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毎日新聞 2009年6月28日より転載

授産所からパティシエを

障害者にプロが手ほどき

 菓子作りのプロを目指す障害者に一流パティシエ(菓子職人)が作り方を直接伝える「神戸スウィーツ・コンソーシアムin東京」が今月、東京都中央区で開かれた。一線で活躍するプロの技に接し、参加者は名職人への夢を膨らませた。

【清水優子、写真も】


永井さん(左)からマドレーヌ作りの手ほどきを受ける参加者=東京都中央区の日清製粉加工技術センターで

 スイーツの世界で活躍する障害者を育てようと、社会福祉法人プロップ・ステーション(神戸市)と製粉会社「日清製粉」、製菓・製パン原材料卸会社「日東商会」が主催した。昨年神戸市で初開催し、今回で2回目。

 同法人理事長の竹中ナミさん(60)の呼びかけに、オーストリア政府の認定資格「製菓マイスター」を外国人で初めて受け、洋菓子メーカー「モロゾフ」のテクニカルディレクターを務める八木淳司さん(57)らパティシエ4人がボランティアで協力した。参加者は書類選考で選ばれた23〜39歳の知的、精神障害者と作業所職員ら計9人。みな授産施設などで洋菓子やパン作りに携わっている。

 最初に、八木さんがマドレーヌのオリジナルレシピを基に作り方を実演。「生地はツヤが出るまでしっかり混ぜる」「材料の配合分量は正確に」。焼き上がりまで分かりやすく説明を受けた後、参加者らが挑戦した。


八木さん(右)の説明を聞く参加者

 川崎市宮前区の小規模作業所でパン作りをする菊池由香さん(27)は「説明が分かりやすかった。アドバイスを参考に腕前を上げます」。神戸市の喫茶店でケーキを作る内海友人(ともひと)さん(34)は昨年も参加し、前回学んだ菓子を商品化して収益を上げた。「将来は自分の喫茶店を持ちたい」と夢を語った。

 指導にあたった八木さんも三男(13)に軽い知的障害があり、授産施設などの菓子作りに関心があった。「障害者は学ぶ意欲はあっても、専門学校に入学できず、プロに学ぶ機会もない。修了生は学んだ技術をそれぞれの職場で仲間にも伝えてほしい」。11歳の長女がダウン症というフランス菓子店シェフ、永井紀之さん(48)も「技だけでなく、仕事への姿勢もしっかり伝えたい」と話した。

 イベントを企画した竹中さんは24歳の時、重度の脳障害をもつ長女(36)を授かり、91年にプロップ・ステーションを設立、自立と就労を目指してきた。竹中さんは「超一流の技に触れ、本当においしい一流の菓子作りを目指す職人を育てたい」と意気込む。

 参加者は12月まで計6回、ムースやパンなどの作り方を学ぶ。

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