「神戸新聞」7月7日朝刊より転載
参院選インタビュー 「選択を前に」
社会支える意識持って
社会福祉法人理事長 竹中ナミさん
(撮影・立川洋一郎)
政権交代から9ヵ月余り。菅直人首相も就任したばかりで、民主党がどこへ進もうとしているのか、まだ見えない。
消費税の増税にしても最初に自民が10%と言い、民主は党派を超えて協議しようと言っている。主張が対立する争点となっているようには思えない。
少子高齢化の日本の将来を考えると、消費税に触れずに社会保障や国民生活を向上させることはできない。
消費税率の引き上げは仕方がないという人が増えた。経済や財政が「このままではやぱいぞ」という雰囲気が広がっており、消費税導入時や税率が3%から5%に上がったときに比べ、衝撃は小さい。ただ、なぜ菅首相はこの時期に言い出したのか。戸惑いを感じる。
社会保障を充実させるにはお金がかかる。政府の財政制度等審議会委員を10年近くやって、公共事業よりも社会保障がいかに予算を必要とするのかがよく分かった。超高齢社会を迎え、社会保障の財源をしっかり確保しておかなければ、今よりもひどい状況になるんやろうなと思う。
わたしたちの「プロップ・ステーション」は「チャレンジド(障害者)を納税者に」をスローガンに取り組んできた。誰もが納税者になる社会を構築し、働いて収入を得て、きちんと税金を納める循環をつくらないと社会保障は安定しない。
重い障害のある人は福祉や社会保障の対象だが、社会を支える力はいっぱいある。わたしは小泉政権の時代からそう訴え続けてきた。新しい社会保障制度を生み出してもらうようにするのが、わたしたちの仕事であり、チャレンジドの願いだ。
選挙では、候補者が有権者に名前を書いてもらいやすいような施策を訴え、ばらまきになってしまう。しかし、社会を元気にするのは金の力ではなく、人の力だ。一人でも多くの人が自分が社会の支え手になろうという思いを持ち、そのパワーを発揮できるシステムがあれば、これ以上強い社会保障はない。
有権者の責任は重い。ある事柄を託し、1票を入れるのであれば、議員がそれをやり遂げるまで見届ける必要がある。単に投票するだけなら、有権者であっても、主権者ではない。
(聞き手・中部剛)
たけなか・なみ 1948年、神戸市生まれ。重症心身障害の長女を育てながら独学で障害児医療、福祉などを学び、1991年に非営利組織「プロップ・ステーション」を設立。政府の雇用戦略対話委員などを務める。神戸市在住。