毎日新聞 2011年2月19日より転載
時代を駆ける
母は安心して死にたい
竹中ナミ [9]
たけなか・なみ 社会福祉法人理事長。ITを活用しチャレンジドの就労を支援。62歳(写真は昨年11月、麻紀さん<左>と笑い合う竹中さん=本人提供)
公共放送に民間で活動している自分たちの声が届けばと思い、昨年からNHK経営委員を務めています。会長選でごたごたがあったと言われますが、視聴者の目線でNHKがどうあるべきかを真剣に考えた結果です。
NHKの放送技術研究所を見学したんですが、リアルタイムの字幕や音声放送など、世界に冠たる放送技術を持っているんだと知りました。公共放送が率先してユニバーサル化を推し進めてくれるように、委員の立場から提言していきます。
《仕事以外でも月1回のペースでバンドライブを続ける》
「ナミねぇBAND」としてプロのミュージシャンをバックに歌っています。父の十三回忌の法事でもライブをやったんですよ。私の歌声に(長女の)麻紀が笑顔を見せてくれるのがうれしくて、歌にはまったんです。
《重度の心身障害がある麻紀さんは38歳の今も少しずつ成長している》
昔は体を触るとすぐに嫌がって叫んでたけど、小学校くらいで自分から体を寄せてくるようになった。おんぶの時、足を腰に巻き付けるようになったのが養護学校の高等部を卒業する頃で、肩に手を回せるようになったのが30歳になってから。最近は手を握り返してくれるようにもなりました。ゆっくりなんだけど彼女なりの成長を遂げている。これがどんなにいとおしいかは言葉にできません。
《我が子は宝物であり、恩師でもある》
麻紀のおかげで、社会っていろんなスピードで生きる人でできてるんやと気づくことができた。(障害者支援の)「プロップ・ステーション」の活動を通じてたくさんの人と出会い、好きな歌までやらせてもらって、ほんまにラッキーです。
《これからも母として社会を変えていく》
私のやってることは、要は、娘を残して安心して死にたいというオカンのわがままです。チャレンジド(障害者)が働けるようになって、娘を支えてくれる人が10人でも100人でも増やせたらオッケー。そういう社会は、たくさんの人が誇りを持てるんだろうなと思うんです。=竹中さんの項おわり
2011・2・19
聞き手・近藤諭/22日から、パナソニック元野球部監督の鍛治舎巧さんです