ITpro サイト 2009年3月24日より転載
地デジの字幕制作のプロを育成します
--竹中ナミ氏講演
第6回都道府県CIOフォーラム春季会合より
竹中ナミ プロップ・ステーション理事長
プロップ・ステーションは、ICTを駆使してユニバーサル社会の実現を目指す活動を展開している社会福祉法人だ。1991年に草の根の組織として理事長の竹中ナミ氏が設立した。2009年1月に都内で開催された「都道府県CIOフォーラム春季会合」における竹中氏の基調講演の概要をお届けする。
「チャレンジドを納税者にできる日本に!」という標語が、プロップ・ステーションにはあります。「チャレンジド」とは、米国で生まれた言葉で、障害を持つ人のことです。「挑戦する使命や課題を与えられた」という意味で、私はとても共感を覚えました。障害を持つ人を「弱者」「福祉の対象」としてマイナスの部分から見てきた時代から、大きな転換が必要なんだというメッセージです。
プロップ・ステーションでは様々な地域や国、企業などから仕事をいただいて、それをチャレンジドの皆さんの力に応じて分担しています。ICTは単なる道具かもしれませんが、それが人間にとってどれだけすごい道具であるのかを、彼ら、彼女らを通じて日々実感しています。
これまでの活動の中で、プロップ・ステーションは本拠地の神戸だけでなく、2008年10月から東京でもセミナーをスタートしました。
一つは地デジ(地上デジタル放送)の字幕制作者を目指すセミナーです。日本では、字幕放送というと聴覚障害者のための福祉施策と思われがちですが、米国では広く一般に普及しており、字幕制作はビジネスになっています。スポーツバーなどの施設や、仕事上音が出せない場所、さらには家庭でも、例えば食器を洗っている音でテレビの音が聞こえづらい時など、字幕放送は日常的に使われています。字幕の制作は、特定のソフトが操作できればベッドの上にいてもできます。この分野のプロを育てていきたいと思っています。
もう一つは日本ウェブ協会によるWebサイト制作の講座です。これは趣味で簡単なものを作るような教室ではなく、最新のWeb技術を使い、軽くて使いやすくてユニバーサルなサイトを作る技術を学び、プロのWeb制作者になっていただくための高度なセミナーとなっています。さらに、IT企業と連携して遠隔教育システムの開発をしており、1年後くらいには全国どこでもインターネットがあればプロを目指す勉強できるようになると考えています。
ICTは、チャレンジドに限らず、地域の中小企業や住民の能力をいろいろな形で引き出し、勇気や力を与えることができます。自治体のCIOの皆様には、ICTというすごい道具を担当しているのだということを理解していただければと思います。
(構成:安藏 靖志=フリーライター 写真:佐藤 久) [2009/03/24]