都政新報 令和2年12月1日より転載

素顔の「創造人」たち
清原慶子が聞く-30-

「ユニバーサル社会」を目指して活動する
(社福)プロップ・ステーション理事長竹中ナミさん(下)


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素顔の「創造人」たち
清原慶子が聞く-30-

「ユニバーサル社会」を目指して活動する
(社福)プロップ・ステーション理事長竹中ナミさん(下)

今年7月、神戸市北区の総合福祉施設しあわせの森で開催されたのは、障がい者を対象とした「ドローン操縦教室」です。これは「チャレンジド(障がい者)を納税者に!」をスローガンに、1991年から30年間にわたり活動している「社会福祉法人プロップ・ステーション」理事長の竹中ナミさん(72)が、ドローンを使った計測の3Dデータ化等を手掛ける「葛間情報」と連携して2019年10月に設立した「ユニバーサルドローン協会」の主催です。

障がい者支援の領域で、ICTを活用した経済的自立支援の分野を開拓してきた竹中さんは、「プロップprop」という英語で「支え、支柱、支える人、支えあい」などの意味がある言葉を支援活動組織の名称にしており、常に未来志向で支援の新しいカタチを模索しています。

当日のドローン教室には、重度脳性麻痺で全身まひのある人、両手欠損の人、自閉症スペクトラム障害のある人の3人が受講しており、それぞれの障がいに適応した操作方法だけでなく、法規制などの内容が含まれています。竹中さんは、ドローンの最大の利点は自分が現場に行かなくても作業ができることで、障がい者が操作能力を身に付けることによって、職域拡大につながると考えています。

ただし、ドローンには規制があり、人口集中地区で操縦するには国土交通省の飛行許可が必要で、許可の前捉として10時間の操縦経験が必要です。そこで、障がい者対象の操縦教室を閧催したのです。

竹中さんは、「働く」あるいは「働くことで誰かの役に立ちたい」という気持ちは、人間ならではの素睛らしい感覚であることから、「日本はチャレンジドや高齢者が、元気と誇りを持って働ける国になってほしい」と強く思っています。実は竹中さんの娘さんは重症心身障がいのために「働く」という形で社会貢献できないのですが、そうした人々も尊厳を持って存在できる国であってほしいと強く願っています。

こうした活動に基づく提言を期待され、かねて財務省財政制度等審議会委員を務め、現在も同審議会の財政制度分科会臨時委員を務めています。また、文部科学省中央教育審議会委員及び特別支援教育を含む同審議会初等中等教育分科会委員にも私とご一緒に積極的に参画しています。

07年11月からは「ユニバーサル社会を創造する事務次官プロジェクト」という11府省の事務次官が参画する勉強会を主宰しています。この勉強会はほほ毎月のように開催され、竹中さんの人脈による幅広い分野の講師の話題提供を手掛かりに、各府省の事務次官が各府省単独で、あるいは府省連携で、社会のユニバーサル化に向けて施策を検討する視点や構想を得ています。

竹中さんが構想する「すべての人が持てる力を発揮し、支え合って構築する『ユニバーサル社会』の実現」は障がい者のためだけでなく、まさに「すべての人」が生きやすい社会を求めるものだといえます。

(前三鷹市長)

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