読売Life 兵庫版 2011年11月1日発行より転載
ステキ かわい
ゆっくり仕立てのキュート雑貨
「買う時はいつもチャリティー気分」なんて、もう言わせない。小規模作業所で作られるイマドキの自主製品は、自然と欲しくなるスグレモノが主流です。
山南紀子
※ さをり織りとレース使いのカメラストラップ
作業所メードのさをり織りを部分使い。色合いがポイント
※ ビスケットみたいな手染め本革のネーム&パスホルダー
染料を重ねてできる縁の"焦げ目"をチャレンジドの手で
愛らしさに一目ぼれ
▲就労支援施設に併設された店「shop小春日和」。欲しいもの、いっぱい!
神戸の須磨寺駅近くで、ナチュラルテイストな雑貨店を見つけた。
刺し子やさをり織りの布小物を中心に、バッグ、アクセサリー、置き物など、温もりあるハンドメードがいっぱい。ディスプレーや封シールのロゴもセンスがいい。「プレゼントにもいいな」と、刺し子のポーチを衝動買いしてしまった。
乙女心をくすぐる同店「shop小春日和(こはるびより)」は、実はNPO法人「萌友(ほうゆう)−for you」が運営する就労支援施設。胸キュンの愛らしいアイテムの多くは、障害を持つ人が作った自主製品(授産品)だ。
所 神戸市須磨区須磨
本町1−3−22
TEL 078−7332−6225
欲しくなる物を作る
▲萌友の作業風景。"職人の目"で製作に取り組む
授産品と言えば、素朴で温かい手作り感が身上。しかし一方で、どこかあか抜けない印象が……というのは、今や少数派。近年はトレンドを取り入れたイイ感じの商品が増えている。萌友オリジナルの刺し子グッズだって、普通にかわいい。
「お客さんが喜んでくれることが皆の励み。『欲しい』と思ってもらえる商品を作らなければ」と、「萌友」代表の東條むつみさん。全国の手作り市やクラフトフェアに出向くことが多く、「うちの店に置きたい」と一般の雑貨店やギャラリーからの引き合いもあるという。
プロの作家と肩を並べて自主製品が評価されているのだ。
TEL 078−733−3131
大手企業も注目
▲フェリシモのカタログ。「アトリエメイド」シリーズにもチャレンジドが参加している
丁寧な手仕事の妙味に、企業も注目。障害を持つ人と消費者を結ぶパイプ役にもなっている。
通販大手のフェリシモ(本社・神戸市)では、「チャレンジド・クリエイティブ・プロジェクト」(CCP)を展開。手作り感ある商品製作の一工程を、「チャレンジド」(障害を持つ人)が担っている。
「単なる支援ではありません。一緒に商品を作っているんです」と話すのは、同社で商品企画に携わっている永冨恭子さん。製品素材となる本革の染色、さをり織りの製織など、小規模作業所で施される手仕事が「商品の付加価値を高めてくれる」と表情を緩める。
同社にとってチャレンジドは、ビジネスパートナー。規格基準や検品も他製品と同様に厳しい。「でも、『無理かも』と思っていた作業が出来るようになる達成率は、驚くほど高い」と永冨さん。
企業との協働で、"出来ること"の幅が広がり、仕事に自信がつく−−。かわいいアイテムが、自然とチャレンジドの幸せにつながるなんて、何だかうれしい。
フリーダイアル 0120−055−820
http://www.felissimo.co.jp/
「ステキ」をおあつらえ
記者のようなぶきっちょには、手芸品を自分好みに仕立ててくれる作業所が頼もしい。尼崎市にある、店舗を兼ねた小規模作業所「こもれび」もその一つだ。
人気があるのは、ぬいぐるみや袋物の注文製作。スタッフの坂井悠(ゆう)子さんによると、布持参で縫製だけ頼まれることもあると言う。
ならば私も!と、記者はブックカバーをオーダー。
まず、作れる品かどうかを相談し、「完成までに少し日数がかかる」ということを心得ておく。ゆっくり丁寧に作ってくれるから。商品見本がシブイ感じで気に入ったので、「同じデザインで、デニム遣いのツートンで。落ち着いた柄にしてください」。
数日後、完成した商品とご対面。「希望通りです。ありがとう!」「こちらこそ」。お互いに笑顔になれるってステキだな。
「いいな」と思って買ったものが自主製品だと気付いた時、なぜかちょっぴりいい気分♪ そんな商品にたくさん出合えるといいね。
▲販売スペースの向こうは作業所
▲一針一針丁寧に。皆さん、記者より器用です
▲記者が注文したブックカバー。9月号の読者プレゼントはこれでした
所 尼崎市長洲本通2-2-1
TEL 06−6482−6801
PICK UP KEY WORD
「チャレンジド」
英語で「障害を持つ人」を表す新語。「The challenged(神から挑戦する機会を与えられた人)」を語源にした言葉だ。
障害を持つ人の自立を支援する社会福祉法人プロップ・ステーション(本部・神戸市)は、1995年から「チャレンジド」という呼称を提唱。この言葉には、代表を務める竹中ナミさんの「障害を持つゆえに体験する様々な事象を自分自身のため、あるいは社会のためポジティブに生かして行こう」という思いが込められている。
フェリシモのCCPも、実はプロップ・ステーションとの共同事業
http://www.prop.or.jp/
日本にも定着しつつある「チャレンジド」。語源もしっかり覚えとこ!