日経トレンディ 2000年8月号 (2000年7月4日発売)より転載

【ニッポン透視図】

ITが道拓く チャレンジドの在宅ワーク

竹中ナミ●社会福祉法人プロップ・ステーション理事長

近年アメリカにおいて「ハンディキャップ」に代わる言葉として、「チャレンジド(challenged)」が使われ始めている。チャレンジドというのは「挑戦という使命、あるいはチャンスを与えられた人」という意味を持ち、日本語でいう「障害者」というマイナス・イメージの強い呼称に比べ、大変ポジティブな捉え方、生き方を表す。

このポジティブな意味を具現化しよう!誇りある人生を選択しよう!という意志を持ったチャレンジドたちが、日本でも今ITの発達という時代の後押しを得て、大きく羽ばたこうとしている。ITは様々な障害を持つチャレンジドにとってコミュニケーションの幅を飛躍的に広げると同時に、在宅ワークという新しい働き方への道を拓いた。ITを活用した在宅ワークは「家族の介護を受けながらでも働ける」チャレンジドを輩出し始めている。インターネットを使っての在宅ワークは、チャレンジドに限らず通勤困難な状況にあるどんな人にも就労への可能性を拓く。通勤する、在宅で働く、SOHOする、などなど…自分の状況に応じて多様な働き方を選択できる社会の創造に向け、チャレンジドが水先案内人になっているともいえるだろう。
少子高齢化がますます進む日本において、1人でも多くの人が「働く」という形で社会貢献できる仕組みをつくることは、とても重要な課題だが、チャレンジドがこうした時代の要請に応える役割の先頭にいる、というのもIT時代ならではの出来事といえるだろう。
人間は皆、支えあって生きており、誰も1人では生きられないという厳粛な事実の前で、「障害のあるなし」にかかわらず、誰もが状況に応じて「支える側」「支えられる側」に、柔軟にベクトルを変化させられる働き方が今、求められているのである。

ページの先頭へ戻る