教育タイムス 2000年(平成12年)2月23日(水曜日) より転載

障害者の情報教育を探る

府・NPO団体などがフォーラム

障害のある子どもたちが求める情報教育のあり方を探ろうと、フォーラム「チャレンジドの情報教育と就労を考える〜障害者を支える情報教育をめざして」が2月15日、大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)大ホールで開かれた。コンピュータと情報通信 を活用してチャレンジド(Challenged=障害のある人を表す新しい米語)の自立と社会参加、とくに就労促進を目的に活動しているNPO(社団法人プロップ・ステーション)と、大阪府教委義務教育課などの共催で開かれたもので、およそ400人が集まった。

今年1月から2002年3月までの期間、政府の緊急地域雇用特別交付事業に基づき、大阪府とプロップ・ステーションが連携して、年々重度化する養護教育諸学校の教育現場で コンピュータやIT(情報技術)を活用することにより、障害をもつ子どもたちのコミュニケーションや自立への取り組みを深め、ひいては就労につながる教育を行うための事業の一環で、国と自治体、NPOの3者が力を合わせている。

フォーラムでは、最初に文部省大臣官房政策課長の寺脇研氏が基調講演の中で「読み・書き・算に加えて外国語・コンピュータが21世紀を生きる人の学力だ。中でも障害を受けた人の社会参加を促すためには情報機器は大変有効であると認識している。厚生省、労働省と連携しながらバックアップしたい」とハード面の整備を国レベルで進める意向を表明。そのうえで「学校等での具体的な指導法や指導内容などソフト面は現場の方々の知恵をお借りしないと前に進まない。羽曳野市など先進地域の大阪に学びたい」と述べた。

6人がパネルディスカッション

続くパネルディスカッションは、プロップ・ステーション理事長の竹中ナミさんの司会で6人が発言。

パソコン通信やインターネットなどの通信技術の発達とともにパソコンを利用した新しい在宅ワークの形、SOHO(スモールオフィス・ホームオフィスの略)が障害者の社会参加の道として広がっているなか、パネリストの1人、脳性マヒの障害をもつ吉田幾俊さんは、持ち前の画才をコンピュータ・グラフィックスの世界で花を咲かせ、在宅就労者として活躍、斬新な作品を次々と生みだしている。「私自身、油絵が大好きだったが、障害のため思うように鉛筆を動かすことができなかった。マウスを動かすことで絵を自由に描くことのできるコンピュータと出会って道が開けた」「コンピュータは障害者の能力開発へ向けたモチベーション(動機付け)の最適な道具。しかも楽しく取り組むことができる。各養護学校に充実してほしい」と要望。「障害者は、やりたいことを声を上げて周りに伝えることがまず大切だ」と励ました。

また平成4年度から全国の養護教育諸学校に先駆けて「情報処理科」を設置した大阪府立盲学校の安達睦也教頭が障害児教育に大きく寄与している情報機器の活用状況を報告した。同校はサーバーと校内LANをいち早く整備、「東京へ行かなくても国会図書館の図書が音声で閲覧でき、リアルタイムで新聞が音声で『読める』ことができるようになった。 また、居ながらに情報交換ができるモバイル、携帯電話の普及のおかげで、視覚障害者同士が駅で待ち合わせをすることができるようになった。これはすごいことで、視覚障害者にとっては、点字の発明以来の情報革命である。科学技術の発達により情報だけでなく、もっともっとバリアフリーが進んでほしい」と訴えた。

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