神戸新聞 2006年2月16日より転載

Take off! MARINE AIR

誰でも快適に利用

最新設備、接客で、年齢、言葉、障害の有無などにかかわりなく

年齢や言語、障害の有無などに関係なく、誰もが使いやすい「ユニバーサルデザイン(UD)空港」が誕生する。神戸空港は、乗客の動線が短く、誰もが利用しやすいことが特徴。旅客ターミナルビルとポートライナーの駅との連絡通路はわずか10メートルだ。開港後は、ビル内の各社が「心のUD」を掲げ接客。国土交通省も世界の空港で初めて、障害者らの誘導サービス設備を整え、実証実験をスタートさせる。各所でUDの取り組みが進むなか、神戸空港の試みがどう広がりを見せるか、注目が集まる。

(網 麻子)

くまなくユニバーサルデザイン

神戸空港の旅客ターミナルビルは、いたるところにUDを取り入れている。ベビーシートのほか、人工肛門(こうもん)を装着した人(オストメイト)のための設備などを備えた多機能トイレは、8ヵ所のトイレすべてにある。

空港内の案内表示は原則として日本語、英語、中国語、韓国語の4言語表記。絵文字も多く、4言語が理解できない人も分かる。

神戸市などが出資する神戸空港ターミナル会社の大下勝常務は「UDの考え方に基づき設計した。これから、利用者の意見を聞きながら、さらに取り組みを発展させたい。接客では『心のUD』を柱にしたい」と話す。

どんな利用者も心地よいと感じるようなもてなし。同社は、ビル内の清掃や警備、テナントなどすべての会社の従業員に浸透を図るため、共通の接遇研修に取り組む。

一方、国交省が同空港で試みる誘導サービスでは、約千ヵ所に情報を発信するICチップ搭載のICタグを設置。障害のある利用者も携帯端末で情報を得ることができる。実用化に向けた研究途上で、実証実験として携帯端末を貸し出して、課題を探る。「世界初のUD空港に」(北側一雄国交相)との意気込みで、広がりが期待される。

市民の宝 利用者の声反映を

社会福祉法人「プロップ・ステーション」理事長
竹中 ナミさん

[写真]竹中ナミ神戸空港については建設反対の動きもあったけれど、空港は市民共通の財産。誰もが使いやすいUDをキーワードに宝物といえるものにするため「神戸空港のユニバーサルな発展を願う市民の会」を考えた。昨年5月、ロック・フィールドの岩田弘三社長やフェリシモの矢崎和彦社長ら地元で活躍する人たちをはじめ約20人で初会合を開いた。

UDの取り組みや、利用者や市民に親しみを持ってもらえるような事業について、市に提言しており、最新のUDトイレも実現した。

大みそかと元旦には、私たちが提案した空港島の照明の一斉点灯が行われた。市街地の商業ビルもライトアップに参加し、開港ムードを盛り上げてくれた。

開港後には一般の人たちを対象にしたシンポジウムを開く。利用者の声を聞きながら、よりよい空港にしていきたい。神戸空港を世界一ユニバーサルな空港にしたい。

●携帯で誘導サービス●

[写真]
誘導サービスのデモンストレーション。カーペットの下にはICタグがあり、利用者は携帯端末から音声や文字で情報を得ることができる

●4言語 絵文字で情報●

[写真]
横1.2メートル、縦3.6メートルの布8枚をつなぎあわせた「バナーサイン」。4言語の表記や絵文字で情報を伝える

●出発口は白線が目印●

[写真]
2階のビル入り口(写真奥)と出発口を結ぶシマウマ模様のライン。乗客を誘導する動線を示し、1階にもある

●各階に多機能トイレ●

[写真]
多機能トイレは各階によって設備が異なる。写真のトイレは2階にあり、オストメイト対応の設備や大人も使えるユニバーサルシートがある

いずれも神戸空港旅客ターミナルビル

ページの先頭へ戻る