New Media 2010年6月号より転載

パナソニックがTBSドラマシアター『ハンチョウ』で企業宣伝60秒CMを字幕放送

日本初!テレビCM字幕放送を実施

TBSの名番組枠であるパナソニックドラマシアター。『水戸黄門』シリーズが放送されない期間に登場する刑事ドラマ『ハンチョウ』。そのシリーズ2の最終回スペシャルとなった3月22日の20時40分、パナソニックの企業宣伝CMに字幕が付いた。CMスタートと同時に画面に「字幕入りCM」のメッセージが字幕表示され、60秒CMに初めて字幕が付き、JNN系列28局で全国放送された。2005年4月にCMの搬入基準を定めた「サイマル放送時のテレビCM素材搬入基準」では「字幕放送に関しては、CMでは取り扱えません」と明記されていた問題を、弊誌と総務省情報通信審議会委員である竹中ナミ・社会福祉法人プロップ・ステーション理事長が指摘してきたが、パナソニックの英断で一つ前進した。(関連記事52頁〜)
(文:吉井 勇・本誌編集長)

 

これが放送されたCM字幕(一部) (C)パナソニック株式会社

放送されたCM字幕の写真

原口一博総務大臣と竹中ナミの写真
CM字幕放送をワンセグ録画で確認する原口一博総務大臣(左)と竹中ナミ=ナミねぇ(右)

パナソニック実施
アンケートに
寄せられた声から

CMを見るのが楽しみです。
家族みんなと一緒に、
同じように見られてうれしい。

ナミねぇ 大臣との対談(弊誌2月号掲載)が一つのきっかけでした。総務省の本気度が伝わったのではないでしょうか。
原口大臣 CM字幕問題では総務省も本気になりましたが、関係された皆さんが本気で取り組んでいただいたからだと思います。私たちの思いもよらないような苦労もあったことでしょう。まずは一歩、ご苦労さまでした。これからが大事です。

 

パナソニック 株式会社

寄せられた345通のアンケート回答に驚く

Umetani 楳谷秀喜 Hideki     アドメディアセンター所長

楳谷秀喜の写真

 3月初め、TBSから「無理すればできる」という回答をいただいた。22日の放送に間に合わせられるか心配でしたが、PC上でCM字幕のシミュレーションをしていたこともあり、思い切って取り組むことにしました。制作時間は1週間ほどでしたが、社内の社会文化グループの紹介で東京の聴覚障がい者情報提供施設に字幕表現についてアドバイスも得ながら一気に取り組みました。

 CMと番組を一体化し、番組本編として放送する方法でした。本来CMは、CMバング設備から送出するものですが、番組サーバーから直接送出しました。そのため単発のトライアルで、CMも1種類、1回のみの実施となりました。
  聴覚障がい者の関係団体を通してアンケートをお願いしたところ、4月12日現在で345通の回答がありました。反響の多さにまず驚きましたが、回答から熱い気持ちが伝わってくる内容で、本当に実施してよかったと考えています。

 今後、放送局側の設備が対応できるようになれば、CM字幕放送の実現に向け、今回の経験を生かして取り組んでいきます。

 

株式会社 TBSテレビ

実施のための条件をパナソニックさんと協力してクリア

Maeda 前田理恵 Rie       営業局 CM 部長

前田理恵の写真

 年明けから何度も、パナソニックさんからCM字幕のトライアルができないかという要望をいただいていました。一方、日本民間放送連盟として前向きに取り組むべく字幕CMワーキンググループを立ち上げ、各局がトライアルしながらスタンダードを整備していこうという申し合わせがありました。

 そうした動きを受け止め、現状ではCMバングからの送出はできないが、番組サーバーからならJNN系列28局で放送できると考え、パナソニックさんと準備に取り組みました。今回の実験でわかった課題を民放全体で共有し、CM字幕放送の安定した放送を目指していきます。

 

総務省情報通信審議会委員、社会福祉法人プロップ・ステーション

字幕が付けられない参議院選挙の政見放送が問題

竹中ナミ=ナミねぇ         理事長

竹中ナミの写真

 聴覚に障がいのある人たちが「CMはわからへんから見てへん」と言うので、もったいないなと考えていました。理由は簡単です。日本に約1,000万人といわれる聴覚に障がいのある方にCMで伝える商品情報が届いていないのです。何千万円も予算をかけたCMなのにもったいない話です。

 字幕放送の先進国であるアメリカでは、にぎわうスポーツバーでは字幕表示は必須ですし、公共施設で字幕表示が義務付けられている州もあるそうです。日本は高齢社会ですから、地デジ放送サービスとして字幕が付いているのは当たり前やと思っているんです。

 字幕に関して、もう一つ重要な問題があります。参議院選挙の政見放送で字幕放送ができないのです。現行制度では、衆議院小選挙区選挙では候補者届出政党が自ら録画したビデオを放送する「持ち込みビデオ方式」ですから政党側で字幕を付与できますが、参議院はこの持ち込みビデオ方式が認められておらず、付与することができないのです。これも重要な課題です。

 

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