:kouho@prop.or.jp
☆発行:原則として毎月1〜2回
☆『メール de ナミねぇ』は『まぐまぐ!』
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☆ご意見・ご感想をお待ちしております。
kouho@prop.or.jp こちらまで。
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