産経新聞 2002年5月29日 より転載

【from】

チャレンジドを納税者に

竹中ナミ(たけなか・なみ=プロップ・ステーション理事長)

「チャレンジドを納税者にできる日本」というのが、わがNPO(社会福祉法人プロップ・ステーション)のキャッチフレーズ。ITを活用し、重度の障害を持つ人たちが「社会を支える側に回ろう!」、つまり「誇りある自立」を自らの力で手にしようとの意気込みです。

「チャレンジド」は「ハンディキャップ」に代わる新しい米語で、「神から挑戦という使命やチャンスを与えられた人」の意味。つまり「人間には自分の課題に向き合う力が必ず与えられており、課題の大きい人には、その力もたくさん与えられている」という考え方。ポジティブでしょ。

私「ナミねぇ」は三十年前に重症心身障害の娘を授かって以来、日本の福祉の裏表をしっかり見せてもらった。「気の毒」とか「かわいそう」という「福祉的な言葉」の洪水には、もうウンザリ。人間には、どんな人にもプラスのとこがいっぱいある。マイナス数えて埋め合わせする福祉から、プラスを全部発揮できる社会の仕組みに、そろそろ変えたい。

チャレンジドを対象にしたコンピューター・セミナーを十年間継続してきたプロップでは、すでに多くのチャレンジドが、家族の介護を受けながら在宅で、あるいは施設や病院のベッドの上で、プロとして活躍しています。

そして、「彼らを納税者に」は、J・Fケネディの言葉。自由主義経済の国においての「誇り」は、タックスペイヤーとして発言することから始まるという率直で力強い言葉に出合って、ナミねぇは「これやっ!」と思ったの。

アメリカのまねが好きな日本人だけど、うわべばかりまねるのはやめて、ホンマにまねたほうがいいところを学びましょう。アメリカではペンタゴン(国防総省)で、重度のチャレンジドが政府機関の職員になれるよう、最高の科学技術を駆使するプログラムがもう十年も実施されているのよ。

日本の福祉観の転換に向けて、プロップの挑戦が続きます。

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