朝日新聞 2月29日より転載

神戸の社会福祉法人などプロジェクト

障害者の自立へパティシエ“塾”

レシピ・実技・・・プロが伝授

 障害のある人をパティシエ(洋菓子職人)に育てようという試みが、この春、神戸市で始まる。身体、知的、精神障害者らの就労支援が目的で、社会福祉法人や製粉会社などが昨年11月、共同プロジェクト「神戸スウィーツ・コンソーシアム」を発足させた。パティシエの指導で実技を学んでもらい、作業所や障害者の開業を支援していく予定だ。

 コンソーシアムの事務局は、社会福祉法人「プロップ・ステーション」(同市東灘区・竹中ナミ理事長)が担う。「チヤレンジド(挑戦する使命を与えられた人)を納税者に」を合言葉に、92年からパソコン講習会などを通じて障害者の就労支援をしてきた。

 今回は同法人の呼びかけに、製粉最大手「日清製粉」(東京都)や製菓・製パン材料卸売り「日東商会」(大阪府東大阪市)などが応じた。現在、ほかにも約10社ほどの協力が得られる見込みだ。講習会の場所や、材料の提供を受けていく。バティシエの有志数人の協力のもと、レシピの伝授や実技指導をするという。

 プロジェクト開始当初は、受講生10〜20人ほどを見込んでいる。講習などの費用は、実費程度を想定。今後、具体的な日程や内容を決め、受講生を募る。

 神戸光の村授産学園(神戸市北区)の貴島英美子さん(22)は普段、販売用のクッキーを作っており、受講を希望している。「小さいころからお菓子づくりが好きだった。プロとしておいしいものをつくっていきたい」と話す。

 竹中さんは先月、将来の福祉や年金などのあり方について議論する社会保障国民会議のメンバーにも選ばれ、今後、提言をしていく。「可能性を引き出すのが福祉。一流のパティシ工に触れる機会をつくることで、『頑張ってつくったから』ではなくて、おいしいと思って買ってもらえるような商品づくりができるパティシエを育てたい」と話している。

 問い合わせは、プロップ・ステーション(078-845-2263)へ。

竹中ナミの写真
クッキーづくりに打ち込む貴島英美子さん(手前)ら神戸光の村授産学園の寮生=今月上旬、神戸市北区淡河町木津で

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