福祉新聞 1998年9月21日より転載

三念帖

ビデオに制作 チャレンジド

「神様に挑戦という運命を与えられた人たち」という意味を込め、近年「障害者」に変わる造語として米国で使われはじめた「チャレンジド」。このほど、今村昌平監督が監修し、アジア映画研究機構(03521−0156)が制作したドキュメンタリービデオ「Challenged」は、「チャレンジドを納税者に!」を合言葉に、その就労を支援している関西のNPO団体「プロップ・ステーション」(PS)の取り組みを紹介している。

PSは重度の心身障害児の母・竹中ナミさんの「障害者よ働こう」という草の根運動により7年前に生まれた。マウスやキーボードの操作だけで、障害者の世界が大きく広がることに着目したPSは技術訓練を行い、コンピューターのプロを要請するとともに、仕事を受注するための企業訪問などを行い、少しずつ就労支援の輪を広げていった。

ビデオではそんなPSの訓練を受け、プログラマーなどとして活躍している5人を紹介。

その1人が電子メールの交換を通じ竹中さんと知り合った視覚障害者の細田和也さん。

現在は大手コンピューター会社マイクロソフト社でソフト開発に携わる一方、画面を見てマウス操作だけで動く最近のコンピューターは視覚障害者には使いにくいと、視覚障害者の視点からできることを考えている。

進行性の全身マヒにより車イスを使用している杉本睦子さんもその1人。初めての企業からの給料を喜ぶ睦子さんとその家族。「睦子の給料でごちそうになります」と、嬉しそうにグラスを傾け、寿司を頬張る父親。そこには、与えられる存在から、与える存在となり、人間としての尊厳を取り戻したチャレンジドと家族の笑顔があふれている。

PSの取り組みは、筑摩書房(048651−0053)からこのほど発刊された「プロップ・ステーションの挑戦」でも紹介されている。その活動に多くの人が共鳴するのは、ノーマライゼーションの実現など社会改革への希望を与えてくれるからだろう。

「駅名告げいしホームが透けて夜行終ぬ」(河野南蛙)

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