ASAhIパソコン 1998年10月15日号 (1998年9月29日発売)より転載

【ハンディキャップ】

長崎でも就労支援活動が動き出す

中和 正彦

長崎市で、パソコンを学んで社会参加を目指す障害者のグループ「フロンティア」と、その活動を支援するボランティア・グループ「フロンティア・サポート・クラブ」が発足し、いま活動を拡充させている。

この活動の発起人の1人は、前号で紹介した森正さんだ。車イス生活の森さんは、2年前、大阪のNPO(非営利組織)「プロップ・ステーション」がインターネット上で行うセミナーを受講し、プロップの仲介で地方では望むべくもなかった東京の外資系大手ソフト会社に、在宅勤務の契約社員として採用された。

森さんは、知人で社会福祉協議会の久部直人さんと「地域で何か障害者の社会参加を拡大する活動を起こそう」と語り合うようになった。そして、「プロップのような活動を長崎でも」と考えていた長崎YMCA吉松裕蔵さんと、富士通オープンカレッジ長崎校を運営する富永隆一さんの2人に出会って意気投合。これに理学療法士の東山敬さんが加わり、就労への切実な思いを持つ障害者5人が、今年2月、フロンティアを結成した。

一方で、森さんら発起人グループは、サポート・クラブを結成。富永さんがパソコン教室を提供し、講師も買って出て、週1回のセミナーが始まった。

フロンティア代表の川原貴博さんは、進行性の筋肉疾患・筋ジストロフィーの病状が進んで通勤が困難になり、勤務先の退職が余儀なくされた。現在は自宅で写真修整の仕事をしているが、「病状は進行する可能性があるので、この仕事もいつまでできるかわからない。今のうちにやれることはやっておきたい。もうチャンスはないかもしれない」との思いで、フロンティア設立の話に乗ったという。

また、メンバーの1人で、過重労働で脳動脈瘤破裂を起こして倒れ、左半身不随となった立石好子さんは「生死の境を脱して8年間、『何とかして仕事を』と思ってリハビリと求職活動に明け暮れましたけど、見つかりませんでした。でも、フロンティアの活動に出会えて、再び夢が持てました」と言う。

メンバーの障害者たちは、ワープロや表計算などの基礎を修了し、それぞれが目指す仕事に必要な職能技術を習得する段階にある。サポート・クラブはボランティアを募集しながら、フロンティアのメンバーのニーズに応えられ、さらに後に続く受講生を受け入れることもできる態勢づくりを急いでいる。
「仕事を受注するようになると、相手先との折衝や、品質、納期の管理も必要で、責任者として専従スタッフも必要になるでしょう。どうやって専従者を置けるような組織にするか、課題は山積みです」

と富永さんは言うが、いざという時には障害者の自宅まですぐに駆けつけてサポートできる地域活動は貴重。行政も含めた地域の支援で育ててほしい活動だ。

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