毎日新聞 2006年7月28日より転載

年年歳歳

すべての人に尊厳がある

竹中 ナミ

[写真]レーナ・マリアさんが「私は障害を持って生まれて良かったと思っています」と、静かに語った時、会場に集う1000人の聴衆に感動の輪が広がりました。7月22日、東京ビッグサイトで開催した「第11回チャレンジド・ジャパン・フォーラム国際会議」午後のセッション。米国の弁護士ジョン・ケンプさんの記念講演に引き続き、著名なゴスペルシンガーであるレーナさんのお話の中での出来事です。

そして彼女は「私はスウェーデンに生まれて幸せでした」と、ほほ笑みながら話を終えました。生まれながらに両腕が無く、足も片方は未発達のままというレーナさんは、両親から「お前は自分の望む、何者にもなれるんだよ」といつも言われていたそうです。「水泳も木登りも弟と一緒にやったし、負けなかったわ」と、ニッコリ。

彼女は足の指でフォークを持って食事をしますが、ある国の王女の晩餐(さん)会に招かれた時、周りの人たちから「今日は介助を受けて食事をしてはどうですか」と聞かれ、「私が人から食べさせてもらったのは2歳までです」とキッパリ答えたといいます。

「足で食べることが失礼と言われるなら、晩餐会を辞退しよう」と考えていたけれど、王女はむしろ彼女の食べぶっりに感動したそうで「案ずるより産むが易しだったわ」と、レーナさんはユーモアたっぷりに話しました。

3歳から始めた水泳はめきめき上達し、スウェーデンの記録保持者となっただけでなく、パラリンピックでは何度もメダルを取ったそうです。

画家でもある彼女は「実は歌手になるつもりは全然なかったんだけど」と笑いながら、温かく澄み切った歌声で、ジャズとゴスペルを聴かせてくれました。

「自分を愛すること、自分の尊厳を大切にすること、そして、すべての人に尊厳があることを、両親とスウェーデンという国から教わった」とレーナさんは語りました。

私も33歳になる重症心身障害の娘を「誇り」に思って生きてきたけれど、同じ思いの人たちに出会えたことを改めて感謝した大会となりました。開催を支援して下さった多くの皆さん、ありがとうございました!

(たけなか・なみ=プロップ・ステーション理事長)

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