福祉おおさか 6月号(399号) (1998年6月1日発行)より転載

障害者の在宅勤務を支援(NPO プロップ・ステーション)

インターネットを活用 就労拡大に期待 

非営利団体(NPO)の「プロップ・ステーション」(竹中ナミ代表・大阪北区同心1−5−27大阪ボランティア協会内)は、コンピューターを活用して、障害者、とりわけ重度の障害をもつ人たちの在宅勤務を可能にし、就労拡大に促進していこうと、多くの技術専門家等のボランティアの参画を得ながら先進的な取り組みを行っています。その1つ、毎週夜2回開かれている、障害者や高齢者を対象とした初・中級コンピューターセミナーを訪ねました。

今年1月からスタートした8期目(1期=半年間)のセミナーに通う児島加代子さん(全身性の重度障害をもつ)は、一般新聞でプロップ・ステーションの活動を知り、受講を決心しました。それまでは、使いこなせなくてほとんど触れなくなっていた自宅のコンピューターも、今ではライフワークとしての必需品に。パソコンを通して友だちの輪が広がったとのことですが、さらに大きな収穫は、プロップ・ステーションが大手企業と共同で1月からインターネットを用いた障害者の在宅勤務の実験事業を開始し、その従事者の1人としてセミナー受講者の中から選ばれたことです。

事業内容は、ホームページに関する調査業務。行政や自治体が開設しているホームページの数や内容などのデーターを、コンピューターで検索してレポートにまとめ、自宅からインターネット通信で企業に送り返します。
児島さんはこの仕事を隔日でこなしているそうで、この成果により実験期間がさらに延長されることに。将来的には好きな絵のデザインを生かした仕事で自立をと、技術向上に努めています。

"通勤"が就職の壁

プロップ・ステーションは5年前の発足当初、全国の重度障害者1,300人に就労意識調査を行い、回答者の8割から「コンピューターの仕事」に期待を抱いていることを知りました。同時に、意欲があるのに技術を教えてもらえる教育機関がない、自分の成果を評価してくれるシステムも仕事もなく、通勤が困難という圧倒的な悩みも浮かび上がってきました。

「障害者の雇用形態、仕事の中身について、これまで通りの考え方では雇用に結びつくのに限界がある」と竹中さん。その大きな壁の1つとなっている"通勤"問題も、コンピューターを使った仕事なら在宅勤務となり解決。技術を向上させていけば、インターネットを使って世界とつながり、個人の意欲・能力で仕事を競うことも可能になります。その企業と障害者の雇用ニーズの橋渡しをと、プロップ・ステーションは考えています。

大阪Vフェスで一般にPR

インターネットが飛躍的に普及し始めた"今"がチャンスと捉え、「チャレンジド(障害者)の可能性を行政や一般にPRしていきたい」と竹中さんは期待しており、全国ボランティアフェスティバルでインターネットによる広報や分科会の部門をプロップ・ステーションのチャレンジドたちが担当することになっています。

インターネット
複数のコンピューターネットを接続することにより世界とつながって、1つの巨大なネットワークを構築する。
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チャレンジド
challenged=「障害をもつ人」を表す新しい米語

セミナーには、これまでのべ約100人が受講。就職をめざす人の他、生きがい活動・趣味として学習している人もいます

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