読売新聞 1997年8月28日より転載

障害者と小学生 教え教えられ

神戸の教室 広がる触れ合い

先生は障害を持つ人と小学生――。神戸市のポートアイランドにある神戸情報通信研究開発支援センターで、毎週土曜日の午後、ユニークなパソコン教室が開かれている。障害を持つ人が、障害を持つ人と地元の小学生を指導しており、最近はこの教室で学んだ小学5年生の女の子もボランティア講師として仲間入り。パソコンを通して、障害を持つ人と子どもたちの触れ合いの場になっている。


小学5年生の星羅さん(右)も堂々とした講師ぶり

小さな先生「頑張りに感動」

教室を開いているのは、パソコンやインターネットを使うことで障害のある人の就労機会の拡大を目指している民間団体、プロップ・ステーション(大阪市北区、代表・竹中ナミさん)。

教室は、阪神大震災からの復興が進む神戸で、障害を持つ人と子どもたちが一緒にコンピューターを学ぶことで、ネットワークが生まれ、障害を持つ人も持たない人も支え合って仕事をするような街になってほしい、との思いが込められている。さらに、障害を持つ人が講師を務めることで、職域の拡大につながればという期待もある。

8月のある土曜日。この日は、この教室で学び、今回からボランティア講師として参加することになった小学5年生、永吉星羅さん(10)(神戸市西区)の"初仕事"。

星羅さんは、この教室に通うまで、パソコンはゲームで遊んでいた程度だったが、好きなグラフィックスなどでめきめき上達し、目的にしていた自分のホームページも完成させた。今ではほとんど1人で作れるようになった。

星羅さんは「私が教えることができるのは楽しいけれど、緊張します。教室では、足の指だけでパソコンを操作したり、よくしゃべれなかったりする人が先生をしていて、感動します。そんなすごく頑張っている人たちに出会えたのもうれしい」という。

足の指だけでパソコンを操作するのは両手が不自由な岡本敏己さん(50)(大阪府枚方市)。パソコン暦は5年ほどになるが、人に教えるのは初めての経験。「後ろからぬっと足を出すので生徒さんはびっくりすると思います。パソコンの技術だけでなく、子どもたちには手が使えなくてもできるということを伝えたい」と意気込んでいる。

ほかにも脳性まひで車いすを使っている吉田幾俊さん(40)(大阪府堺市)や、同じ障害で言葉が不自由な石田圭介さん(38)(大阪市東住吉区)ら、講師は多士済々。この講師を企業などでパソコンを使い慣れている一般ボランティアが支えている。

代表の竹中さんは「将来的には神戸市内の小学校で講師として、障害を持つ人がパソコンを教えられるようにしたいし、関係部署にも働きかけていきたい」と話している。

次回のセミナーは10月末から。定員は12組24人で、順次登録を受け付けている。

問い合わせは、プロップ・ステーション(06-881-0041)へ。

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