朝日新聞 2009年8月2日 より転載

政権選択 ひょうご 09夏・総選挙 「私はこう見る 年金・消費税」

社会福祉法人理事長 竹中ナミさん

社会保障、財源考えて

 障害者にコンピューターの技術を習得してもらい、就労と自立を支援する社会福祉法人を立ち上げて18年になります。設立当初、重度の障害を抱えた娘と2人暮らしでした。娘には多額の税金が使われています。離婚したこともあり、セーフティーネットとしての税の大切さを思い知りました。同時に「このまま社会は娘を支え続けてくれるのか」と危機感も抱きました。

 だから今回の総選挙を前に、政治家が消費税率の引き上げに踏み込む発言を恐れなくなったことは歓迎しています。超高齢化社会はすぐそこに迫り、年金財政も破綻寸前。何をするために、いつ、どれだけ上げる必要があるのかという議論を避けることはできません。「無駄を省く」といったような言葉で逃げて欲しくない。

 08年に私が参加した政府の諮問機関「社会保障国民会議」では、基礎年金の税方式への変更や医療、少子化対策などの強化、そのための消費税上げ幅も試算しました。スウェーデンでは25%という高率の「付加価値税」で社会保障を広範囲にまかなう社会的合意ができている。どんな福祉が必要で、どれだけ財源がいるのかデータが示され、国民が納得しているからでしょう。日本ではまだ、そこまでの議論になっていません。

 社会保障の財源が弱くなると、国家はどんどん弱者を切り捨てていきます。二大政党の対立ばかりが注目されがちですが、候補者が社会保障の財源をきちんと考える人かどうか、1票を投じる前に見極めたいものです。

(聞き手・吉野太一郎)

 神戸市出身。60歳。91年に「プロップ・ステーション」を立ち上げ、98年に社会福祉法人化した。政府の諮問機関「成長力底上げ戦略推進円卓会議」のメンバーも務めた。

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