毎日新聞 2012年6月12日より転載

被災地の障害者をパティシエに養成

16日から仙台

東日本大震災被災地の障害者をスイーツの世界で活躍できる職人に育てようと、神戸市の一流パティシエ(菓子職人)らがプロの技を無償で伝授する講習会「スウィーツ・コンソーシアム」が16日、仙台市で始まる。受講料無料で11月まで月1回開催。講師には障害のある子を持つ父親もおり、「被災地の障害者の自立につなげたい」と意気込んでいる。

【桜井由紀治、写真も】

神戸のプロが技伝授


被災地の障害者に洋菓子作りを指導する八木淳司さん=神戸市中央区で

講習会は、社会福祉法人「プロップ・ステーション」(神戸市)と日清製粉(東京都)が08年から毎年、神戸市、東京都などで開いてきた。今回は仙台市内の6作業所から、22〜43歳の知的・精神障害者13人が受講する。

講師は、製菓会社「モロゾフ」(神戸市)のテクニカル・ディレクターで、オーストリア政府の認定資格「製菓マイスター」を持つ八木淳司さん(60)や洋菓子店のシェフら一線で活躍するプロ。八木さんの三男悠(ゆうき)さん(16)は軽度の知的障害がある。八木さんは、障害者が作業所で作るお菓子の単調な味が気になっていたと言い、「障害者だからではなく、おいしいから売れる洋菓子を作れる人材を育てたい」と話す。

講習会に利用者2人が参加する知的障害者通所施設「まどか荒浜」は、和菓子などを作っていた仙台市若林区の施設が震災で全壊。作業所の43人は避難して助かったが、避難先を知らせる張り紙をしようと戻った職員1人が津波の犠牲になった。

同市太白区の社会福祉法人の建物を間借りして活動を再開しており、施設長の中村正利さん(79)は「学んだ技術で新商品を開発し、再出発の糧にしたい」と期待する。

会場は津波で全壊し5月に再建した日清製粉関連会社「東北石川食料」の新社屋(同市若林区)。プロップ・ステーションの竹中ナミ理事長は「チャレンジド(障害者)がおいしいお菓子を届ける人になり、本人も周りの人も元気になってほしい」と話している。

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