日本農業新聞 平成30年8月5日発行より転載

コラム 四季
「弱者を、弱者で無くしていくプロセスを福祉と呼びたい」

東京在住の鈴木俊太朗さん(19)はダウン症のイケメン。農業を手伝い、大好きなドラムはプロも注目する腕前▼父は、産地と消費地をつなぐナチュラルアート代表の鈴木誠さん(52)。夢は「社長」。人手不足に悩む産地に父と収穫や草刈りに出向く。農業を手伝っている時が「すげえ楽しい」。会議に出席すればスマホで議事録を作る。野菜の栄養価が分からなければスマホで検索。誠さんにとって「頼もしいパートナー」である▼苦手な漢字の書き取りや計算もスマホを使えばほぼ解決。弱点をICT(情報通信技術)で補うことで農福連携の可能性は広がる。ただ、それ以上に「彼がいることでみんなが幸せになれる」と母の英莉那さん(49)▼入所者19人が殺害された相模原障害者施設殺傷事件から2年が過ぎ、ネット上ではなお「障害者はいらない」という声も。偏見は根強い。障害をマイナスではなくプラスに捉えようと障害者を「チャレンジド」と呼ぶのは、重度の脳障害の娘を授かり社会福祉法人プロップ・ステーションを立ち上げた竹中ナミさん▼「挑戦」というチャンスを与えられた人を意味し、ICTを駆使することで「弱者を、弱者で無くしていくプロセスを福祉と呼びたい」と竹中さん。俊太朗さんもまた、チャレンジドである。

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