都政新報 令和2年11月24日より転載

素顔の「創造人」たち
清原慶子が聞く-29-

「チャレンジドを納税者に」を推進して30年
(社福)プロップ・ステーション理事長竹中ナミさん(上)


画像をクリックで、紙面をPDFファイルにてご覧いただけます

<本文>

素顔の「創造人」たち
清原慶子が聞く-29-

「チャレンジドを納税者に」を推進して30年
(社福)プロップ・ステーション理事長竹中ナミさん(上)

竹中ナミさん(72)は、重症心身障がいのある娘さんの母親、関西弁でいうと「おかん」です。竹中さんは、誰からも親しみを込めて「ナミねぇ」と呼ばれています。

障がいのある子どもの母としての実体験から、独学で障がい児医療・福祉・教育を学び、ICTの革新が顕著なこれからの社会では、障がい者を福祉サービスの対象としてのみ位置づけるのではなく、働いて納税できるような「経済的自立」を保障する社会であるべきと考えました。

そして、1991年に「チャレンジド(障かいのある人)を納税者に!」というスローガンを掲げて、仲間たちと草の根のボランティアグループ「プロップ・ステーション」を創立しました。

私は95年に当時の郵政省に設置された「高齢者・障害者の情報通信の利活用の推進に関する調査研究会情報バリアフリー部会」の主査を務めた際、委員であった竹中さんと出会いました。この研究会は高齢者や障がい者への情報保障の在り方を検討しましたので、竹中さんが進めていた障がい者がICTを利活用することによって、就労し、報酬を取得する道筋を確保するしくみづくりは、未来志向の実践として共有しました

竹中さんは障がい者、保護者、障がい者の教育や福祉に関わる関係機関の皆様とともに「チャレンジドを納税者に!」という理念を共有し、考え、行動するために「チャレンジド・ジャパン・フォーラム国際会議」を主宰することとしました。具体的には、竹中さんの活動の原点の兵庫県をはじめ東京都、宮城県、三重県、岩手県等全国各地でのフォーラムを開催しましたが、運営の座長である須藤修・東京大学教授(現・中央大学教授)を補佐する副座長を引き受けたのが私でした。

こうした活動にマイクロソフト社も注目し、98年、ビル・ゲイツ氏と当時の日本代表成毛眞氏から1億円の寄付が寄せられ、それを基金として社会福祉法人の認可を得て、日本初の「情報通信で障害者自立支援を行う社会福祉法人」としての活動が本格的にスタートしました。私は創立期の理事を務めました。

活動内容の中核は、チャレンジド対象のパソコン技術講習(オンライン含む)を行い、ICT系の仕事を企業や行政から受注し、全国各地のチャレンジトたちが在宅ワークできるようコーディネートする活動です。仕事はデータ入力・画像処理等によるテータベース化、グラフィックス・イラスト作成、オンライン地図情報、自治体等の行政情報デ―夕人力や議会議事録作成等幅広いものです。

竹中さんは受注企業との契約を持続可能とするために、納期、価格、品質とセキュリティーをしっかり守る体制を確立してきました。

ところが、今回のコロナ禍では多くの企業が「外注止め」をせざるをえない状況となり、従来のように仕事ができない状況に直面しています。竹中さんは連日、理事長として改めて全国各地への宮業活動に邁進しています。

(前三鷹市長)

ページの先頭へ戻る