人と国土21 2011年3月号より転載

ひと・こくど つれ づれ

ユニバーサル社会の実現を目指して

竹中 ナミ

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プロフィール
竹中 ナミ(たけなか なみ)

社会福祉法人プロップ・ステーション 理事長
重症心身障害の長女を授かったことから、独学で障害児医療・福祉・教育を学ぶ。1991年草の根のグループとしてプロップ・ステーションを発足、98年社会福祉法人格を取得、理事長に就任。ICTを駆使してチャレンジド(障害を持つ人の可能性に着目した、新しい米語)の自立と社会参画、とりわけ就労の促進を支援する活動を続けている。「チャレンジドを納税者にできる日本」をスローガンに、95年より毎年チャレンジド・ジャパン・フォーラム(CJF)国際会議を主宰。内閣官房雇用戦略対話委員、国土交通省「自律移動支援プロジェクト」スーパーバイザー、「モビリティサポート有識者委員会」委員などを歴任。2009年春、米国大使館より「勇気ある日本女性賞」を授与さる。著書「プロップ・ステーションの挑戦」(筑摩書房等)。
ニックネーム「ナミねぇ」で親しまれている超元気な関西人。

 

 プロップ・ステーションは、20年前から「ICTを駆使して、すべての人が持てる力を発揮し支え合う、ユニバーサル社会を実現しよう!」という非営利活動を続けています。

 超少子高齢化が世界一のスピードで進む日本の国において、一人でも多くの人が「社会を支える意志を持つこと」が元気な日本を維持するために最も重要であり、そのためには「社会を支える一人一人の意志を具現化できる社会システム」が必要やと思いながら、国民の一人としてプロップの活動を続けてきました。

 「すべての人の力を生かす」というのは、口で言うのは簡単やけど、いざ実現するのはなかなか大変なことです。
  たとえば今、元気で働いてるあなたが、事故や難病でベッドの上の人になった時、それでも「働き手」であり続けたり「良き消費者」であり続けたりすることを想像すると、その困難さが理解できるでしょう。

 プロップは20年前に「すでにそのような状態になった人たち」と、私のように「そのような家族(今年38歳になる重症心身障害の娘)」のいる者たちが、力を合わせて立ち上げたグループです。

 介護を受けながらも働ける仕組み、ベッドの上からも友人や社会と繋がれる仕組み、障害を持っても誇りを失わずに生きられる仕組み、…もしそんな社会の仕組みが実現したら、少子高齢社会も怖くない!! それを実現するツールは、ICTしかないんちゃうか!? というのがプロップ発足の原点でした。

 プロップ活動のかたわら10年以上にわたり、私は国土交通行政に関わり「国土のユニバーサル化」について提言を続けてきました。

 道路、建物、交通機関などのバリアフリーという「ハード整備」は国交省の得意な分野やけど、ソフトの部分が充実しなければ「ユニバーサル社会」は実現しません。

 どこにバリアフリーな建物があり、どのようにしてそこに行くためのバリアフリーな移動が確保できるのか、災害時に移動困難な家族と一緒に安全に避難する経路はあるのか…ハード整備が完璧でなくても、まずは的確な情報を得ることが求められます。

 それを叶えることが、ユニバーサル化の「はじめの一歩」です。

 見えない人には音声で、聞こえない人には文字や図で、日本語が分からない人には多国籍の言語で…すべての人が、心地良くそして安全に日本で生活したり、働いたり、観光で訪れたりできる国になることが、日本の元気に繋がるんやということを、私は国交省の皆さんと一緒に考え続けてきました。

 そうして今、まだ不十分かもしれへんけど、道は拓けつつあります。

 国土交通行政に関わる多くの人たちが「ユニバーサル社会」の実現を目指して、動き始めています。

 少子高齢社会のただ中にいる一人一人の国民も、明日の自分自身のために、行動を起こさなあきません。

 「誰かが、やってくれる」ではなく、私が、ボクが「ユニバーサルな日本にしよう」と思い、行動すること。

 あなたの友や、家族や、あなた自身が、車いす使用者になっても、認知症になっても怖くない日本にしましょう。

 国土は、国民の意思でユニバーサルにできることを、忘れないで下さい!!

 

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