じんけん丹波 2008年2月発行より転載

ユニバーサル社会をめざして

社会福祉法人プロップ・ステーション
理事長 竹中 ナミ(ナミねぇ)

 「すべての人が持てる力を発揮し、支え合うユニバーサル社会の実現をめざそう!」というのがプロップ・ステーションの目標ですが、「ユニバーサル社会って、よう分からへん」というのが、多くの人の率直な気持ちやないでしょうか。実は「よく分からない」最大の理由は、日本は残念ながらユニバーサル社会をめざして来なかったことにあります。

 プロップは16年前から、チャレンジド(障害のある人)がパソコンやインターネットなどを駆使して、在宅で介護を受けながらも働ける社会を実現するために活動に続けてきましたが、私たちの考えは活動発足当時、社会全体からみると全く異端なものでした。たくさんの人から「重度障害者が働くって、なに言うてんの。そんな人は社会が優しく助けあげるべきで、働けなんて言うのは大間違いや!」と言われました。

 でもプロップでは「重い障害があって家族の介護を受けてるけど、働いて稼いで社会に貢献もしたいんや!」というチャレンジドが集い、それを実現する道筋を自分たちで開拓してきたのです。

 今では「障害者が働けない社会って、おかしいんちゃう」「作業所であんな低収入しか得られへんのは、どうやのん」といった言葉が日常的に交わされる時代になりました。私は時代がユニバーサル社会を求め、近づきつつあると実感しています。

 「自分が持てる力を発揮し、誰かから(あるいは社会から)期待される存在」というのは、生きる誇りに繋がることです。つまりユニバーサル社会というのは「どんな人の力も眠らさずに生かすことのできる社会」と同義語です。

 私は34年前、重症心身障害の長女を授かりました。娘は「生後3ヶ月未満の精神発達」という判定を受け、今もまだ私を「母親」とは認識できない状態です。でも彼女を授からなければ「元ワルで、非行少女のハシリと言われていた私」が、「プロップのナミねぇ」に育つことは考えられないわけですから、「私は娘のおかげで更生した!」といって過言ではありません。私にとって彼女は「かわいそうな存在」ではなく「誇らしい存在」です。

 彼女を通じて出会うことの出来た、たくさんのチャレンジドが、娘よりずっとずっと出来ることがあるのに、障害を理由に「働けない人」と決めつけられていることに、私は疑問を感じずにはいられませんでした。「どうしたら一緒に学べるか」「一緒に働けるか」という視点を持ち、そのシステムを作り上げることこそが、ユニバーサル社会構築の一歩や、と気づいたことが、私のプロップ活動の出発になっています。

 そして私の究極の目的は「一人でもたくさんの人が、誇りを持って社会を支える側に回れるシステムを創って、私自身は、娘を残して安心して死にたい!」ってことです。

 ユニバーサル社会の具体例は、たとえば学校にスロープを付けることはバリアフリーですが、そこでチャレンジドや高齢者が教師になれる、校長先生にも経営者にもなれるチャンスとシステムがある、というのがユニバーサル社会です。

 先進諸国では、15年前くらいからすでにこのような考え方で法律が整備されていますが、日本はまだ籍に就いたばかりです。でも私は「日本人はきっと、その気になったら、どこよりも優れたシステムを創造することができる!」と信じて、プロップの活動を続けています。

チャレンジドも高齢者も、全ての人が誇りを持って生きられるようになったらいいな!
あなたの街でも、ユニバーサル社会への一歩を踏み出してみませんか!?
プロップの活動の詳細は、公式サイトで公開していますので、ぜひ見てね!
http://www.prop.or.jp

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