月刊アスキー 1998年11月号(1998年10月18日発行)より転載

BOOKS WITH PAGES

プロップ・ステーションの挑戦

(竹中ナミ著 筑摩書房刊 1810円) ISBN4−480−86315−X

「小さいことでくよくよするな!」という本が売れに売れているらしい。社会生活に悩んだり、人間関係に悩んだり、なかなか思うようにコトは進まないし、落ち込むことも多いし・・・…。そんなときに元気の出し方を教えてくれる本は必要だ。「小さいことで〜」もいいけれど、いろいろ悩んで疲れている人にお勧めなのが本書だ。「ナニワのナミねえ」こと竹中ナミ氏は、本書の中でも書いているが、中卒(高校を中退)で、障害児の母ちゃんで、バツイチで、もういいトシの団塊の世代のオバちゃん、である。分かりにくいところは何もない。そのオバちゃんが「コンピュータのことはようわからへん」と言いながら、「コンピュータは武器になる!」と叫んでいる。

誰が何をするための武器になるのか? プロップ・ステーション(以下、プロップ)は、竹中氏が代表を務める非営利団体。コンピュータを活用して、障害を持つ人の自立と社会参加を目指している。とりわけ力を入れて取り組んでいるのが「就労の支援」だ。実は私は、プロップがまだ「設立準備委員会」という名称で歩き始めたばかりの1991年、取材で初めてにお会いしている。全国の障害者に就労意識のアンケートを行った結果を見ながら、障害を持つ人の中にも働きたいと思っている人が多く存在すること、コンピュータやネットワークを使った在宅勤務の可能性などの話をうかがった。

それから現在までの間、就労を目的にした障害者のためのコンピュータセミナー、実際の就労支援、フォーラムやシンポジウムの開催など、プロップの活動は意欲的だ。決して順風満帆でやってきたわけではなく、さまざまな失敗を繰り返してきたということだが、「ダメもと」精神の竹中氏流の人とのつきあい方、行動力、これも興味深い。 プロップでは、「障害を持つ人」のことを「challenged(=神から挑戦すべきことを与えられた人)」と呼ぶ。今現在のchallengedは今後の高齢化社会の水先案内人だ。どんな案内をしてくれているのか、ひとりひとりの挑戦談も紹介されている。

(増田)

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