パンニュース 2009年7月25日より転載

「神戸スウィーツ・コンソーシアムin東京」

パティシエ目指す障害者支援

日清製粉の会場で4人のプロが講習

 社会福祉法人・プロップ・ステーション(竹中ナミ理事長)は、パティシエを目指す障害者(チャレンジド)を支援するプロジェクト「神戸スウィーツ・コンソーシアムin東京」を開講した。昨年の神戸会場に続く2回目のパティシエ養成スクールで、6月20日〜12月5日までの計6回、日清製粉小網町ビルで行う。

 今回は昨年講師を務めた八木淳司氏(モロゾフ)に加え、永井紀之氏(ノリエット)、西川功晃氏(ブーランジェリーコム・シノワ)、野澤孝彦氏(コンディトライノイエス)が指導した。なおチャレンジドとは、米国などで用いられている障害者に対する新しい呼称。挑戦する使命を与えられた人の意味がある。協力は日清製粉、日東商会、モロゾフ、オリエンタル酵母工業、大山ハム、石川、ADEKA、幸南食糧、タカナシ販売、月島食品工業、平瀬フーズ、フレッシュ・フード・サービス、丸紅、三井製糖など。後援は農水省、厚労省、兵庫県、神戸市、東京都、日本セルプセンター、関東地区就労センター協議会。

修了生の写真
左から西川、野澤、八木、永井、竹中、山内、川口の各氏

 6月20日は日清製粉小網町ビル加工技術センターに受講者および関係者約70人が参加する中、主催者の竹中宏晃事務局長の進行で、竹中ナミ理事長が「このプロジェクトの趣旨に賛同する4人の超一流パティシエ、ブーランジェに講師をお引き受けいただき、神戸に続き東京でも作業所や授産施設で働くチャレンジドパティシエの自立を支援するプロジェクトをスタートする。一緒に頑張りましょう」とあいさつ、日清製粉・佐々木明久社長が「ひとつの目的のもとに、さまざまな人が領域を超えて集まった。夢の実現に向けて力を合わせていきたい」、日東商会・川口淳太郎社長が「私どもの会社が原材料を作業所へ運ぶ業務をする中で、チャレンジドの皆さんが作る菓子やパンのクオリティをもっと上げられないか、という思いを持つようになった」とそれぞれ述べた。

スウィーツの写真
あいさつする日清製粉・佐々木明久社長

 このあと来賓の農水省・石破大臣(ビデオメッセージ)、農水省・坂井眞樹大臣官房参事官、厚労省・木倉敬之障害保健福祉部長、東京都・松井多美雄福祉保健局総務部長(代読)、兵庫県・井戸敏三知事(代読)、神戸市・矢田立郎市長(代読)、日本セルプセンター・清島眞常務理事らがあいさつした。

 この後4人の講師および今回の受講生8人(他に特別受講生として第1期修了生で、神戸で「カフェポテト」を運営する内海友人氏)が紹介された。受講生は約40人の希望者の中から選ばれたという。

スウィーツの写真
「マドレーヌ」の実習

 当日の第1回プログラムは「マドレーヌ(八木講師)」。「単なる配合、工程ではなく、材料の基本、備品、機器のこともお話しする。また本人だけでなく周囲で支えている職員さんにも覚えてもらう。計6回の実習テーマにはポピュラーな生ケーキ、焼菓子、パンを選んでいるため、すでに経験している方もいると思うが、こういうこともあるのかという発見をしてもらえれば」と話し、約2時間にわたる実習を行った。

 当日の「マドレーヌ」の配合・工程は次のとおり。
  【配合 グラム】
  冷凍全卵(キユーピーたまご)………………………180
  冷凍卵黄…20(キユーピーたまご)…………………60
  グラニュー糖(三井製糖)……………………………190
  トレハロース(林原商事)……………………………40
  ハローデックス(林原商事)…………………………30
  アカシアはちみつ(クインビーガーデン)…………60
  塩…………………………………………………………2
  中力粉(ミモザ)………………………………………155
  米粉(幸南食糧)………………………………………20
  ベーキングパウダー……………………………………2
  無塩バター………………………………………………260
  バニラビーンズ4分の1本
  レモン皮少々

 【工程】
(1) 常温に戻した冷凍全卵、冷凍卵黄20をボウルに入れて、グラニュー糖、トレハロース、ハローデックス、はちみつ、塩、バニラビーンズ、レモンの皮を加える
(2) (1)に中力粉、米粉、ベーキングパウダーを合わせてふるいにかけて加え、よく練る
(3) あらかじめバターを溶かしておき(2)に合わせて冷蔵庫でねかせる(約30分)
(4) を型(バターを塗り粉を振りかけた)に流して焼成上火180度C下火150度C約15分。

 開講に先だち行われた記者会見には、竹中ナミ理事長、八木淳司、永井紀之、西川功晃、野澤孝彦の4人の講師陣、協力会社の日東商会川口淳太郎社長、日清製粉製粉第1営業部山田貴夫部長が出席して、それぞれあいさつした後、記者団の質問に答えた。この中で、竹中理事長はプロジェクトの概要について、「行政と連携し各方面の協力を得て、社会で活躍できる人を育てることが大きな目的。受講生の基準は、ある程度お菓子作りの基礎を備え、プロのパティシエになりたいという意欲のある人」と述べ、修了した後もパティシエとして開業するための支援を行っていくという。神戸、東京に続き他の地域でもこのプロジェクトを行うことを目指している、と今後の展開を示唆した。

スウィーツの写真
記者会見であいさつする竹中理事長

 昨年の第1回目を振り返って八木講師は「受講生はお菓子を勉強したくても講習会への参加を断られるケースもあり、それだけに想像以上に意欲的に取り組んでいた。作業所に戻っても、率先して他の人に教えているようだ。また作業所の職員にも勇気を与えたと思っている」。

 さらに問題点として「作業所の場合、設備が不足していることや、パティシエを目指すうえで必要な表示関係など副次的な知識がないこと、あるいは量産しなければ利益は出てこないといった経済性の問題など、全体のシステムが構築されていないこと」などを挙げた。

スウィーツの写真
左上から 永井氏(ノリエット)、八木氏(モロゾフ)、竹中理事長、野澤氏(ノイエス)、西川氏(コム・シノワ)、川口氏(日東商会)、山田氏(日清製粉)

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