毎日新聞 1998年9月5日より転載

新鮮な「チャレンジド」の響き

言葉に励まされ働く意欲

「チャレンジドという言葉にとても新鮮な響きと力強さを感じます」

障害者という言葉に代えて「挑戦する人」という意味を持ったチャレンジドを使い、その人たちが仕事をし、納税者になれる社会の仕組みを作りたいという大阪のNPO(非営利組織)「プロップステーション」代表、竹中ナミさんの意見を8月29日付「論」で紹介した時の反響の一つです。九州から竹中さんに届きました。

障害者手帳を持ち療養中のある20歳代の主婦は「この言葉に励まされ、頑張って働きにいけるようスキルアップしたい」。寝ているだけだった日々を振り返り、「その時、夫が言ってくれた『一緒にいることでオレの方が強くなっていくんや』という言葉を信じて頑張って生きていこう」と決意しているそうです。

竹中さんは「働きたいという意欲を持つ人が仕事につながる『売り』を身につけることは、どんな障害がある人にも大切なこと。その『売り』が自信と誇りに結びつき、生き生きと生活できることにつながるんです」と強調します。

冒頭の9割の人は、リハビリに携わる機関に働き、さまざまな補助具の開発を通じて筋ジストロフィーで闘病中の患者さんと交流があったそうです。筋ジスは手、足の機能が順に奪われていく病気です。「指を動かすのが難しくなったね、どうしようか」と困った顔をしたこの人に、患者さんの方が「まだ目が動くじゃないか」と笑みを浮かべたそうです。

「勇気づけられた」ことを実感したその翌日、彼は静かに息を引き取ったそうです。「人生は長く生きることでなく深く生きること。この意味が彼を見ていて分かりました」とも言います。

チャレンジすることと、「勇気」はコインの裏と表の関係でもあるのでしょう。

【特別報道部長  山崎一夫】

このページは毎週土曜日に掲載します。反論、意見、注文を募集します。ファクスか郵便で下記まで。なお、連絡先の電話番号を明記して下さい。

〒530−8251(住所不要)     毎日新聞大阪本社
ファクス06−34−8172   オピニオン面編集室

ページの先頭へ戻る