公明新聞(日曜版) 2006年4月9日より転載

私たちは挑戦します!

障害者の就労を進めるプロップ・ステーションを訪ねて

「チャレンジド(障害者)を納税者に」をスローガンに、IT(情報技術)に関する技能の習得などを通じて障害者の自立と就労を進める社会福祉法人のプロップ・ステーション(竹中ナミ理事長―兵庫県神戸市)が注目を集めている。公明党も支援するプロップ・ステーションの活動を紹介する。

「障害者を納税者に」を合言葉に
IT技能を習得し、社会参加

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「ナミねぇ」こと竹中理事長(前列右から2人目)とセミナーの受講者、スタッフのメンバー

神戸港の六甲アイランドにあるプロップ・ステーションの事務所兼教室――。「みなさーん、変換はちゃんとできましたか」。車イスで「パソコン基礎講座」の授業を進める講師の木和田周一さんの呼び掛けに、10人の受講者は画面をにらみながら懸命にキーボードを操作する。

脳性小児マヒで体が不自由な木和田さんがインターネットを通じてプロップ・ステーションに出会ったのは3年前。受講生からサポーターを経て昨年春からこの講座を担当するようになった。

ほかの講座を担当する講師も、ここの出身者ばかりだ。足でマウスを操(あやつ)りながら授業を行う講師もいる。集まってくる受講者もさまざまで、口にスティックをくわえてキーを押す姿も。

プロップ・ステーションが発足したのは1991年。障害者支援のボランティア活動をしていた竹中ナミさん(理事長)が、「障害者を納税者にできる日本を」をスローガンに立ち上げた。このためプロップ・ステーションでは、障害者のことを「チャレンジド」(挑戦する課題、チャンスを与えられた人)と呼んでいる。

設立の当初は、教室の確保、パソコンの調達も難しい状況だった。悪戦苦闘の末、企業、自治体などが賛同者になってくれるようになり、98年には社会福祉法人の認可を取得。活動も軌道に乗った。

現在までに2000人以上が講座を受講し、その中からグラフィックデザイナー、プログラマー、絵本作家も誕生。「多くの人が職を得て、施設や自宅のベッドの上で明るく働いている」(鈴木重昭事務局長)など、大きな成果を残している。

各種パソコン講座を開設
自立や就労の相談も行う

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真剣にパソコン研修に取り組む基礎講座の風景
(手前が講師の木和田さん)

プロップ・ステーションが取り組んでいる主な事業は、コンピューターを使ったIT技能の講習と障害者への仕事の仲介、そして就労に関する相談などだ。

大阪と神戸の教室で実施している主なコンピューター講座は、「パソコン基礎」「インターネット」「グラフィック初級・中級」「ホームページ作成」など。「プログラミング」「ネットワーク管理者」講座も、随時実施してきた。さらに、全国各地で受講できるインターネットによる講座も実施している。地域の住民や高齢者の受講も受け付けている。

さらに「今年から視覚障害者向けの講座も開講したい」(竹中理事長)としている。就労に関する相談も年に2000件を超えている。

国際会議を毎年開催
北側国交相、山本(香)参院議員が参加

昨年8月18、19の両日にわたって、プロップ・ステーションは神戸市内で「第10回チャレンジド・ジャパン・フォーラム・イン・兵庫/神戸」を開催した。フォーラムは毎年、国内外の政府要人や著名人を講師やコメンテーターに招き、全国各地を巡回しながら開催している。

昨年は公明党から、初日の討論に北側一雄国土交通相が、また翌日の討論には山本香苗参院議員が出席した。

北側国交相は、バリアフリーに関連して、障害者や外国人が携帯端末を持って屋外を移動すると、街中に設置された発信機から案内情報が受け取れるシステムを実験導入していることを紹介しながら、「建物や道路、交通手段も含め、街全体としてのユニバーサル化を進めたい」と述べた。

同フォーラムではこのほか、ダイナー・コーエン米国防総省CAP(コンピューター/電子調整プログラム)理事長が基調報告、小泉純一郎首相がビデオでメッセージを寄せた。

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北側国交相らも出席して開かれた昨年の「チャレンジド・ジャパン・フォーラム」(神戸市内)

【情報】
プロップ・ステーションに関する情報は  http://www.prop.or.jp

支えられる側から、支える側に

プロップ・ステーション理事長 竹中 ナミさん

社会のチャレンジド(障害者)に対する見方は「守ってあげる」というのが一般的で、障害者の側も「守られるのが当たり前」といった面があったのではないでしょうか。

しかし、"できないこと"ではなく、"できること"に目を向ければ、チャレンジドの可能性は限りなく広がります。その武器の一つがコンピューターです。

私たちは、チャレンジドが技術を身につけ、自立し、納税者となることで、支えられる側から、支える側にも回れる社会システムを実現することを目指しています。

チャレンジドは、けっして社会のお荷物ではありません。むしろ、これからの高齢社会にあって、チャレンジドや高齢者が社会のあらゆる場面で活躍できる日本でなければならないと思います。

政府とも共同でチャレンジドの雇用促進プロジェクトを推進してきましたが、私どもの運動に対し、公明党の浜四津敏子代表代行や北側一雄国土交通大臣も賛同を寄せてくれ、大変ありがたく思っています。

これからも「ナミねぇ」は頑張ります!

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