ユニバーサルひょうご 2007 vol.7より転載

意見  私が考えるユニバーサル社会

雇用・就労とユニバーサル社会

[写真]竹中ナミ

社会福祉法人
プロップ・ステーション

理事長 竹中ナミ

 「すべての人が持てる力を発揮し、支え合うユニバーサル社会の実現をめざそう!」というのがプロップ・ステーションの目標ですが、「ユニバーサル社会って、よう分からへん」というのが、多くの人の率直な気持ちやないでしょうか。実は「よく分からない」最大の理由は、日本が残念ながらユニバーサル社会をめざして来なかったことにあります。

 プロップは16年前から、チャレンジド(障害のある人)がICTなどを駆使して、介護を受けながらも働ける社会を実現するために活動を続けてきましたが、私たちの考えは活動発足当時、社会全体から見ると全く異端なものでした。たくさんの人から「重度障害者が働くって、なに言うてんの。そんな人は社会が優しく助けてあげるべきで、働けなんて言うのは大間違いや!」と言われました。でもプロップには「重い障害があって家族の介護を受けてるけど、働いて稼いで社会に貢献もしたいんや!」というチャレンジドが集い、それを実現する道筋を自分たちで開拓してきました。

 今では「障害者が働けない社会って、おかしいんちゃう」「作業所であんな低収入しか得られへんのは、どうやのん」といった言葉が日常的に交わされる時代になりました。私は時代がユニバーサル社会を求め、近づきつつあることを実感しています。「自分が持てる力を発揮し、誰かから(あるいは社会から)期待される存在である」というのは、生きる誇りに繋がることです。つまりユニバーサル社会というのは「どんな人の力も眠らさずに生かすことのできる社会」と同義語です。

 私は34年前、重症心身障害の長女を授かりました。彼女はまだ私を「母親」とはきちんと認識できない状態ですが、でも彼女が私を「プロップのナミねぇ」に育て上げたことは間違いありません。私は娘が「稼げる」とは思っていませんが、たくさんのチャレンジドが、障害を理由に「働けない=税で福祉を受ける人」と位置づけられていることには疑問を感じすにはいられません。「どうしたら一緒に学べるか」「一緒に働けるか」という視点を持ち、そのシステムを作り上げることこそが、ユニバーサル社会構築の一歩です。例えば、学校にスロープを付けることはバリアフリーですが、そこでチャレンジドや高齢者が教師になれる、校長先生にも経営者にもなれるチャンスとシステムがある、というのがユニバーサル社会です。

 このたび、「どこよりもユニバーサルな空港」をめざして開港準備から私自身がかかわってきた「神戸空港」で、チャレンジド正規スタッフの募集が始まりました。おそらく接客を含む空港のフロント業務にチャレンジドが採用されるのは日本で初めてのことと思います。どんなお客様も快適に利用できるだけでなく、どんな障害があっても働ける神戸空港のユニバーサルな取り組みに、心からエールを送りたいと思うナミねぇです。

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