産経新聞 2010年9月15日夕刊より

ナミねぇの写真

私の元気充電術

社会福祉法人プロップ・ステーション 理事長 竹中ナミさん

歌で広がる新たな輪

音楽と愛娘

 

 

ナミねぇの写真
昨年春、アメリカ大使館から授与された「勇気ある日本女性賞」の記念パーティーで歌を披露した竹中さん

 「娘の機嫌が悪くなると歌謡曲を唄ってあげていた。歌で気持ちが安らぐみたい。音楽って言葉以上にすごいパワーがある」

 ナミねぇ″こと、竹中ナミさん(61)には、重度の障害を持つ愛娘がいる。娘が幼い頃、将来を思い、障害児医療や福祉を学んだ。

 平成3年、神戸に障害者の自立支援組織「プロップ・ステーション」を発足させ、パソコンセミナーを開催、IT(情報技術)を駆使した就労支援活動を続けてきた。

 ここでは障害者を「チャレンジド」と呼ぶ。チャレンジドを「福祉で保護される立場から納税者」に。誰もが誇りを持てる社会を作るのが目標だ。

 「20年前からすると社会の意識は大きく変わってきた。チャレンジドも、働きたいという思いや夢を語れる時代になった」と竹中さんは話す。

 自由奔放でざっくばらんな性格。政財界にも顔が広く、数々の賞も受賞した。昨年はアメリカ大使館より「勇気ある日本女性賞」を授与。その受賞記念パーティーで披露したのが、自作の詩と歌声だ。

 「それまでは単なるカラオケおばさん。プロのバンドの演奏で唄いたいと冗談半分でいったことが現実になった。しゃべることが本職やけど、歌でも自分の思いを伝えていきたい」

 以来、プロップの活動に共感した仲間とナミねぇバンドを結成。神戸・岡本を活動拠点に、東京でもライブを開催した。来月5日には三宮の「太陽と虎」でジョイントライブを行う予定だ。

 「ライブをすると元気が出る」と竹中さん。娘のために歌ってきた歌で今、新たな輪が広がり始めている。

 プロップでも新しいプロジェクトが進行。一流パティシエがチャレンジドに菓子作りを指導する講習会を2年前から開催。8月には総務省の実証実験として神戸、東京など4会場をブロードバンド回線で結ぶ遠隔講習会を実施した。実用化すればベッドの上からでも技術習得が可能に。

 「学ぶことから働くことまでICT(情報コミュニケーション技術)が不可能を可能にしてくれる」と話している。

(ライター 橋長初代)

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