神戸新聞 令和2年1月27日より転載

「障がい者も働いて役に立ちたい」
脊髄性筋萎縮症 佐藤仙務さんが講演

パソコン駆使 寝たきりで起業
在宅ワークに可能性、「専門性磨きり挑戦を」


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左から神経筋疾患の佐藤仙務さん、大山有子さん、、竹中ナミさん= 東京都千代田区

神経や筋肉などの病変により体がうまく動かない障がい者の中に、パソコンを使って働き始め、社会で活動している人たちがいる。「寝たきり社長」を自称する佐藤仙務さん(28)=愛知県東海市在住= もその一人。病気と就労を取り巻く状況を支援者らと話し合った。

佐藤さんの病気は、神経筋疾患の一つ脊髄性筋萎縮症(SMA、指定難病)で、生後すぐに発症、脊髄にある運動神経の変性により、口と左手親指しか動かないという。

佐藤さんは「今も座位もできない状態。子ども時代は特別支援学校だった。大人になったら働くことが当たり前と考えていた。でも働く所がなく、8年前に会社を起こした。ウェブ作りや名刺印刷、デザインの仕事。パソコン使って在宅勤務100% 。従業員も重度の障がい者」と寝台式車いすの上から話す。

東京女子医大臨床ゲノムセンターの斎藤加代子所長は「SMAは0〜4まで病型があり、4型は成人以降の発症だが、大体は生後半年までに発症する。体幹や四肢の筋力低下や筋萎縮が起こる。医療的ケアにより、中には在宅で活動している人もいる」と解説する。

患者は全国で1400〜1500人とされる。

「大切なことはひたすら行動すること。待っていても駄目。できない理由ではなく、できる方法を考える。どんどんチャレンジし、次々と現実になった。3年半の通信講座でMBA(経営学修士)を取り、名古屋市の女子大でITビジネスを教えている」と佐藤さん。

「障がい者でも働いて役立ちたい。助けてもらうばかりだと息苦しい。ありがとうと言われたい。仕事をして所得を上げ、税金を納めることも可能」と熱く語る。

「SMA家族の会」会長の大山有子さんは「就労が一番大事。SMA患者で働いている人もいるが、障がい者雇用は圧倒的に少ない」と話す。

障がい者雇用を支援している神戸市の社会福祉法人「プロップ・ステーション」理事長の竹中ナミさんは「娘が重度の脳障害。手の機能がなく、目や耳、言葉も駄目。体は丈夫だった。最初はどう育てていいか分からなかったが、問題は社会の方にあることが分かった。その克服を目指そうと会を設立した」と振り返る。

「障がいのある人からいろいろ教わった。個別にはさまざまな能力があるのに入り口からドアを開ぎされている」

竹中さんは組織を法人化しないと活動できないことを知り、当時マイクロソフト会長のビル・ゲイツさんに接触、協力を求めて、会の法人化に1億円の寄付を得るなど、全面的な支援を受けた。

「『コンピューターがあれば稼げる』と聞いた。私は触りたくないので、口と心臓だけで活動し、この30年間、あらゆる障がい者を対象にパソコンを学べるセミナーを開いてきた。産官学民と連携して運動を推進中。すべての分野を巻き込み、在宅の人に仕事を発注できる社会にしたい」

佐藤さんは「50年前は働けなかった。今は家で仕事ができる社会になりつつある。働く上で専門性が必要で学ぶことが大事。これからは未来がある。温かく見守ってほしい」と話している。

神経筋疾患

・脊髄性筋萎縮症(SMA)
・筋萎縮性側索硬化症(ALS)
・筋ジストロフィー
・重症筋無力症
・遺伝性ニューロパチー
 など

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