独立辞典 2006年6月〜7月号より転載

「障害者が納税できる日本に」。その支援に奔走


PROFILE
たけなか・なみ/1948年、兵庫県生まれ。長女が回復の見込みのない重症心身障害児と診断され、以後、療育を続けながら障害児問題を独学。ボランティア活動にも積極的に携わってきた。91年にプロップ・ステーションを創設し、理事長職に就く。現在、マスコミ取材、執筆活動、講演会などで多忙な日々を送る。姉御肌の性格で、周囲からの呼び名は「ナミねぇ」。

24歳の時に授かった長女が重症心身障害児でね。ほかの障害児の親御さんたちと一緒に、過酷な機能回復訓練を「この子のため」と懸命に続けたつらい時期もありました。そんな中、離婚して娘を病院に受け入れてもらった時、入院費用が国の補助金で賄われていることを知ったんです。初めて税金の使われ方や、納税者の義務や責任について考えるようになってね。国民が払う税金で娘が生きていくとするなら、ちょっとでも役に立てるよう私自身が動かないと!そう思ったわけです。で、ボランティアをやるようになったんですが、子どもが障害者やのに何で親がボランティアなんか? と、しょっちゅう言われましたよ。でもね、毎日娘のそばにいるだけが親子関係やない。様様な障害者と知り合って知識を得たり、私自身が経験を積むことが、娘を育てていくうえできっと役に立つと思った。

そして、ある日知ったのが「アテンダント」の存在。障害者を介助するプロのことで、ボランティアではなく障害者が自らお金を払って雇う……これまでとは考え方が違うと、影響を受けてね。同時に、自立を望む障害者が実は大勢いることを知りました。そして、その望みを可能にするツールとしてパソコンが登場してきていた。確かに障害者が毎日会社に通って、仕事をするのは難しい。でも、ワークシェアリングして在宅で仕事をすることならできますやんか。仕事をすれば収入がある、納税の義務も発生する。立派な社会人として生きていける。これや!と思ったんです。ならば、そういう環境づくりの支援をしようと。中には「障害者に納税させるなんて」という非難の声もあるけれど、何より障害者の多くが自立を望んでいる。それに応える仕組みをつくるほうが、福祉に税金をつぎ込むよりずっと社会にとっても有益。ひとりでも多くの人に、身の丈に合ったかたちで今後の日本の支え手になってほしい――私はそう思って支援をしています。この考えに共鳴して、最新のパソコンを提供してくれた大手のコンピュータメーカーもありますし、最近ではうちと同じような組織も全国にでき始め、やっと「障害者が納税者にできる日本」という認識されるようになってきたところですね。

【DATA】社会福祉法人プロップ・ステーション
  • 設立/1998年9月(発足は91年5月)
  • 職員数/10人
  • 事業内容/チャレンジド(障害者)の自立と就労に関する支援活動、各種相談受付。機関紙「flanker」の発行など
  • アクセスはこちら! http://www.prop.or.jp

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