松下電器産業株式会社 社内報「松風・1998年 新年号」より転載

ブランドの血液

パソコンを障害者と社会の架け橋に

松下情報システム技術開発部 先行技術開発室 技師 岡 善博さん

パソコン通信、インターネットなどの普及によって、書類のやりとりや打ち合わせをコンピュータ上で行うことが可能となってきている。大阪の民間ボランティア団体「プロップ・ステーション」はこうしたマルチメディアを活用して、「Challenged(チャレンジド)」(障害を持つ人たち)の社会参加と自立、最終的には就労を目指して活動を行っている。会員は全国に約350人、その3分の1が肢体・視力・聴覚・内臓などに障害を持つさまざまな人たちである。

松下情報システムの岡さんは1994年からプロップ・ステーションのインターネット接続の支援を行い、コンピュータセミナーの講師も務めている。コンピュータ利用の研究会で、プロップ・ステーションの竹中ナミ代表と出会ったのがきっかけ。岡さんは「チャレンジドの中には、パソコンをコミュニケーションや自己表現の場として活用したいという人たちがたくさんいます。自分が仕事を通して学んだ知識が、少しでもお役に立てばと思い参加しています」と語る。

岡さんが講師を務めるのは、インターネットのホームページ作成講座。岡さんのようなプロの技術者から先日まで教わる側だった人まで、さまざま講師陣がパソコン操作の初歩からプログラミング、電子出版システムに至るまでのセミナーを週1度開催し、さらにパソコン通信による質疑応答も行っている。そしてこれらのセミナーの修了者の中からは、先日行われた全国身体障害者スポーツ大会「ふれ愛ぴっく大阪」の公式ホームページの製作や、高校の教務管理システムや貿易会社の在庫管理システムの作成といった仕事をこなすチャレンジドも出てきている。

「一つのものを作り上げる喜び。それを生徒たちと共有できることが、私の活動の原動力ですね」と岡さんは語る。そして「無理をせずに、まず自分が今できることから始めてみるのが大切だと思います。一つひとつの力は小さくても、それが集まれば個人が属する会社や地域を越えて、社会全体を変えていくほどの力になると信じています」とも。どんな大きな動きや流れであっても、それをつくっていくのはあくまでも個人一人ひとり。岡さんはその大切さを思い出させてくれた。

* 先日開催された「ChallengedArt展」の会場として社会文化部を窓口にOBP内のデジタルアートスクエアを提供するなど、当社のプロップ・ステーションの活動を支援している。

プロップ・ステーションのホームページのアドレスは
(http://www.prop.or.jp/)

松下電器産業株式会社 社内報「松風・1998年 新年号」より転載

「普通の社会人の一流化」

その発想が愛されるブランドをつくる

テレビ事業部システムエンジニアリング事業推進部 事業推進課 課長 高野耕一さん

愛されるブランドを創造する活動領域には、まず「商品」、次に「会社」、そして「個人」を通じて達成される3つの領域がある。ところが個人の活動は、前の2つに隠れてあまり見えてこない。しかし個人の活動が、よい商品、よい会社につながっていることを日常の生活の中で意識していけばブランドイメージはもっと良くなる。

顧客ニーズに対応し、機能、品質、価格のバランスがとれた商品づくりが、ブランドイメージをアップする。さらに、企業理念や経営体質が良く、地球環境配慮、芸術やスポーツなどに貢献するなど、企業努力として社会的責任を果たすことで、良い企業イメージが醸成される。そして、極めて重要の3つ目の領域が「個人」にかかわる部分なのである。
生涯時間という観点で会社生活を見た場合、会社にいる時間は、人生の15%にしかすぎない。あとの85%は個人としての時間なのだ。従って社員である前に一人の人間としてバランスのとれた発想と行動を実践していくことが企業のレベルを向上させるベースになる。

創業者は「ものをつくる前に人をつくる」と言われたが、この「人づくり」の考え方の目指すところは「健全な社会人が健全な会社をつくる」ところにある。会社の社会的信用が個人の信用になっている一方で、会社生活で学んだ知識や技能を日常生活や地域活動の中でも役立てていくと、結果として「あんな良い人たちがつくった商品ならきっと良い商品に違いない」というイメージにつながる。このようなインタラクティブな関係が「会社」と「個人」との間に存在する。

高野さんは「いいにつけ、悪いにつけ松下電器という看板を私たちは背負っています。そこで、心の中ではそのことを意識して、PTAとか自治会の世話係やボランティア活動をやっていく。その評価が結果として会社にも個人にも還元されるのです。この発想や行動の意図するところは、普通の社会人が一般化するにはどうしたらいいのかということなんです」と語る。
高野さんからの提案をご紹介しよう。

―提案1:自分の人生のありたい姿を社会人の視点でつくってみませんか。
自己開発、趣味・教養、健康管理、家庭生活、社会生活、人間関係、仕事、経済設計の8項目についてライフステージごとに具体的な努力目標を決めてチャート図にし、自分なりに実現度をチェックしていくやり方。高野さんは「後悔しない充実した生き方を実践する」ライフデザインを提唱している。

―提案2:社内の約300人の消費生活アドバイザーを中心に社内の専門機能と連携したブランドイメージ向上の社内ボランティア活動をしませんか。
資格取得はしていても有効に活用できていないのが実態。他社の消費生活アドバイザーとの交流も始めている。

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